リセマラした結果好きな娘がこなかったが妥協した

零宮

プロローグ 冒険の始まり

「こちらお届け物になっております。えーと、ヤマト・アスカ様でよろしかったでしょうか?」

「はいはい、間違いないです。サインですね?よっと。」サラサラ

「はい。ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております。」

「はいよー、ありがとねー。」ばたんっ。


キタキタキタキタ!待ちに待ったこの時が来た!商品を受け取りつつ、俺はくるくる回りながら自室に戻った。


「いやー、発売してから買うのに結構かかっちゃったからな。」


このゲームを買うために、必死になってバイトをしたかいがあるってもんだ。届けられた箱を開封し中を確認すると、一つのゲーム機と薄い紙が入っていた。


「フーン。思ったよりちっちゃいんだな。」


箱の中の機器に触れながら、俺は薄い紙を見る。多分このゲームの説明書だと思うけど。


【お買い上げありがとうございます。まずはじめにこのゲーム機器の説明からさせていただきます。Smart《スマート》 Tactical《タクティカル》 Adventure《アドベンチャー》 通称スティアはタッチプレイが可能な片手サイズの携帯ゲーム機器となっております。このゲームではキャラクターを召喚し、そのキャラクターと主人公のタッグペアで敵を倒していくRPGとなっています。基本的に活躍するのは召喚するキャラクターとなっておりますが、プレイヤーはそれをサポートすることで戦闘をより一層楽しむことができます。そして、プレイヤーが使えるスキルは1000以上存在しており、プレイヤーの考え方次第で、どのようにでも進めることができます。】


「フーン、なるほどね。ここに書いてあるスキルはよく使われそうなスキルって感じね。」


説明書には攻撃力アップのスキルや回避率といったスキルが書かれている。


「まぁここら辺は後で見てけばいいか。とりあえず続き続き。」


【プレイヤーがつけれるスキルは全部で5種類となっていますので戦いによってスキルを変えていきましょう。そして、このゲームでは持ちキャラクターは一体と決められており、そのキャラクターがやられない限り新しい召喚は出来ません。キャラクターにも種族や属性といったものがありますが、個体差といったものはありませんので安心してください。】


「なるほどなるほど。キャラ差ってのはそんなに関係ないわけか。」


【そしてこのスティアはシグナルのゼクトを使いこの世界に召喚させることができます。ステータスは同一となるよう設定してありますので初心者の方も安心して他プレイヤーと競ってください。】


シグナルとは俺らの都市の名前でゼクトとはシグナルにところどころ存在している塔の名前だ。この塔は全長5メートルくらいの大きさで、空間の演算処理を施している。これにより、映像や写真を立体的に見せることができるのだ。ただしこのゼクトの演算処理ができるのは半径30メートルくらいで、そこからはみ出ると空間情報の処理ができずに映し出された映像や写真は消えてしまうようだ。


「これで俺もようやくスティプレになれるってわけだ。」


スティアはゼクトと同じ会社が作り出していて、この会社はゼクトを作っている時点でスティアの販売を決定していたとどっかのインタビューで見た記憶がある。ゼクトができてからスティアが販売されるまで2年ほどかかったが、そのおかげもあってかスティアの悪い噂は聞いたことがない。それどころか今ゼクトの周りではスティアを観戦するための席まで用意されている。そしてスティアをプレイしている人をスティアプレイヤーと呼び、それを省略して、スティプレと呼ばれるようになった。

勝率の高いスティプレは注目され、聞いた話だとどこかのスポンサーのついた人もいるみたいだ。

俺も有名プレイヤーを目指して、今日から頑張る予定だ。いやほんと頑張るよ?俺。まだこのゲーム詳しく知らないけど…


「さて、説明はあらかた終わったみたいだな。」


残りのページには10人くらいのキャラクター紹介がされている。このゲームに出てくるキャラクターはステータスに偏りがないらしく誰を選んでもいいみたいだが…


「どうせなら、可愛い女の子がいいよな。見た目的には7番の娘かな。ちっちゃくて可愛らしいし。」


ちなみに後で知ったがこのゲームには300以上のキャラがいるみたいで、この紙に記載されているのはほんの一部だった。


「というわけでチュートリアルをさっさとすっ飛ばして、リセマラするか。」


そう言って俺はスティアを手に取り起動させる。多分このボタンでいいと思うけど…

ちなみにリセマラとはリセットマラソンの略称で、目当てのキャラが引けるまで何回もガチャを回す作業のことだ。実際キャラ差はないのでこのゲームでリセマラをしてる人はあまりいないが、俺は妥協は許さないのだ。


「おっついた。」


ピピピピピ


【…ようこそ、スティアへ!】


おっ、フルボイス。


【このゲームはキャラクターを鍛え、あなたと一緒に冒険をしていくRPGとなっています!早速ですが、まずはあなたのパートナーとなる者を召喚してください!】


画面には召喚と書かれたボタンが出ている。


「よっしゃ!俺の運命力、魅せてやるぜ!」


スティアの召喚ボタンをタップして、召喚を始める。おお、召喚陣から光が漏れ出て…


「これが、俺のパートナー…」


そうして現れたのは…厳つい斧を持ったおっさんだった。


【おう!おめぇが俺のパートナーか?俺の名前はイワンってんだ!よろしく頼むぜ!】


…こんなキャラいたっけ?先ほどの紙をもう一度見てみる。うん…やっぱいない。じゃあ何だこのキャラ?バグか?あっ、説明文の一番最後に【ここに記載したキャラクターは一部になっております。】って書いてある。ってことは、ここに書いてあるキャラ以外もいるってことか。 なっ?すぐだっただろ?ちなみに他にはどんなキャラがいるのか検索してみたが、キャラクターの見た目は秘匿情報となっており、見ることはできなかった。キャラをネットに公開することは禁じられており、出回った写真とかもすべて運営が消去しているみたいだった。徹底してるなぁ。


【さて、パートナーも出来たみたいだし、次は…】


この時点でスティアの電源を切り、もう一度スタートさせる。


ピピピピピ


【…ようこそ!スティアへ!】


ふぅ。いや、実際300人以上いるわけだし、そんな簡単には引けないよね。うん。

このゲームはオートセーブ式なので、キャラクターを召喚し最初のダンジョンをクリアしてしまうとパートナーは決定してしまう。しかし引いた直後に電源を切れば、また最初から始めることができるのだ。


【このゲームはキャラクターを鍛え、あなたと一緒に冒険をしていくRPGとなっています!早速ですが、まずはあなたのパートナーとなる者を召喚してください!】


こうして、俺のパートナーをめぐる冒険が始まった。俺の冒険は、まだまだ始まったばかりだぜ!

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