第3-6話 精霊の広場

「なんつーか、悪かったな」

いきなりテオックが謝る


「なにがだ?」


「いや、なんでもない」


ラズボードに遭った事に責任を感じているのか?

それ以上は聞き返さずテオックの後ろを付いていく


暫く歩き続けると、徐々に森の青みがなくなっていき、

いつもの見慣れた森の中になっていった


そこから更に20分ほど歩くと、

開けた場所に出る


「あれ、ここは…」


見覚えがある、中央にある切り株

俺が最初にこの世界に来た時にいた広場だ


「ああ、お前が座り込んでた場所だよ」


こんな所に通じていたのか

あれから一週間くらいしか経っていないが、懐かしい気がした



切り株に近付く

あの時に見た薄く輝く青い花はまだあった


「精霊の花だな」

テオックが花を見ながら言う


「精霊の花?」


「ああ、ここは精霊の広場って言われてて、昔精霊様が住んでいたそうだ、

この花はここにだけ咲くんだ。

精霊様の力かもな、なんかここ落ち着くだろ?」


良く分からないが、たしかに落ち着く気がする


「まあお前は慌てて逃げ出そうとして棍棒振り回してたから落ち着くってのも気のせいかもしれないけどな」

「その事はもう忘れてくれ…」


あれはとんだ醜態だった

テオックはそれを言い振らしたりはしていないようだった


「ここには魔獣も現れたことがないからな、村の連中もこのあたりに来た時は

休憩場として使ってるんだ」


精霊様か、あの時の女の人が関係あるのか?


……まあそれを気にしても仕方ないか


「まだ日が暮れるまでには余裕がある、少しだけ休んでいくか」


「そうしてくれると助かる」



テオックはその場に寝そべり、俺は切り株に腰掛けた

ここ数日でかなり体力はついたが、今日は流石に疲れた


「お前の棍棒を出す魔法があんなに役に立つなんてな」


「俺もそう思ってた」


俺の棍棒を出す能力は魔法として認識されている

これまでの生活で棍棒を必要とする事はほとんどなかったので、

試しに何度か使って何が出来るかを確認した程度だった


分かっている事は、新しい棍棒を出すと前に出した棍棒は消える

自分で持てないほどに巨大、重い棍棒は呼び出せない

呼び出す棍棒の形状をある程度自由にできるが、形が明らかに棍棒じゃない物は呼び出せない三点


ラズボードにフルスイングした棍棒は把握してる限り呼び出せる限界のサイズだった


「あー俺も棍棒出すので良いから魔法が使えたらなあ」

テオックは魔法が使えないらしく、俺のこんな能力でも羨ましい様だ

俺は棍棒を出すよりもっと便利な魔法はいくらでもあると思う


「俺は棍棒出すんじゃなくて火を出す様な魔法が良いぞ」


「それは危険だ、お前が使ったらこの森が燃えちまう」

テオックはくつくつと笑う


暫くテオックと談笑し

疲れを取ってからアステノへの帰路についた

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