和泉和子君の質疑-三

(志村復興担当大臣)

 委員のご指摘は法律論的ではあっても現実的ではありませんね。

 逆に委員にお伺いしたいんですけれども、それでは国民の半数以上が住み慣れた地域から避難を余儀なくされている現状を委員は容認されるんでしょうか。社由党は口先では復興に協力するとおっしゃってますけれども、これは総論賛成各論反対の類いで、結局はそういう姿勢は復興の進展を妨げますよ。

 年間被曝線量につきましては二〇ミリシーベルト以下であれば直ちに健康被害が生じるあたいではないと考えております。しかもこの数字は住民の帰還によって大幅に低下してくることが予想されます。除染と住民の帰還は復興の両輪と考えております。その中で住民の帰還という方輪を欠かすことは出来ません。復興政策へのご理解とご協力を改めてお願い申し上げる次第です。


(和泉委員)

 復興事業に関しましては、もちろんこれに協力する気持というものは国政に携わる者として持っております。しかし大臣がそういう問われ方をされるんでしたら、私は理解も協力もちょっと致しかねます。年間被曝線量二〇ミリシーベルト以下という数字は違法だからです。

 はっきり申し上げますけれども、国が法律に違反して、地方自治体からの要請だから、或いは実現不可能な数字だから、罰則のない努力義務規定だから、直ちに健康に影響のある数字ではないこらという、法定の除外自由や違法性阻却事由に該当しない理由で法律違反を公然と行おうとしているわけです。そんな行為に理解も協力もできるはずないじゃないですか。

 大臣、年間被曝線量二〇ミリシーベルト以下というのは本当に健康に影響がない数値なんでしょうか。ないとおっしゃるなら、どうしてそんなことがいえるんでしょうか。

 お答え下さい。


(磯辺厚生労働大臣)

 全く健康に影響しない数字と考えいるわけではありませんが、直ちに影響はございません。


(和泉委員)

 晩発性障害等将来的な影響はあるとお考えですか。


(磯辺厚生労働大臣)

 晩発性障害につきましては現時点発生している事象ではございませんことから、まだ始まってもいない帰還事業との因果関係を断定する立場にはございません。


(和泉委員)

 帰還事業の是非についてはまた後ほど質問致します。今聞いておりますのは、二〇ミリシーベルト以下の被曝であれば将来的な健康被害が発生し得ると大臣においてお考えなのかどうかを伺っております。

 お答え下さい。


(磯辺厚生労働大臣)

 私は専門の医師ではありませんので、放射線被曝による晩発性障害の発生機序については申し訳ありませんが、お答えする立場にはございません。


(和泉委員)

 それでは年間被曝線量が二〇ミリシーベルト以下の地域で放射線障害と思しき生理的障害が生じた住民に対しては政府としてどのように対応されますか。


(磯辺厚生労働大臣)

 重ねて申し上げますが、本件摩耗核惨事によって被災し住民の避難を要するに区域における帰還事業は現時点で始まってもおらず、そのため帰還者の晩発性障害も発生している状況にはございません。現時点において発生してもいない晩発性障害の原因を、帰還事業に求めることは妥当とはいえません。寧ろ現時点でなんでもかんでも放射線の影響だと断定して、補償を焼け即する姿勢を政府が示すことの方が、私は無責任で問題がある対応だと思いますよ。

 したがいまして政府と致しましては、先ほども加藤委員のご質問に対して答弁したとおり、当該健康被害の種類、程度、被害者の居住地域によっては一概に年間被曝線量二〇ミリシーベルト以下の被曝による健康被害と断定できない場合も当然考えられるわけであって、現段階では全く明らかでない、ましてや発生するしていない健康被害について、その原因や責任の所在を明らかにすることは出来ない、というのが現時点において示すことが出来る公式な見解ということになります。

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