加藤弘君の質疑-七

(加藤委員)

 責任ある政府という言葉が出て参りました。除染土から環境中に流出した放射性物質による健康被害については誰が責任を負うのでしょうか。


(廣瀬内閣総理大臣)

 ですから先程来柴田大臣から説明させてもらっておりますとおり、コンクリート或いはアスファルトで遮蔽してこれを再利用しますと説明しているわけですよ。なぜこういう再利用方法を選択したのかと申しますと、そうすることによって委員が心配されているような健康被害が発生しないことが科学的に立証されているからなんです。加藤委員はあんまり責任責任といって除染土再利用の問題を政争の具にすることはやめていただいてですね、復興政策にご協力いただきたいと申し上げてるんです。(加藤委員「納得いかないから質問してるんだよ」と呼ぶ)


(加藤委員)

 ちょっと待ってくださいよ総理。そんなこといわれたら、まるで私が復興政策の足を引っ張ってるように聞こえるじゃありませんか。(「実際引っ張ってるじゃないか」と呼ぶ者あり)

 誰だ今の。おい今の誰だ。


(大垣委員長)

 静粛に願います。加藤委員は質問を続けてください。


(加藤委員)

 今私が質問している問題が解消されないまま復興政策を推し進めても、それはきっと後世に禍根を残しますよ、ということを私は言ってるんです。実際百年以上前に問題になった足尾銅山鉱毒事件の被害が、地震や豪雨という自然災害をきっかけにして一世紀後の現代に噴出した事実があるわけです。この事実は、こういった公害が現代に至るまで地元の住民の方々にその害を押してけ続けてきた歴史を明らかにしたわけですよ。

 コンクリートやアスファルトってのは未来永劫その形状を保てるものなんでしょうか。違いますよね。劣化もすれば破壊されることもある。将来的に除染土が流出して健康被害が発生した場合に、責任の所在や健康被害の原因そのものが、因果関係が認められないという定型的言い回しのもとに不問に付される事態を私は問題視してるんです。

 被災地復興のためには除染土再利用がどうしても必要だって言うなら、そういったものを再利用したことによって起こる健康被害の責任の所在は少なくとも明らかにしておいてください。


(廣瀬内閣総理大臣)

 除染土につきましては、道路及び堤防に限定してこれを再利用致します。その際、アスファルト及びコンクリートによって遮蔽いたしますが、これはそうすることによって除染土が帯有たいゆうしている放射線が環境中に流出しないことが科学的に立証されているからであります。

 よしんば環境中に除染土が流出した場合であっても、当該健康被害の種類、程度、発症者の居住地域によっては一概に除染土による健康被害と断定できない場合も当然考えられるわけでありまして、現段階では全く明らかではない、ましてや発生すらしていない健康被害について、その原因や責任の所在を明らかにすることは当然出来ません。出来ないことを約束する方が私は無責任だと思いますよ。


(加藤委員)

 それでは除染土流出のよる健康被害が発生しても政府としては一切関知しないということでよろしいですか。


(廣瀬内閣総理大臣)

 私は、健康被害についてはこれが発生しないことを前提としてお話ししているわけでございまして、委員のように健康被害の発生を前提に質問されてもちょっと困ります。

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