第8-2話 それは月明かりの下で

家に戻って夕食をとった


外ではちょっと不安そうだったテオックだが、

夕食が出来る頃にはいつも通りになっている

…様に見えた



俺は依然不安ではあったが、

この魔族と人族が恐れる竜族の出現にイマイチ現実感が無かった



「村長が戻ってくるまで、とは言っても

戻ってきたら本当になんとかなるのか?

そもそも、それまでどうやって時間稼ぎをするのか…」


俺の質問にテオックが答える


「まあなぁ、村長は今まで何かあっても大体何とかしてくれたから、

何とかなるんじゃね?」


そこでテオックは少し考える


「帰ってくるまではな~、う~ん

みんながやってる様にご機嫌取りしかないよなあ…

まあ、ん~…

それでも無理だったら無理だったで仕方ないんじゃないか?」


少し引っかかる返事だ

言葉から諦めに近い印象を受ける



死生観の違いと言う奴だろうか


窓から外を見る


いつもなら最低限の灯りだけ残して夜の闇に沈む村だが、

今日は出来事が出来事なだけに灯りが多い



夕食を食べ終える時間ともなると流石に外にいた村人達も家に帰り始めた様だ



たった一匹?だけでこの村の日常が壊れるかもしれない存在

危険なはずだが静まり返っている村


異世界に来ている状態で思うのもおかしいが、非現実的だ



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寝床の倉庫に戻ってから、暫く目を閉じる


「う~ん…」


昨夜のスケルトンとの戦い、

宿場からここまでの道中と疲れきっている筈だが眠れない



気が張り詰めている訳ではない…と思うが

どうにも落ち着かない


……


竜族か、言葉の通りなら

ドラゴンというヤツだろう

共同倉庫の屋根に空いた穴を見る限り、かなり大きいのではないかと思うが

この世界で言う竜は俺の知っている竜と同じなのだろうか


竜族とドラゴンが同じかどうかなんて事は正直どうでも良い話だな…


しかし、この村に来た竜族が何者なのかとても気になる


どうしても気になった俺は、好奇心に従う事にした


--------------------


外に出て周囲を見渡す


村内はいつもより灯りは多い

村人は見当たらない、皆家に帰っている様だ


テオックの家には明かりが点いている

視界に入る家も半数くらいは点いていた

警戒しているのだろう



共同倉庫に向かって少しだけ歩く


…共同倉庫周りにも人影はない

ラピドは見張りを立ててるとは言ってたが



共同倉庫の50メートル付近にまで近づくと気付く

近くの木の下に居眠りしているインプが居た


このインプはサルバ、そうそう動じない性格だから見張りに抜擢されたのか

にしても居眠りをしているのは肝が据わり過ぎだろう



今の俺からすれば寝ていてくれた方が好都合なので、そのまま共同倉庫の入り口に近づく

共同倉庫の扉は閉まっているが、念のため入り口の側面に張り付き、耳をすませてみる



……何も聴こえない


「ここまで来たんだ、今更帰るはないよな」


意を決し、扉に手を掛け、横開きの扉をゆっくり開く



「……!」


共同倉庫の中には確かに何者かが居た


俺は目を見張る、倉庫の内部の様子よりもその存在に釘付けになる







月明かりに照らされた薄緑色の髪を持つ少女の姿は

美しいとさえ思えた

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