ももといちごはピンク色
カゲトモ
1ページ
空は晴天で太陽が温かく見守っていると言うのに風だけは冷たくて、商店街のアーケードを通ると自然とポケットに両手を突っ込んでしまう。昨日の強風と比べれば大したことはないのだろうけど、それでも吹く風は冷たい。俺の懐も同じだけど。
「あ」
ふと、今気が付いた。今日は三月二日だ。そう思えば呉服屋のショーウィンドウに子供用の着物と、つるしの雛飾りがあった気がする。酒屋にも甘酒とか、餅屋にも三色の菱餅とか。
もう三月なのは知っていたし、もうそろそろ雛祭りだって思っていたのに。そうか明日か。
年々、自分に関係のないイベントとか特別な日じゃなくなった日とか、その日があるのは分かっているのについ近くになると忘れてしまう。意識をしないと言うか、どうでもよくなってしまうのだ。多分、飲食業なんかしてなかったらハロウーィンとかクリスマスとかも絶対忘れていると思う。だって俺に関係ない日だから。
そんな風に忘れてしまう日が増えるのもちょっと寂しい気もするけど。
「いらっしゃいっ」
俺の姿を見つけて元気よくピョコンと跳ねて迎えてくれたのは、かどわき青果店のおてんば娘、奈々子だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます