小田参考人に対する意見聴取‐一

(西田正広委員長)

 引き続きまして、政府参考人として招致しております、資源エネルギー庁次長小田義英君の意見聴取をおこないます。

 小田参考人は、本件摩耗核惨事直後、前政権において電力各社に要請された全国原子力発電所の稼働停止から、現政権における再稼働方針の決定に至る過渡期におきまして、我が国のエネルギー政策上の決定過程について官僚としての立場から一貫して携わって参りました。このエネルギー政策の度重なる変遷について、間近で、直接的に携わった立場にいたわけです。

 そこで本日は、当行政監視委員会に政府参考人として招致し、その政策変更の経緯等について意見を聴取したいと思います。

 それでは新田委員、どうぞ。


(新田昭君登壇)

(新田委員)

 ただいまご紹介に与りました新田でございます。本日は行政監視委員会の委員として政府参考人小田君に質問いたします。

 質問に先立ちまして、長くなりますけれども申し上げます。

 本件核惨事は、既に皆様ご承知のとおり、我が国開闢かいびゃく以来、否、人類史上稀に見る大惨事に至りました。我が国の被った人的被害にのみ限定して申し上げると、様々な数字が示されて交錯している最中ではありますが、急性被曝症状による死者は約一〇〇万人、その他避難及び「摩耗」襲撃による直接的な死者が更に約五〇万人、つまり本件核惨事による現時点での犠牲者数は、三年八ヶ月にわたる太平洋戦争における我が国国民の犠牲者数約三一〇万人の既に半数に迫っているわけであります。今後多発するであろう晩発性障害による死者数を含めると、予想すら出来ない大惨事であります。しかもこれは我が国に限定した数字でありまして、本件核惨事により影響を受けた環太平洋地域の住民に関しましても、今後何らかの健康上の問題、或いは経済活動上の問題が発生することは疑いがなく、我が国由来の事故により国際社会に与えた影響は計り知れません。僅か一日の出来事によって、全地球規模ともいえる甚大な被害が発生したのであります。

 思えば先の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故におきまして、我が国は初めて過酷事故というものの恐ろしさ、ぎょしがたさを身を以て思い知らされました。時の政権は福島第一原子力発電所事故の発生を受けまして、全国の電力各社に原発の停止を要請し、一時的に稼働している原子力発電所がゼロになった時期もございました。

 この間、エネルギー危機を声高に叫び、再稼働を望む声も一部にはございましたが、真夏時の電力使用量のピーク時におきましても、国民の不断の努力によって節電して、原子力発電所というものが動いていなくても、国民の日常生活に支障がないことが証明されたわけであります。

 しかしながらその後、原子力規制委員会が定めた新規制基準に則り、新たな安全対策を施した原子力発電所については稼働を制限する法的根拠がないことを大義名分として、電力各社が原発再稼働に舵を切り始め、これを阻むものは実質的に国民の行政訴訟によるしかないという、政治不在の状況が生まれたわけであります。

 こういった経緯を経まして、本件核惨事発生直前におきましては、既に廃炉になった幾つかの原子炉を除いて、東日本大震災前と全く同じ状況に逆戻りしてしまいました。動かす必要がないと証明されたものが、国民の良識と総意とは全く関係のない、別の力学によって再稼働することになってしまったのであります。しかもこの間、核燃料サイクル政策の根幹を担う高速増殖炉の廃炉が決定し、かかる政策は背骨を失いました。

 本日は、このように変転した我が国のエネルギー政策につきまして、特に本件核惨事直後の稼働停止要請から、現政権による再稼働容認への政策変更について、この期間に限定して小田参考人の意見を聴取します。

 まず第一に、本日参考人として出席されている佐竹前総理が、本件核惨事直後に全国原発の稼働停止を要請された際、前総理から小田参考人に諮問はございましたか。

 お答え下さい。

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