第3話「秘めたる意思」
『キーボードをやる』そうは言ったもののやっぱり僕は歌いたい
でも、僕がキーボードじゃなくなれば他にキーボードを弾ける人がいない。どうしたものか…
僕はいつもそうだ。自分の意見をはっきり伝えることが苦手で、一人で抱え込む癖がある。心でどんなに考えていてもつたえなきゃ意味がないとわかっているのに…なんて情けない男だ…
「おーい!尋人ー!練習始めるぞー!」
陽太の呼びかけで我に返る。そうだ、練習だ。僕は文スタの皆と東京ドームを目指すと決めたんだ。文スタのために頑張らないと!
他のメンバーは扱い慣れていないギターやベース、ドラムの演奏方法の勉強を始め、竜美は1人、発声練習をしながら楽譜を見つめ、なにやら考え事をしているようだった。
「竜美、何か考え中?」
「あぁ、今度歌う曲なんだけどね、ここの部分でハモるところがあって、ハモったほうが絶対かっこよくなるんだよ!それに、この曲全体的に勢いがあるから、最後のサビとか、全員で歌ってフォルテッシモを
目立たせたりしたらいいと思うんだよね!」
竜美は音楽について話しだすと止まらなくなる。ピアノをそこそこやってきた僕でも知らなかった用語とか曲名をスラスラと会話の中で出してくれて、いい刺激になるし何より楽しい。…ん?今『全員で歌う』って
言ってたような…
「全員で歌うの、賛成!!」
つい大きな声で言ってしまった
「尋人が大きな声出すなんて珍しいね」
平音が驚いた顔で言う
「でも、全員で歌うの楽しそう!俺も賛成!」
陽太がニコニコして言う
「確かに、全員が平等に目立つにはいいかも…私も賛成」
杏も静かに頷いてくれた
「でも、そんなに大きな声で言うなんて…もしかして、歌いたい願望があったのかい?」
陽太がからかうように言う
だから僕ははっきりと告げた
「うん、僕も歌いたい。僕らの歌で、人を感動させたり、楽しませたりすることが、僕の夢なんだ」
やっと伝えられたこの気持ち、少しだけみんなに僕をわかってもらえたかな。
こうやって少しずつお互いをわかっていけたらいいな。
でももちろんキーボードは継続して頑張るよ!
文スタがいい方向に行くためなら、僕はどんなに辛いことでも乗り越えられる気がする。最高で大切な仲間がいるから。
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