第10-3話 再び大樹の水場へ その2

村を出て舗装された道を進むと、森の色が青み掛かっていき、

そこから開けた場所に出る



「わぁ、凄い……」


大樹の水場に入ったルシュが感嘆の声をあげる

青み掛かった空間に巨木がそびえ、上から差し込む陽光が巨木と水場を淡く照らし輝いている

数日前に降ったので、水場は以前よりも広がっていたが、水は透き通っている


俺自身、何度見てもこの光景には圧倒される

大樹の水場の光景に見惚れる俺とルシュに対して

テオックが提案する


「ちょっと休憩するか」


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俺達は木の根が盛り上がっていて濡れていない場所に腰掛け、話をしていた


テオックは当然の事、俺もここに来てから体力が付いたのか

これくらいの距離を歩いただけではさほど疲れなくなっていたが、

慣れないルシュは少し疲労していた


だがここに来てこの光景を目にしてからはルシュは疲労を忘れている様に見える


ルシュはまだここに来たのは二度目の俺と一緒に周囲を見渡したり

はるか高く見える空を見つめていた


「二人とももう少し休んでていいぜ」

と言いながらテオックが目の前にある水場に足を付ける


「おお、良い感じにあるじゃん」

テオックが水場の少し深いところに手を入れ、何かを取り出す


「ほら、コイツが例の物だ」


こちらに戻ってきたテオックが水の中から取り出したものを見せてくる

テオックの手を見ると、そこには半透明でエメラルドグリーン色の

指で摘める程の大きさの石があった


「これが結晶なのか、まるで宝石だな……」


「凄く綺麗…」


関心する俺とルシュを見た後、

テオックがほら、と言ってルシュに結晶を手渡す


「袋に入れておいてくれ」


ルシュは少し結晶を眺めた後、袋の中に入れる


言葉は直には通じていないが、意図するところはルシュも理解できている様だ



「結晶は水の底か、木の根の窪んだ場所とか、たまに根の上にもあるぞ。

大きさは大体これと同じくらいだ。

後数日後だったら多分取れなかったな」

と結晶の説明をしてくれる


「テオック、結晶はどうして雨の後に出来るんだ?」

俺はテオックに疑問を投げかける


テオックはう~んと考えた後

「確か村長が水に溶け込んだ魔素が溜まって固まるとかそんな事言ってた気がする……

俺には良く分からなかったが、まあそういう事だ」


こういった類の話をテオックに尋ねるのはある意味酷だったなと思った


今のテオックとの会話をルシュに説明する

うんうんと頷きながら俺の話を聞いた後にルシュが

「今しか取れないって事は結晶を食べる動物がいるか、それとも溶けるの?」

と俺に話しかけてきた


俺は取れなくなる理由までは考えてなかったので少々驚いたが、

言葉をそのままテオックに伝える


するとテオックは

「あ~、そうなんだよ、少しすると魔素の結晶は地面の中に溶けちゃうんだよ。

だから今日ここに来たんだ。

袋の中なら溶けないから心配しなくていいぞ」


この言葉をルシュに伝えると、予想が当たっていた事にルシュは満足そうな顔をしていた

その表情をひとしきり眺めた後にルシュに話し掛ける


「俺はそろそろお仕事を始めようと思うけど、ルシュはどうする?

もう少し休んでおくかい?」

と尋ねると、


「もう平気。私も手伝う」

と言ってすぐに立ち上がった

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