第7-4話 限界と可能性

眼前に大型スケルトンの腕が迫る



刹那



大型スケルトンの腕が爆発した

大型スケルトンはバランスを崩し、その腕は俺の脇を掠めて地面に突き刺さる



実際には爆発したのではなく、何かが当たって炸裂し動きが逸れた様で

腕もスケルトンも健在だ



「大丈夫!?」

アロンの声がする



スケルトンの腕に小型の癇癪玉の様な物をぶつけて援護してくれた様だ

これは最初にスケルトン集団に投げ込んだものと同じ物だろう



「あ、ああ、助かったよ、アロン」

すこし呆気に取られていたが、正気に戻る



アロンは動きの速い獣型のスケルトンを既に2体仕留めていて、

今も一体を転倒させた所だった



しかしアロンの攻撃を受けてバランスは崩したが倒せない

この大型スケルトンは俺じゃ倒せないのか…?



「いや……」

以前クステリの森で出会ったラズボードを思い出す


ラズボードの体格はこのスケルトンよりも大きい

それを俺は追い返す事が出来た


「来い!」

あの時と同じ長さ1メートルを超える棍棒を呼び出す



腕が地面に突き刺さっている大型スケルトンはまだ体勢を立て直せていない

やるなら今だ


大型のスケルトンには大型の棍棒をぶつける

「うおおおぉぉぉ!!」

棍棒をフルスイングする、ラズボードの時の光景を思い出す



棍棒がスケルトンに当たる

渾身の一撃を受けたスケルトンは重い音を立てながら崩れる



「はあっはあっ、よし……」


早々に頭を潰さなければ、次起き上がられると倒せる余力が無い


ここで決めないと……!


「これでっ!」

スケルトンの頭骨に棍棒を振り下ろす



「っ!?」

頭骨に当たった棍棒が弾かれる



ただでさえ体も頑丈だったのに、

この頭部は更に硬いのか……!?



「くそっ!」

どうする……!?

このままじゃコイツが再生してしまう



焦りで思考が追いつかない

このまま棍棒で叩くか、叩いても無駄だったらこれ以上もう腕がもたない



エルカンかセドに任せて逃げるか……?





逃げて……


それって俺が役立たずって事じゃないのか




エルカンやセドにはコイツでも倒せる力があるだろう

アロンは素早く動いて、さっき俺を助けたみたいにフォローが出来る

テオックは戦うのは専門じゃないと言ってるのにラズボードの時も俺よりも遥かに動けていた

今も素早い獣型のスケルトンと他のスケルトンを同時に相手にしている



俺には何が出来る……俺はただの人間だ

皆が出来る事が俺には出来ない


……もしかしたら俺はこの世界の人族よりも弱いんじゃないのか……


思考が曇る



俺が出来るのは役に立つかどうかも微妙な棍棒を出す事だけ

こんなもの最初から斧や剣があれば必要ない、せめてテオックの……








待てよ


そこでハッと思いつく、曇った思考が晴れていく


……もしかして



俺は巨大な棍棒を手放して叫ぶ

「来い、棍棒!」


イメージするのはこれまで使っていた棍棒ではない



俺の手に現れたのは

鉄製の棍棒 メイスだった

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