ヤキモチと気持ち
ここに来てどのくらいたったのだろう‥。
脱サラしてまで挑んだ声優になるという夢がダメになり、どん底できたこの世界。
現実世界とは大きく違い俺の隣にはいつも可愛い女の子がいて働かなくても好きなことが出来て生きていける最高の世界。
だけど現実世界での記憶が随分昔のことの様な気がふとする瞬間がある。
そんなに月日が経っていないのに、昔のことに感じる不思議な感覚が時たま俺を襲う。
鏡を見ても何一つとして変わっていない俺と日に日に魅力的になる彼女達の姿。
変化があまりないこの世界で、最近著しく変わったことがある。
それは家事が全く出来なかった苺が突然家事が出来る様になった事だった。
ショコラちゃん程完璧ではないにしろ、掃除をしたり、洗濯をしたり、料理まで出来るようになっていた。
俺は苺に突然、家事が出来る様になった理由を聞くと苺は
「‥苺は一生懸命努力したのですぅ〜!小太郎しゃんの為に沢山努力したですぅ!そしたら出来る様になったのですぅ」と言いニコニコ笑い嬉しそうに、家事をやる苺を見て喧嘩する前より話す内容も何処と無く大人っぽくなった気がする。
ショコラちゃんが小さく戻ってしまってから苺が家事が出来る様になったのは正直有難い成長だと俺は思っていた。
一生懸命に俺の事を好きでいて、俺の為に努力して成長してくれた苺‥。
だけど俺はショコラちゃんの事が忘れられないでいた。
ショコラちゃんと過ごした甘酸っぱい日々は俺にとってやっぱり特別なのだ。
最近のショコラちゃんはちーちゃんがずーっと喋ってるせいなのか、以前にも増してショコラちゃんは無口になった。あまり喋りはしないが俺の肩に乗ってチョコをずっと食べている。
片時も俺の側から離れようとしないショコラちゃんの行動や態度は、言葉は無くても今でもショコラちゃんは俺を好きでいてくれている‥そんな確信に近い自身が俺にはあった。
直ぐにでも大きいショコラちゃんに戻したいのだが、苺の事が気になってショコラちゃんを大きく戻せないでいた。
俺の事が好きだからなのかショコラちゃんやちーちゃんにヤキモチを焼くのだが、時たま見せるいつもの苺とは違う雰囲気は異質で恐怖すら感じる時がある。
そんな思いもあって言い出せずにいたが俺は意を決して苺と話し合うことにしたが俺が思っていた通りに苺は怒りだした。
「ぜ~ったい!ダメですぅ!!!ショコラちゃんはまだ小さいままでいいのですぅ!!!」
挿絵(By みてみん)
とほっぺたを膨らまして苺は怒っている。
「ショコラちゃんだって元の大きい姿に戻りたがってるんだ‥大きくなるくらいいいだろう?家事だって楽になるしな‥」と俺が諭しても苺の首は縦には振らない。
「苺は嫌ですぅ!!苺が頑張ってお料理も、お洗濯も、お掃除もやるですぅ!!だから嫌ですぅ!!ショコラちゃんの事は好きですぅ‥でも嫌なものは嫌ですぅ〜!!」と苺が駄々をこねていると今まで珍しく黙って聞いていたちーちゃんが俺の頭の上でマイクを持ち、苺に対して挑発するように話し始めた。
「いちごぉお〜!ショコラちゃんやちーに負けるのが怖いなのですね!!苺は弱虫の卑怯者なのです〜!!正々堂々勝負するなのです〜!!まぁ〜苺が逃げ出したくなる気持ちも分からなくもないなのです〜!このシュガーキッチンのアイドルであるちーに敵う筈もないなのです!!今はショコラちゃんが一番でも殿方である小太郎さんのハートはちーがもちろん最後は頂くなのです!!正々堂々勝負なのです!!!」とポーズを決め自信満々な顔でショコラちゃんや苺に言う。
挿絵(By みてみん)
それを見ていたショコラちゃんは食べていたチョコレート置き、手をパチパチ叩き「おぉ〜」と言いコクリと頷き小さい声で一言
「‥‥私‥‥‥小太郎さんの‥‥一番‥」と言い恥ずかしそうに赤くなるとまたチョコレートを食べ始めた。
それを聞いた苺は顔を真っ赤にして
「そんなの許さないですぅ!!!苺はぜ~ったい許さないですぅ〜!!」と言い結局ちーちゃんと苺は言い合いになっていた。
だが俺の心の中では、可愛い三人の女の子が俺を取り合い喧嘩になるなんて‥現実世界ではありえない。
そんな板挟みの経験ももちろん無い俺は嬉しさがこみ上げてきて、しみじみそんなことを考えていてぼーっとニヤニヤしている二人は今にも喧嘩しだしそうになってきた。
ショコラちゃんが俺の耳元で小さく「‥‥二人‥喧嘩‥」と言う声が聞こえ、俺はハッとして二人を止めた。
「二人ともストーップ!!喧嘩は良くない!俺はみんな大好きだ!だから喧嘩するな!!」と言った。
すると二人同時に
「でもですぅ!!」
「でもなのです!」と言うので
「でもじゃない!喧嘩するのはダメだ!!約束しただろう?」となだめるように言うと
二人は不服そうにしながらも黙った。
それを見て俺は苺の頭に手を置き苺に
「苺?苺は大きくなれてすっごく喜んでくれたよな‥。同じ仲間のショコラちゃんやちーちゃんが苺のように大きくなれたらみんな嬉しいと思わないか?みんなで生活する為にもショコラちゃんやちーちゃんが大きい方がいいと思うんだ。分かってくれるよな?」と優しく諭すように言うと苺は下唇を噛み締め俯きながら頷いた。
俺は悔しそうに俯いた苺の頭を撫でると泣き出した苺を抱きしめた。
それを見てちーちゃんが空気を読まずマイペースに
「やっと苺も観念したなのです!!早速、ちーを大きくしてくださいなのです〜!!」と言い
ちーちゃんは‘’本物のクリームチーズ‘’になった。
続く
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