第8話 異邦者

村の門をくぐるといつもと様子が違う事に気付く


村人が何人も外に出ている


「おーい、どうしたんだ?」

テオックが声を掛ける


「あ、テオックとヨウヘイ、

帰ってきたんだね、お帰り」

返事をしたのは灰色の体毛のコボルトのアルデリン

タレ耳気味でテオックとは違い大人しい性格だ


「そうそう、大変なんだ!

村に竜族が来たんだよ!」


「竜族…?」

俺とテオックは顔を見合わせる


「ええ、マジかよ、竜族!?」

俺が驚きの声を挙げるよりも早くテオックが叫んだ


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「夕方に村の共同倉庫に落ちてきたんだよ」

アルデリンと一緒に俺達は村の中央、小川が三方向に流れている場所にある

共同倉庫の近くに来ていた


本来ならこの時間帯は村人は家の中にいるのだが、今日は20人以上は居ようかという

村人達が共同倉庫の前に集まっていた


共同倉庫は村人達の非常食となる干し肉や穀物の他、農具や修理用道具等が保管されていて

村長であるメラニーが管理している


その共同倉庫の屋根に大きな穴が空いている事が分かる


横を見ると心なしかアルデリンの顔色が悪く見える

竜族ともなるとやはり恐怖があるのだろうか


正直俺も怖くない訳ではないし、テオックの顔もやや引きつっている



共同倉庫に近づこうとすると、前にいるオークに呼び止められる

「おうお前ら、危ないから近寄らねーほうがいいぞ」

声を掛けてきたのはラピドで、この村の中でもテオックと親交のある友人の一人だ


「ラピド、どんな様子なんだ?」

テオックが尋ねる


「今のところは大人しくしてるけど、もしも暴れたらひとたまりもないぜ。

よりにもよって村長が留守してる間にこれだからなぁ」

村の中では腕自慢なラピドだが、この事態には戸惑っている


「村長はどこに行ってるんだ?」

俺がラピドに質問する


「ちょっと近くの集落に用事があるからって一昨日からな、

あの人は結構頼りにされてるんだよ」


「村長が帰ってきてくれたら何とかなると思うんだけど…

暴れられたら大変だから、取りあえず食べ物を差し上げてるんだよ。

とにかくこのまま村長が戻ってくるまではね」

アルデリンが説明してくれる


倉庫の方向に目をするが、竜族を刺激しないようにするためか、

他の村人が近寄れないように数人の村人が警戒しているので中の様子は見えない



しかし…

実力行使に出ない所がこの村らしい、と言うか竜族が以前のテオックから聞いた通りなら

怒らせでもしてしまうと、あっという間に村が無くなってしまうのだから仕方ない事なのだろう


「正直ご機嫌取りをしてる状態だが、暴れられるよりも余程マシだし、

竜族がいるからって夜のクステリの森に避難するのも危ない。

取りあえず晩は俺達の中から見張りを立てておくから、お前らは帰って休め、

マーテンから戻ってきて疲れてるだろう」


正直かなり不安だったが

ラピドの言葉に従い、俺とテオックは家に帰った

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