第216話 怪しい参加者④


「落ち着いたかい?」


「……はい」


 笑顔のダグラスに飲み物を差し出されて、琴音は自嘲気味に頷いた。

 今、琴音は祐人の横に座り体を小さくしている。

 あのあと、話しているうちに琴音も冷静になっていき、ようやく自分のしていることが非常識であったと理解したようで、途中から狼狽え始めたのをダグラスが上手く助け船をだしたのだ。

 当初から陽気で軽い感じのダグラスだが、この辺はコミュニケーションをとることに長けており、相手を必要以上に追い詰めずに会話をしていく。

 祐人も横で感心しながらダグラスを見つめ、どこか大人の余裕のようなものも感じ取った。

ただの……ロリコンかもしれないが。


「あの……すみませんでした」


「まあまあ、気にしない気にしない。そりゃ、応援しているお兄さんの心配がちょっと暴走しただけだろ? そういうことは時にはあるもんだよ。それに堂杜君も気にしていないって、な! 堂杜君」


「あ、はい。全然、気にしてないです」


 祐人もダグラスに合わせて笑顔を作るが、琴音は祐人に対しては厳しい視線を送り、だが、何も言わずに前を向いた。


「あはは……(何故だか、えらい嫌われているような気がするね)」


 アルバロは小声で「ガキどもが……」と唸り、バガトルは琴音の顔を舐めるように視線を送っている。


「ま、いいじゃない、三千院の家の人間まで来てくれるなんて良い交流になるよ。色々とお兄さんのことも聞きたいしね!」


 ジュリアンは嬉しそうに声を上げて、琴音に対して体を向ける。

 琴音は警戒するようにジュリアンに目を向けた。


「お兄様の情報を得ようと思っているのなら無駄です。私が話すことは何もないです。それに知ったところでお兄様に敵う人間はいませんから」


「へー、やっぱり、そんなに強いんだぁ、三千院水重は。僕も噂でしか知らないけど」


 ジュリアンが楽し気に応じるが、アルバロは不愉快そうに一笑に付す。


「けっ! くだらねー! ガキの身内びいきの話なんぞ! 聞いたところじゃ機関にも属さず、家からまったく出ねーという話じゃねーか。まあ、予選の雑魚どもを倒して調子に乗ってるんか?」


「ククク……引きこもりの兄か」


 水重に対し小馬鹿にしたような態度を見てとると、琴音は静かに笑った。


「あなたたち程度では、お兄様を測ることはできないでしょうね」


「あん!?」


 琴音の仕草に頭に血を登らせたアルバロが殺気立つと、ジュリアンが呆れたように間に入る。


「まあまあ、いちいち反応しないでよ。話が前に進まないから。あんたもいい歳なんだからさぁ、それじゃあ、あんたの言う雑魚を倒して調子に乗ってる人間そのままだけど?」


「! て、てめー、ここで再起不能してやってもいいんだぞ」


「結構、やれるもんならね。でも、それじゃ大祭の参加資格が失われるけどね。それでもいいなら相手になるよ。僕は正当防衛ってことでね」


「……っ!」


 ジュリアンはアルバロを流し目に鼻で笑うと、琴音に顔を向ける。


「でもさぁ、そのすごいお兄様の噂は聞くんだけど、実績については何も聞いたことないんだよね。そう……武勇譚みたいのとかね。まあ、僕もその点については一緒かぁ、僕も機関には所属してないからランクも持っていないしね。とりあえず、明日からのトーナメントでよく見せてもらうよ、その君が言うお兄さんの実力をね」


「好きにしたらいいです。あなたたちはお兄様にとって気にとめる存在にすらなっていませんから」


「はーん?」


「ほう……」


 この琴音の発言にアルバロもバガトルから殺気が漏れ出すが、琴音はそのプレッシャーを感じつつも気丈にふるまう。


「事実、お兄様は退屈そうにしています。おそらくあなたたちのような参加者を見てそう思ったんだと思います」


 琴音はそう言いつつも、自分の言葉に違和感を覚えて隣にいる祐人を一瞬だけ見た。

 そう……水重は他人に気をとめるような人間ではない。ところが、この少年にだけは今までにないような反応を起こしている。

 琴音から見る祐人は、どこか頼りなさそうな少年にしか見えない。

 とても兄が気にとめるような人間ではない、と思う。もちろん、今朝のバトルロイヤルを勝ち抜いた能力者だ、まったく実力がないわけではないのだろう。


(こんな人にお兄様が気にかけるわけはないわ。私の気にしすぎだったんだわ)


 この時、祐人は水重と一瞬だけだったが言葉を交わした時のことを思い出していた。

 そして、いまだにその時、水重から感じた独特の感触を覚えている。それは達人と相対した時に受けるプレッシャーのようなものだった。

 あの一瞬に感じた感触で、祐人は水重が相当な実力者であるとみていた。


「へー、言うねぇ。なんだか楽しみになって来たよ! でもさ……君のお兄さんも考えれば笑えるよね」


 ジュリアンの物言いにピクッと琴音は反応する。


「……何がですか?」


「だってさ、そんなすごいお兄さんがようやく表舞台に出てきたと思えば、この四天寺の開いたお祭りに参加したんだよ? なに? 結局、名家の三千院といえど、四天寺の名前が欲しかったのかと思ってね」


「ハッ! そうだな! ごちゃごちゃと偉そうに言っているが、結局は俺たちと一緒かよ! てめーの引きこもりの兄ちゃんは」


「ククク……」


「な!? ち、違います! お兄様はそんなものに興味はありません!」


「ふーん、でもこの大祭に勝ち残るということは、四天寺に招き入れられるということだよ? それは三千院を捨てるということでもあるんじゃないの? 同じ精霊使いの名家の家系でさ、それって四天寺の方が自分のところよりいいと思ったんじゃないのかな。ちなみに僕はそうだけどね。ここに来ている連中は多かれ少なかれそんな目的で来てると思うけどな。ね、あんたたちもそうだろう?」


「当たりめーだ。でなきゃ、こんなふざけた祭りに参加なんかするかよ! 四天寺の名がありゃ、大抵のことは許されるんだ。しかも、当主みてーなもんになれるんだろ? 腕に自信がありゃ誰でも参加する。金も女も自由だ、上手くすりゃ機関の中枢に飛び入りもできる可能性もついてくるときたもんだ。本当、笑いが止まらんわ!」


「それ以外に何がある?」


「金も女も……。あ、あなたたちは……この大祭は瑞穂様の……四天寺家のご息女と所帯を持つことでもあるんですよ!? 意味が分かっているんですか!?」


 男たちの発言に琴音は吐き捨てたくなるほどの嫌悪感とともに言い返す。


「ハッハッハー! 馬鹿か? お嬢ちゃんは。そんなもの形だけのもんだろうがよ! あんなガキと真剣に新婚ごっこなんかできるかよ! 四天寺も優秀な子孫が欲しいだけで、こんな祭りを開いたんだ、とりあえず孕ませればいいだけだろうがよ! お前も三千院の家の女だろ? それぐらいは分かってるんじゃねーのか? まあ……一応は大事な嫁だ、俺好みに教育はするがな」


「フッ……」


 アルバロは口角を上げ、バガトルはぼさぼさ髪から覗かせる暗い目を垂らし、舌舐めずりをする。


「……!」


 琴音はこの上ない不愉快さに言葉を失ったように男たちを睨みつける。

 琴音も三千院家の娘として、大事に育てられてきた。

 そして、そんな自分が自由な恋愛をし、そして望んだ相手と添い遂げることはないということは理解している。時にはそこに愛情なるものが存在しないということも。

 自分はただ三千院家が認めた男性と婚姻という形式に従うだけだ。

 だからこそ、琴音はそれまでは自分が一番惹きつけられる男性を見続けていこうと決めたのだ。

 それがたまたま、実兄である水重だったに過ぎない。

 幼少の時に……水重が見せた精霊との会話を目にしてからずっと、琴音のこの考えに変わりはなかった。

 分かってはいるのだ。

 三千院という能力者の家系に生を受けた時点で自分に愛情を前提としての縁組などないことは。

 しかし、今、琴音の内に湧き上がるのは、そうはいえどもここまで露骨にこの大祭で勝ち残ればパートナーとなるだろう相手に対して、心や情のかけらもない発言ができるこの男たちに不快な感覚だけでなく、同じ境遇ともいえる瑞穂に対し、同じ女としてやるせない気持ちに囚われた。

 それは自分の将来をも重ね合わせてしまうことで得た、深い絶望感のようなものでもあったのかもしれない。


(お兄様のような男性を間近で見て育った私は、より不幸……いえ、幸せなんだわ。私はその思い出があるだけで生きていける。でも、瑞穂さんは……どうなのかしら。こんな……入家の大祭なるもので景品のように扱われて……次世代の天才精霊使いとまでいわれているのに)


 琴音は怒りと絶望感に覆われながらも、瑞穂が今、どんな気持ちでいるのかと想像してしまうのだった。

 そのため……この時、琴音はすぐ横に座っている少年の雰囲気が変わったことまでは気づかなかった。その少年が顔の前で握る両手の力が増していることを。

 まだ幼さの残る琴音の苦し気な表情を見て、顔をしかめたダグラスが気づかわし気に声を上げる。


「おいおい、俺は違うんだけどな……」


「ハッ、いい子ぶるなよ、ダグラス・ガンズ。それ以外にこの大祭に参加する理由なんかねーだろ! なあ! そこにいる【歩く要塞】さんよぉ!?」


 声を大きくしたアルバロが顔を向けるその先のラウンジの奥には足を組み、ウオッカを飲んでいる【歩く要塞】の二つ名を持つヴィクトル・バクラチオンがいた。

 ヴィクトル・バクラチオンはアルバロの問いかけに返事をせず、その巨体のせいで小さく見えるソファーから腰を上げる。


「……」


 ヴィクトル・バクラチオンは何も言わず、祐人たちのいるソファー席の横を無表情に通りすぎるが……一瞬だけ暗く顔の見えない祐人に視線を移すと鼻を鳴らし出て行った。


「チッ、格好つけやがって。力だけの木偶が」


 アルバロがつまらなそうに舌打ちをすると、ジュリアンは、なんとか気丈に背筋を伸ばし座っている琴音に顔を向ける。


「じゃあ、まさかさ、本当に嫁が欲しいのかい? 君のお兄さんは。ああ! そう言えば小耳にはさんだけど、以前にあの瑞穂さんだっけ? お見合いが破談になったって聞いたよ。それじゃあ、これはそのリベンジってことかな? だとしたら興覚めだね~」


「あん? そうなのかよ! んじゃ、振られたのかぁ? ハッハー! それはそれは大層な理由で出張って切ったんだな! くだらねえ」


「違っ……! ……」


 琴音は顔色を変えたが、口を閉ざした。

 もうこの下品な連中と言葉すら交わしたくない、と強く思ったのだ。

 もう、ここにいても時間の無駄の何物でもない。

 隣にいる堂杜祐人という怪しい少年を追いかけてきただけのはずが、他の参加者に兄を小馬鹿にするような発言を受けるだけ受けることになり、しかもうまく言い返すことができずに悔しさだけが残った。

 兄を庇えなかったこと……それだけが口惜しく目を潤ませたが、琴音はこの場を立ち去ろうとする。


(もういい……どうせお兄様が全員を倒していくもの。こんな連中に少しでも関わった私が馬鹿だったんだわ。本当に……くだら)


「ああ、本当にくだらないな」


「……!?」


 突然、隣の少年が低音だが芯のある声を上げたことに琴音は驚き、顔を向けた。しかも頼りなさそうな風貌だったその少年から力強いとも思える存在感すら覚える。

 だが、その発した言葉の内容に……琴音は拳を握りしめる。


「あん? なんだ突然? しかも今頃、そんな分かり切った……」


(この……この人は! こんな奴にお兄様が……反応するなんてありえな……!)


「違う。……くだらないのは、あんたらだ。あんたらは何も分かっていない、笑えるほどに何もね」


「……え?」


 琴音は握りしめた拳が緩む。

 ジュリアンは楽し気な顔で祐人を見つめ、ニヤリと笑う。


「はーん!? 何を言ってんだ? お前は……」


「まだ分からないのか? あんたらじゃ、悪いがこの大祭で勝ち残ることはできないってことだよ」


「ククク……気でも触れたか? 小僧」


「あんたらには伝えておくよ」


 生意気な言いように腹を立てたアルバロとバガトルに祐人は静かに……鋭い視線を向ける。


「……!」

「!?」


 アルバロとバガトルがそれだけで一瞬、怯んだのを琴音は見逃さなかった。

 琴音は祐人にの横顔に目を向ける。すると自分自身もこの場にいるのが息苦しくなるような圧迫感のようなものを感じ取り、手に汗をにじませてしまう。

 これが……命のやりとりをする時に、格上の強敵と出会った時のような感覚だとは、この時の琴音には分からなかった。

 だが、琴音以外の能力者たちはそれを敏感に感じ取っているのだ。

 ジュリアンは口角を上げ、ダグラスは目を細めている。

 祐人の気配に琴音以外の全員が姿勢を変えずに戦闘態勢に入った。

 今、祐人はこの場が一触即発の戦場のようになるのを見てとると、その場のピリピリした空気に構わずに話し続ける。


「まず、あんたらはこの祭の主催者が誰だか忘れていないか? あの四天寺だよ。それをもう一度、頭に叩き込んでおいた方がいいね」


「……」


 誰も返事はしない。

 琴音はただ体が固まり横にいる祐人の言葉を聞くだけになっている。ただ、伝わってくるのは、今、この少年が怒っているということだけだ。一体、何をこんなに怒っているのか、琴音には分からなかった。

 カウンターでつまみと酒を積み上げているマスクをした参加者が、ご機嫌そうにおかわりを要望する声だけが聞こえてくる。


「それと……この大祭に参加して、四天寺に招き入れられる要件を覚えているのか? すべて勝ち抜いた後、最後に相手をするのは四天寺瑞穂だ。あんまり彼女を舐めない方がいいよ。彼女を倒すのは容易じゃないからね」


 フッと祐人が笑うと、そこにいる全員がそれぞれに反応を起こす。

 アルバロとバガトルは息が詰まったように歯ぎしりをするばかりで、ジュリアンは楽し気にし、ダグラスは顎に手を当てて祐人を見つめていた。

 そして琴音は祐人から来る圧力に、得体のしれない恐怖や第一印象とあまりにかけ離れたその雰囲気に困惑していた。


(こ、この人……は何なの?)


「この大祭に参加したのなら、四天寺瑞穂という人のことを少しぐらい調べてきなよ。どんな形であれ、彼女に認められれば結婚するんでしょ? 四天寺の名が欲しいのは別に否定はしないけど、それだけじゃ、あまりに彼女に、女性に失礼でしょう」


(……え?)


 琴音は目を広げた。


(この人……こんなことを言うためだけに、怒ったの……?)


「まあ、僕が言いたかったことは、この大祭は瑞穂さんが認める男を探すというものだ、ということだよ。これを忘れないことだね。力をただ振りかざすだけならチンピラでもできる。少しは相手のことも考える余裕ぐらい持っておけと僕は思うけどね」


 言い終わると祐人が笑顔を見せた。

 途端に空気が和らぎ、アルバロとバガトルは静かに大きく息をする。

 そして、琴音も解放感すら感じた。

 すると、アルバロとバガトルはそれぞれに立ち上がる。


「チッ……青いガキが」


 それだけアルバロは小さく吐き捨てて、ラウンジを出て行った。続いてバガトルも無言で出て行く。

 それを祐人は見送ると溜息をついた。


「はあ~」


(隠密行動を旨に目立たないようにして情報収集しようとしていたのに……思わずやってしまった。僕って意外に感情的だよなぁ)


 祐人の横では琴音が、不思議な生き物を見るように、何故か肩を落としている祐人を見つめている。


「ふふふ……あはは! いやぁ、堂杜君はすごいなぁ! それと怖いねぇ。まあいいや、いいのが見れたし、僕も帰ろうかな! それと堂杜君の言う通り、少し四天寺瑞穂のことをもっと調べるよ。じゃあ、明日ね!」


 ジュリアンは相も変わらずにこやかに出て行き、ダグラスも帰ると言い、祐人の肩をポンポンと叩いた。


「堂杜君! 君はいいね! 俺も堂杜君の考えに賛同するよ! じゃ」


 そう言い、出て行った。


「……」


「……」


 ソファー席には祐人と琴音だけが残される。

 琴音はいまだに落ち込んだ感じの祐人を横目で見ながら飲み物に口をつけた。今の祐人からは先程の怖い圧迫感はなく、どちらかと言うと頼りなさしか感じない。


「……堂杜さん」


「……え? ああ、三千院さん? 何?」


「ひとつ聞きたいことがあります」


「?」


「堂杜さんは、怒っていたように感じました。何に……何にそんなに怒っていたのですか?」


「え……何って……。知り合いの女の子のことを、あんな風に言われれば誰だって頭にくるよ。正直、すごい不愉快だったし」


「……。知り合いなんですか? 瑞穂さんと」


「うん、僕らは同期だしね。一緒に依頼をこなしたこともあるし」


「……それで参加したんですか」


「ま、まあ、そうかな」


「……」


(それって……瑞穂さんのことを好きってこと……なんですね)


「……堂杜さん、ごめんなさい」


 突然、琴音に頭を下げられ祐人は驚く。


「私……あなたを誤解していたようです。怪しい人だなんて……」


「……あ! 気にしないで、僕も気にしてないから!」


 慌てるようなそぶりを見せる祐人を見て思わず、琴音は笑みを見せる。


「では……私も帰ります」


「ああ、気をつけてね」


「はい……では」


 祐人に会釈をし、琴音はさっきまでの重たい気持ちが嘘のように軽くなったことを感じながら立ち上がり、出口の方に向かった。

 すると……バン! と大きな音を立ててラウンジの扉が開き、チャイナ服を着た少女の大きな声が響き渡った。


「ここにいるのは分かってんのよぉ!! 覗き魔ぁ! 観念しなさい!」


 突然、現れた黄秋華は両目を釣りあげてラウンジ内を鼻息荒く見渡す。

 祐人も琴音も驚き、この少女に注目してしまう。

 今、ラウンジにいるのは琴音と祐人……それと奥の方に座っている数人だけだった。


(あれ? カウンターにいた人がいない)


「ど、どうされたんですか?」


 琴音が秋華に話しかけると、地団太を踏むように秋華が言い放つ。


「どうもこうもないわよ! あたしがシャワーを浴びていたら、外から覗いているいやらしい目をした奴がいたの! くー! 私の玉の肌をただ見しておいてーー! ただじゃおかないんだから!」


 思いもよらない出来事に祐人もとんでもない奴がいるな、と吃驚してしまう。


「ええ! 覗きですか!? なんていう不届き者……って……うん? 外から……外から?」


 カッと琴音が殺気を含んだ目で祐人に振り返る。

 その目を受けて祐人はハッとした。


「ええ! 違うよ! 僕じゃないよ!」


「堂杜さん……あなたという人は」


「え? ……こいつが犯人? ふーん……いい度胸ね」


 ワナワナと体を震わせる琴音と死のオーラを纏う秋華。


「だ、だから、違うよーーーー!!」


 その後、祐人は二人に思いっきり平手打ちを喰らい、責め立てられた。

 誤解が解けたのは、覗かれた時間帯には既に祐人が屋敷に入ったということが分かった1時間後ぐらいであった……。

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