第12-2話 森の集落 その2

テオックの倉庫に戻り、道具を入れている袋をまさぐる


「……これだ!」


再び村長の家に走る



村長はルシュの隣に座ってルシュをなだめている様だった


俺の姿を確認した村長は俺に近づき

「急いでどうかしたの?」


尋ねてくる村長に、俺は倉庫から持ってきたとあるものを見せる


それは、10cm四方程度の大きさの薄型の金属製の四角のプレートに

濁った欠けた球体の石が入った物だった



それを見た村長が目を細める

「これは……見せていただけますか?」

俺は村長に石の入ったプレートを手渡す


村長の異変に気付いたルシュがこちらに近づいてくる


ルシュもプレートを見ている

何か感じる所があるのだろうか



プレートをじっと見ていた村長が俺の方に向きなおして尋ねる

「ヨウヘイ…どこでこれを?」


「えーと……」


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以前村長へのプレゼントを作る為に

ピウリから裁縫道具と布生地と綿を購入した時の事である


ピウリから

「はいこれサービスね」

と何かを手渡される


「これは?」


手渡された物を見てみる

大きさは10cm四方程度の薄型のプレート、暗く灰み掛かった黄緑色をしていて、

持つとひんやりとして重みを感じる

恐らく金属製だろう


目を引くのは中央にある丸い石で、濁った色をして少し欠けている

更にプレートには模様の様な溝が彫られている、その形は幾何学模様に見えるが、特に規則性は見当たらない


ちょっとしたアクセサリーにも見えるが…


「村長には手作りの物をプレゼントしようと思ってるんだけど」


俺の言葉にピウリは

「別にそういう意味で渡したんじゃないんだよー

本当にただのおまけー」


「どうしてまた…」

プレートに目を落とす


相当な年季が入っている様で、プレートの角は取れ丸みを帯びていて、

プレートの模様の溝も所々擦り切れている様で、溝がなくなっている箇所がある


中央の石の欠けもそうだが、損傷どころか風化すらしているような気がする


「もしかしてこれガラクタじゃ……」


ピウリが慌てて

「いやいやいや、これはもう珍しいものだよー

まあ確かにアンティークとしてもちょーっと使いにくいかなーってのはあるけど」


そして俺の手からプレートを摘みあげ

「ほら、この中央の石とかなんかちょっと不思議な感じするでしょー?

調べてもらったんだけど、魔道具だったんじゃないかって。

高く売れるかもよー?」


魔道具…とやらの事は一先ず置いておいて、その中央の石も欠けてるじゃないか

「高く売れるならあんたがとっくに売ってるだろう?」


俺のツッコミに対してピウリは、

アハハと笑いながらプレートを再び俺の手に戻した後

「まあまあ、お土産みたいな物だと思って貰っておいてよ。

あっても困らないでしょー?」

と言う


まあ、あっても困る物ではないのは事実か


「うーん確かに、ありがとうピウリ」


「どういたしましてー」


そう言ったピウリの笑顔を見て確信する、

これは体よくガラクタを押し付けられたな……


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あの時の光景を思い出す


「ピウリから貰ったんです」


「ピウリさんですか、確かに彼女からなら頷けますね」

俺の言葉に村長は納得した様子だ



「それで、どうでしょうか?

ピウリは魔道具だったって言ってました」



俺の言葉に村長は少し間を置いてから

「そうですね、

恐らくですが、魔道具としては何の魔力も込められていない未完成品…?

そしてかなり古い物ですね。

ですが、恐らく大丈夫だと思います」


「本当ですか!?」


俺の言葉に村長は優しい笑みを浮かべる


「ええ、少し時間をください。

何とかしてみるので、二人は外で待っていて貰えるかしら?」


俺とルシュを目を合わせる

「やったなルシュ!」


「うん!」

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