15. 孤立世界を繋ぐ音
「ずいぶん
男性・
大分肩がこったようだ。
「ネットワークが無い仮想地球だからね……」
女性・
デジタルな電子世界だけでなく、アナログな人間社会も、ネットワークが存在して然るべきところ。
まるで、核家族のように。
もしくは、引きこもりのように。
仮想地球4910では、人間間のネットワークが、断絶されていたのだった。
「さすがに、立法事実を抽出するのは難しいな。このビットレートだと」
「うん。判断可能な程の情報を集めるのが、そもそも難しいと私も思う」
男性・
「しかし、自分がこの仮想地球の住人だったら……と想像すると、ゾッとするね」
「私もそう思う。だって、孤立は寂しいもの」
優は圭にすり寄った。その綺麗な髪を、圭はやさしく撫でる。
「それだけじゃない。孤立すると、情報が入ってこないから。情報がなければ、正常な判断もできなくなってしまう」
ゲーム理論でいう、囚人のジレンマだ。
対話が出来るのであれば、もっと良い解を選ぶことが出来るにも関わらず。
孤立している者は、利己的に行動する結果、全体最適な解を得られない。
「人間が群れる理由って、そういうことなのかもね……」
女性・
「その先に、情報の不均衡とか、一部の人間に情報が集中するとか、そういう嫌なやつが出てくるんだろうけどな」
男性・
その笑いを納めた圭は、優の使用する
「しかし……ネットワークの無い世界を、よくモニタリングできたもんだね。どうやったの?」
「モスキート音を使ったの」
女性・
「ん? なにそれ」
「蚊の飛ぶ音のような、周波数の高い音のことなの」
「あー……あれか。歳を取ると、聴力が衰えて、聞こえなくなるっていう」
「そう、それ。この現実世界でも、PCのマイクとかスピーカーをハックして、音声で通信する技術があるでしょ? それを、仮想地球に応用したの」
それを聞いた男性・
「なるほど! それなら、ネットワークが繋がってない世界でも、通信が出来る! ビットレートが低いのも、……そういうことか」
「どうしたって、通信速度は遅くなるもの。通常とは違うチャネルを使うなら」
「納得。じゃあ、入瀬を若年設定で送り込んだのは、正解だったんだな」
と言う男性・
女性・
「子供は耳がいいから。入瀬ちゃんには、仮想地球に住む人達の歌も、しっかり聞こえたんだよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます