第264話 対空砲陣地急襲作戦

 ハツキ島中央市街地を巡る戦い。

 最も外周にある第1基地防壁の一部を崩された帝国軍だが、市街地と、残った第1防壁における防衛戦において優位に立ち、押し寄せる統合軍の攻撃を防ぎつつあった。


 帝国軍がハツキ島中央市街地を覆うように建造した3重の基地防壁はその効果を最大限に発揮していた。

 第1防壁が突破されても、第2防壁からの長距離砲撃が突破した敵軍を一方的に攻撃する。

 対抗するには統合軍側も長距離砲を使わなければならないが、第1防壁が完全に占領されていない現状、足の遅く撃たれ弱い長距離砲は安易に前線に運び入れられない。


 統合軍は敵の防衛する市街地内で砲撃を受けながらの戦闘を強いられ、投入した戦力を削り取られていく。

 このまま何も打開策がなければ、防壁を突破する戦力を失い、市街地攻略戦は頓挫してしまう。

 統合軍司令部もその現状を把握し、まずは第1防壁の完全な占領を進めるべく、市街地方面への攻勢を取りやめ、第1防壁北側と南側へと戦力を振り分けるよう戦略の変更を急いでいた。


 だがその矢先、突如として異変が起こった。

 帝国軍の守りの要である第2基地防壁。その西側正面地点が、突然爆音を響かせ、土埃を上げた。

 帝国軍側も統合軍側も、何が起こったのか把握できなかった。

 されどその爆音が轟く最中、鉄壁の防御力を誇るはずの第2防壁が崩壊を開始した。


 爆音を基地防壁の崩壊する轟音がかき消し、辺り一帯に砂埃を撒き散らしながら、高さ30メートルを越える巨大建造物が崩れ落ちる。

 守りの要である基地防壁は一部が崩されてもその周りまで崩れないよう設計されている。

 そのはずなのに防壁の崩壊は止まらず、崩壊が次の崩壊を呼び、幅800メートルに及ぶ領域の防壁が崩れ落ちた。


 統合軍が突破した第1防壁西側正面への砲撃支援のため、帝国軍の多くの部隊がこの第2防壁西側正面に配置されていた。

 そのほぼ全てが崩壊に巻き込まれ、防壁内の重砲ばかりか、周辺に配置されていた重砲陣地、対空砲陣地までもが基地防壁の土砂と地盤崩落によって機能を停止する。


 ハツキ島中央市街地を巡る戦いの最前線。そこに突如、帝国軍戦力の存在しない空白地帯が生まれた。

 この機を逃すこと無く、今だ砂埃の舞う市街地へと統合軍の1大隊が突撃を開始。

 統合軍司令部も訪れた好機を最大限に活かそうと、攻略部隊をこの空白地帯へと急進させた。


          ◇    ◇    ◇


 帝国軍司令部は突然の基地防壁崩壊の報を受け混乱していた。

 迫撃砲弾を受けたわけでもないのに広範囲に渡って崩れ落ちた第2基地防壁。

 だがハツキ島防衛の総司令官に任命されていたオルブライト・マーコレー大将には、その原因に心当たりがあった。


「例の枢軸軍地下施設からの攻撃だろう。

 厄介な物を作りおって」


 老齢なオルブライトは元々は旧連合軍士官だった。

 統合人類政府が樹立される際に連合軍と枢軸軍も統合されることになったが、対枢軸軍との戦闘に全てを賭けていた彼は、両軍が共生する軍隊に賛同できず離反。

 同じく離反した部下を率いて旧枢軸軍領を荒らし回った。


 されど旧枢軸軍領がズナン帝国によって占領され、オルブライトも帝国軍によって捕縛されると、そのまま帝国軍に投降。

 結局旧連合軍出身の軍人と共生することになるも、帝国軍は部隊編成において明確に出身軍を分けていた。

 オルブライトはその人事制度を受け入れ、帝国軍将官として頭角を現す。

 帝国軍によるハツキ島強襲作戦では攻略軍の司令官を任され、これを成功させた功績によってそのままハツキ島司令官に任命された。


 旧枢軸軍出身者を毛嫌いするオルブライトは、ハツキ島司令部から枢軸軍出身の上級士官を尽く外していた。

 それ故に枢軸軍が建設した地下施設について、完全には把握出来ていない。


「背に腹は代えられん。

 ヘルムート中将へ連絡を。ハツキ島に建設された旧枢軸軍地下施設について、持ってる情報を全て提供するよう伝えろ」


 ヘルムートは旧枢軸軍出身の将官。彼はトトミ中央大陸の防衛士官であったが、中央大陸放棄に伴いハツキ島へ退却してきていた。

 元枢軸軍将官に頼めごとをするのはオルブライトの意に反したが、個人的理由を元に協力を拒み、敗北を喫してしまっては元も子もない。

 今のハツキ島に惑星外へ逃げる手段は残っていない。

 ここを守り切らなければ、オルブライトもヘルムートも統合軍の手にかかるしかない。

 苦渋の決断をして通信士を走らせたオルブライトの元へ新たな報告が飛ぶ。


「ご報告します。

 中央市街地東側、北側。第2防壁内側に統合軍機と思われる〈R3〉が出現。

 現在防衛部隊と交戦中です」


 報告にオルブライトは深くため息をついた。

 やはり発見されていない秘密の地下通路が存在する。

 そうでなければ、今だ基地防壁が健在な東側と北側に敵機が入り込む余地はない。


「防衛は現地の指揮官に任せろ。

 とにかくヘルムートを呼び出せ」


 端的に告げると、東部と北部の防衛を受け持つ将官が敬礼し司令室から退室する。

 十分な防衛戦力は残してある。侵入してきた敵は彼らが処理するだろう。

 オルブライトは司令室中央に置かれた司令部端末の画面を注視する。


 第2防壁の内側。北部と東部に敵機情報。

 しかしその情報に疑問を抱く。

 発見された敵の数があまりに少ない。

 だというのに防衛陣地が次々に陥落し、被害機体数が指数関数的に上昇している。


「侵入した敵部隊の戦力解析を急げ。

 まさか単機で防衛陣地を突破しているわけではないだろう」


 担当官が了解を告げて通信士へと連絡を急がせる。

 しかしオルブライトは報告を待っては居られなかった。

 敵戦力が未知だとしても、被害が拡大しているのは明らかだ。即座に手を打たなければならない。


「なんだ。例のオモチャ――ブレインオーダーと言ったか?

 アレを投入しろ。

 防壁内をかき乱されたら面倒だ」


 オルブライトもブレインオーダーについて深い知識があるわけではない。

 ただ帝国軍本部から、実験用の人造兵士だと言われて提供されたに過ぎなかった。

 ブレインオーダーの管理担当官が即座に応答して司令室を離れる。

 敵が少数ならこれで片が付くだろう。


 しかしオルブライトの脳裏には気味の悪い軫憂が残る。

 統合軍が秘密の地下通路を把握していて基地防壁直下にすら辿り着けるとしたら、第2防壁の西側のみを部分的に破壊するのは不自然だ。


 防壁内側に突如現れた敵機もごく少数。

 もし市街地内に縦横無尽に地下通路が張り巡らされているのならば、大部隊を司令部のある中枢区域。最終防壁の内側へと展開すればいい。


 それをしないと言うことは、中枢区域への地下通路は存在しないか、あるいは統合軍も完全には情報を把握していないか。

 もしくはごく少数の兵士か使えない、極めて限定的な通路か。


 何にしても、とにかく帝国軍が感知していない秘密の通路が存在することだけは確実だ。

 それは今後の防衛戦略に極めて密接に関与してくる。

 ヘルムートへの確認を早急に行い、予備部隊を使って地下通路を塞ぐ。総司令部として行うことはこれだけだ。


 だというのに、司令部へと再び報告が飛んでくる。


「東側敵戦力確認。〈ヘッダーン5・アサルト〉単機。

 ですが――既に対空砲陣地、防衛中隊突破されています。

 現在〈ハーモニック〉の追撃を振り切り最終防壁へと邁進中!」

「北側戦力確認。未登録機体単機。

 装甲騎兵駐屯地が襲撃を受け、1個中隊壊滅!

 尚も敵機交戦中!」


 何が起こっている?

 歴戦の将軍、オルブライトにとっても、今このハツキ島中央市街地で起こっていることの全容はつかめはしなかった。

 

          ◇    ◇    ◇


 ナツコは地下施設第1階層を飛び出して地表へ躍り出た。

 ハツキ島中央市街地。位置的には中枢部からはやや東側。それでも第2防壁の内側に当たる地点だ。


 この辺りは中央市街地の東区に当たる。

 東区出身のナツコには土地勘があった。

 それでも帝国軍による基地化の影響を受けて区画はもちろん、場所によっては地形すら変わっている。

 地図を頼りにしながら通りを駆け抜け、まずは最初の目的地、帝国軍対空陣地を目指す。


「敵機――」


 接敵報告をしようとするが通信が繋がらない。

 この場所は帝国軍の通信妨害圏内。近くに味方の指揮官機が居ない限り通信は繋がらない。

 だが、既にやるべきことは決まっている。


 前方。市街地を進む敵影を注視。機種判別。〈コロナD型〉が4機。実際に見るのは初めての、帝国軍第5世代偵察機だ。

 偵察機には振動障壁は搭載されていない。右腕12.7ミリで撃破可能。


 ――戦闘開始。


 脳の奥。特異脳へ意識を向ける。

 敵機動作を確認。こちらに気がついた。

 後退しながら攻撃体勢をとろうとしている。回避機動を予測。12.7ミリ機銃の弾道計算。完了。


 短く切るように4発発射。

 発射した瞬間に命中・撃破が確定。撃破確認をせず右折して小さな通りに入る。こっちの方が対空砲陣地までは近道だ。

 それに敵機を撃破するのは主目的ではない。あくまでついでだ。


 対空砲陣地を目指して市街地内を進む。

 周囲に多数の敵機反応。もう存在はバレている。でもそれでいい。


「もっと目立たないと」


 ナツコの目的は敵の注目を集めること。

 統合軍が市街地内に侵入し、ツバキ中隊が政庁奪還へ動けるようになるまで、敵の注意をこちらへ引きつけておかなければならない。

 それがタマキから命令されたナツコの役割だった。


 汎用投射機にカートリッジ式グレネードを装填。

 建物の外壁を走りながら、向かいにある建物へとグレネードを投射。

 着弾のタイミングで建物から飛び出して来た敵機〈フレアE型〉に直撃。2発目も後続に命中。脚部を破損し機動力を奪う。


 次々に敵機が建物から攻撃を仕掛けてくる。

 弾を節約しつつも、注意を引きつけるため適度に撃破していく。

 小さな通りから大通りへ飛び出す。

 待ち受けていた重装機部隊から一斉攻撃を受けた。


 ――予測成功。回避可能。


 発砲炎の瞬きを見て瞬時に判断。

 榴弾砲の至近爆発も、弾幕形成された機関砲弾も、全て回避可能。

 回避行動を取りながら敵機情報を確認。


 対重装機となればリボルバーカノンを使わざるを得ない。

 〈T-7〉は全体的に装甲が緩いので簡易計算。装甲の厚い〈サリッサ.MkⅢ〉に対して演算リソースをつぎ込む。

 装甲計算完了。照準設定完了。


 連続して8発、リボルバーカノンが火を吹いた。

 全弾命中。1分隊を瞬く間に蹴散らした。そのまま無人となった防衛陣地を飛び越え進む。


「電波塔見えた。

 多分あそこが対空砲陣地」


 優先攻撃目標に指定されていた対空砲陣地の場所を確認。追ってくる敵機からの攻撃を掻い潜り、適当に機銃で応戦しながら前へ、前へ。


 進撃を止めようと帝国軍歩兵が立ち塞がる。

 更にはその背後にある堡塁から砲撃。


 ――予測成功。回避可能。殲滅可能。


 計算結果はただ事実だけを告げる。

 だが十分に注目を集めた今、ここで守備部隊を殲滅する必要もないので使用弾数を節約。

 進路を塞ぐ機体と指揮官機は排除。それ以外は機銃弾で機体行動不能に出来る範囲で対応するよう修正。

 再計算完了。


 敵の展開した弾幕に対して、真っ直ぐ愚直に突き進んでいく。

 全方位から押し寄せてくる攻撃。

 銃弾も、榴弾の巻き散らかす爆炎も金属片も、あらゆる攻撃を回避あるいは防御。

 被弾数は100を越えたが全て弾いている。機体動作に一切影響なし。


 反撃開始。

 物理的に成功の約束された攻撃は、あらゆる回避行動も防御行動も無視して障害を排除した。


 堡塁の銃眼へグレネードを放り込みながら飛び越える。

 後方から攻撃が続くがスラスターの空中制動で回避。着地するとブースターに点火。

 最高速度まで加速するとそのまま対空砲陣地へ向けて突き進む。


 帝国軍の防衛部隊を蹴散らし、あっという間に対空砲陣地へ。

 民間通信用の電波塔が改修されて対空レーダーが設置されている。

 電波塔の構造計算。リボルバーカノンだけで崩壊させるのは効率が悪い。

 とりあえず対空レーダーを無力化すれば十分なのでエネルギーラインの切断と制御盤の破壊を目標とする。

 計算完了。攻撃軌道算出。――敵機接近。


 視界の端。右側面に巨大な機械の姿を捉えた。

 帝国軍装甲騎兵〈ハーモニック〉3機編成。

 だが手持ちの対装甲ロケット砲弾は2発きり。

 1機くらいなら放っておいても障害にはならないと判断。分隊長機と思われる後方の1機と、倒しやすそうなのを1機撃破することにする。


 計算を修正。対空レーダーは後回しにして〈ハーモニック〉撃破を優先。

 先行してきた〈ハーモニック〉が右腕に装備した60ミリ砲を放つ。

 対歩兵榴弾砲だ。

 短い間隔で放たれた榴弾が至近に迫る。


 ナツコは前進しながら飛来する砲弾に意識を向ける。

 重心の傾きから内部の金属片パターンを推定。爆発時に巻き散らかされる金属片の経路を全て予測。

 〈ヘッダーン5・アサルト〉に回避軌道を取らせて8発まで回避。9発目の爆発にあわせてDCSの起動コードを叩く。


 >DCS 運動制御 : 障壁


 運動エネルギーの壁を生成。

 壁は金属片の軌道を逸らし、爆風の衝撃から機体を守る。そのまま前進。止まる選択肢はない。

 10発目、11発目をやり過ごす。相対距離20メートルまで接近。


 対装甲ロケットの弾道を計算。計算完了次第発射。

 同時にリボルバーカノンを指向し2発放った。

 〈ハーモニック〉を破壊しうる三連タンデム弾頭。当然敵機は迎撃に動くが、既に至近距離。視線同調の機関砲弾は、僅か2発しかロケットへの命中軌道をとらない。

 そしてその2発は、リボルバーカノンの砲弾が弾き飛ばした。


 〈ハーモニック〉正面装甲にロケットが命中。

 タンデム構造の弾頭は着弾の衝撃で分離、起爆。

 初弾が振動障壁を作動させ無力化。次弾が爆発反応装甲を起爆させ無力化。最終弾が装甲へ突き立ち、メタルジェットがコクピットブロックを貫いた。


 1機撃破。即座にロケット砲へ予備弾頭を装填。

 動作停止した〈ハーモニック〉を飛び越えて次は分隊指揮官搭乗機と思われる機体を狙う。


 だがナツコの前に、指揮官を守ろうと別の〈ハーモニック〉が立ち塞がる。されどその主武装は90ミリ砲。

 高威力榴弾が使えたとしても、連射の効かない対装甲騎兵火砲だ。

 機体関節にかかる荷重分布から火砲の指向先を予測してしまえば、その榴弾の金属片1つさえ、ナツコの機体を捉えることはない。

 むしろ大きな爆発を起こす90ミリ砲弾は、対空砲陣地を破壊したいナツコにとってありがたい存在だった。


 攻撃をくぐり抜けたナツコは〈ハーモニック〉の脇を通り抜け、指揮官の乗る機体へとロケット砲を指向させる。

 60ミリ砲による攻撃を予測し回避。攻撃軌道を算出。地面を踏みしめ跳躍する。


 後方の〈ハーモニック〉が90ミリ砲を指向。空中に飛び上がったナツコを捉えるが、砲弾は撃ち出されない。

 当然だった。その射線の先には指揮官の乗る〈ハーモニック〉。

 自分の上官へ向けて発砲は出来ない。トリガーを引いたとしても、安全装置が作動する。


 安全装置を解除して撃ってくれば、90ミリ砲弾が〈ハーモニック〉を撃破。

 撃ってこないのならばこのまま対装甲ロケットで撃破。


 どちらでも良かったが、どちらかと言えば後者が望ましい。

 〈ハーモニック〉搭乗者の決断は後者だったらしい。


 対装甲ロケットを発射。

 炎を吹きだし三連タンデム弾頭が指揮官搭乗機へと迫る。

 迎撃に12.7ミリ機銃が動くが、〈ハーモニック〉の迎撃パターンは先ほど見ている。

 ナツコは機銃を短く切るように放って、迎撃が成功し得る銃弾を全て排除。

 対装甲ロケットは全ての回避行動に失敗した敵機正面装甲へと着弾した。


 これで2機撃破。

 残していた〈ハーモニック〉が追尾してくる。

 直属上官を失ったばかりなので直ぐには戦闘行動に戻らないと予想していたのだが、それは外れた。


 90ミリ榴弾の爆風を背中に受けて加速し、本来の目的に立ち戻る。

 弾頭のなくなったロケット発射機は投棄したので、相手もこちらに対抗手段がないのは理解している。

 一方的に攻撃出来る状態だからか、容赦なく追い立ててくる。


 機動力は〈ハーモニック〉の方が上だが、既に対空砲陣地の敷地内だ。

 市街地を改造して無理矢理設営された対空砲陣地は、全高7メートルを超える2脚人型装甲騎兵が動き回るには手狭だ。


 目の前に防衛ライン。

 ナツコの存在が周知されていたのだろう。既に2小隊が集まり配置についていた。

 後方からは〈ハーモニック〉1機と、突撃機1小隊規模。その背後から4脚装甲騎兵〈バブーン〉分隊も迫ってきている。

 前進を続けるナツコへと、一斉射撃が仕掛けられた。


 ――まだ問題無し。


 特異脳の演算速度を引き上げる。

 周辺空間に存在する全ての攻撃座標と未来位置を演算。

 攻撃を回避し、更に未来の攻撃が回避可能となるよう敵の攻撃を誘導する軌道を算出。

 計算結果に従って行動を開始。


 防衛ライン正面の敵機をなぎ倒し飛び越える。

 後方から〈ハーモニック〉の90ミリ砲弾が接近。計算通り。


 後方へ指向させていたリボルバーカノンを発砲。砲弾が90ミリ榴弾を叩く。

 保有するエネルギーが違いすぎるため90ミリ榴弾の軌道はほぼ変わらない。だがその信管に異常を起こさせた。

 近接信管が作動しなかった90ミリ榴弾は、ナツコすれすれを通過して遙か後方へ。

 その射線の先には対空レーダーの設置された電波塔があった。


 鉄骨に90ミリ榴弾が命中。起爆し、爆炎が電波塔を包んだ。

 対空レーダーのアンテナ破損、エネルギーライン寸断、制御盤の破壊を確認。

 対空砲陣地の半無力化に成功。

 〈ハーモニック〉のおかげで手間が省けた。


 そのまま防衛部隊の指揮官機を撃破しつつ、対空砲の弾薬庫を吹き飛ばしながら対空砲陣地を通り抜ける。

 戦果としては防衛中隊撃破。〈ハーモニック〉2機撃破。対空砲陣地無力化。


「これくらい暴れたら、十分かな……?」


 若干不安は残るが、タマキとの連絡は取れないので自己判断でこれで良しとした。

 空になったエネルギーパックを新品に差し替えて進路変更。

 〈ハーモニック〉1機を含む敵部隊を引き連れて、帝国軍の第3基地防壁方向へと進路を取った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る