和泉和子君の質疑-四

(和泉委員)

 そんな無茶な話ありますか。

 年間被曝線量二〇ミリシーベルト以下を達成した地域から順次住民の帰還を推進していくという政策は、場合によっては法定外の年間被曝を国民に強いる可能性が大いにあるんですよ。

 福島第一原発事故の時には二〇ミリシーベルト以下を達成した地域から住民の帰還を実施しました。その際、自主、強制を問わず避難者に対する公的支援は打ち切られてしまった事実があるわけです。事実上の強制帰還政策だったわけです。公的支援が打ち切られてしまったために、健康被害の不安を抱えながら、避難生活の継続を希望しながらも経済的理由で帰還せざるを得なくなった、それによって法定外の被曝を強要された人たちが現実にいたわけですよ。国策として推進された原子力政策の失敗のツケを、なんで国民が負担しなきゃならなかったんでしょう。

 加害者は電力会社だ、というご意見もあるでしょうが、我が国の原子力政策を推進してきたのは間違いなく国なんです。加害責任の根源は国にあるんですよ。どうして加害者が被害者に対する補償を決定するなどという本末転倒な議論がまかり通ったんでしょうか。普通は逆ですよね。これは私が未だに理解できないことの一つです。

 本件核惨事においても、どうやら福島第一原発事故の際の帰還事業をモデルケースとされるおつもりのようですが、帰還後の晩発性障害と被曝との因果関係は現時点では認められない、だから補償は約束できない、それでも帰還しろなどという乱暴で横柄な態度が許されるとでもお考えでしょうか。選挙で勝ったら何をしても良いんでしょうか。主権者たる国民の基本的人権を侵害しておいて、一体何様のおつもりなんでしょうか。

 次は志村大臣に伺いますが、本件核惨事の被災地域において避難指示が解除された場合、当該地区の住民で自主的に避難を継続する住民に対しては、福島第一原発事故の際の対応と同様で、やはり公的支援を打ち切るというお考えでよろしいですか。


(志村復興政策大臣)

 基本的にはそのように対応して参る所存でございます。

 しかしながら、帰還後の住民に対しては、将来的に何らかの障害が発生した場合において、発症時点における積算被曝線量を明らかに出来る仕組みを現在検討中であり、委員が指摘されたように国として晩発性障害の発生に対して全く責任を取らない、ということはございません。

 いずれに致しましても、帰還事業はその緒にすら就いておりません。発生機序が必ずしも明らかではない晩発性障害徒に恐れて復興事業を阻害するようなことがあってはならないと考えております。


(和泉委員)

 晩発性障害を徒に恐れて、とおっしゃいましたが、それでは伺います。大臣は年間被曝線量にして二〇ミリシーベルト以下を達成した地域で、ご家族を連れて生活することが出来ますか。

 お答え下さい。


(志村復興担当大臣)

 委員はいささか感情的になっておられるようですが、私はそのような感情論で議論しているわけではございません。

 ICRPは放射線防護に関する国際機関でございます。そのICRPが事故収束時の年間被曝線量の許容数値として示したのが二〇ミリシーベルト以下なんです。これは国際機関が認めている数字なんです。

 委員が、年二〇ミリシーベルト以下の被曝で晩発性障害が発症するという何か明らかな論拠があるというのでしたら、逆にお示し願いたい。

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