小笠原貞弘君の質疑-五

(廣瀬内閣総理大臣)

 現実に発生した過酷事故の状況によって、責任の所在は変わってくると思われます。

 いずれに致しましても現実に発生していない過酷事故の責任の所在をこの場で議論することに、私は意味があるとは思えません。


(小笠原委員)

 総理、それは考え違いですよ。原子力発電所というものは正常運転している間でも非常に強い放射能を環境中に放出しているわけです。これを廃炉にしようと思うと、大変な時間と労力を必要とするわけですよ。常時高線量に曝され続けている圧力容器や格納容器の処理方法だって未だに確立されているわけじゃないんです。無毒化に十万年かかるといわれている高濃度汚染物質の処理方法だって、全く確立されていないわけです。

 何もね、この場で十万年後の、想像も出来ないような先のことにまで責任持てと言ってるわけじゃありません。でもね、少なくとも二、三世代先のことは考えましょうよ、我々世代の責任として。

 福島だって我々の世代で処理が完了する見通しは立ってないんです。電力会社発表のロードマップですら廃炉に四十年かかると正式に認めているじゃありませんか。試算の時点で既に我々の世代では処理を終えることができないことが明らかなんですよ。しかもその四十年という数字も、一部では実現不可能だという声が根強くあるんです。

 総理は所信表明演説において、核種変換技術について言及されましたけれども、あれだって全く放射性物質を無毒化できる技術ではないと聞き及んでいます。変換はできるけれども、そのための設備投資は膨大な金額に上り、しかも変換の過程で有毒な放射性物質が新たに再生産されるそうじゃありませんか。総理は核種変換技術に望みを託されているようですけれども、そんなものに資材を投入するくらいだったら原発そのものをもうめてしまいましょう。そうした方がよっぽど建設的だと私は思いますよ。

 縷々るる申し上げましたけれども、未発生の過酷事故の責任について論じることは総理のおっしゃるように意味のないことだとは私は思いません。ちょっとそこのところ、もう少しお考えいただきたい。

 さて質問に戻りますけれども、先ほど、燃料保管用プールから使用済み核燃料が転げ落ちたことで、磐城第二及び常陸第二原発がそれぞれ連鎖的に過酷事故に至ったと申し上げました。現在、福島第一原発廃炉作業区において、本件核惨事の原因ともなった使用済み核燃料はどのように処理されておりますでしょうか。


(廣瀬内閣総理大臣)

 現在、福島第一原発跡地に所在する使用済み核燃料につきましては、摩耗上陸後速やかに自衛隊が砂と砂利を水で混ぜたスラリーによって覆い被せました。このスラリーにはホウ素を混入させており、このホウ素の作用によって使用済み核燃料の核分裂反応は抑制されております。


(小笠原委員)

 では現時点、使用済み核燃料がスラリー下でどのような挙動を示しているか、明らかになっておりますでしょうか。


(廣瀬内閣総理大臣)

 その点に関しましては、現在廃炉作業区は相当な高線量でありまして、解析は進んでおりません。しかしながら、既にホウ素の作用によって核分裂反応は抑制されており、スラリー下の使用済み核燃料が今後新たな破局事故の要因になることは化学的に考えられません。政府と致しましては、寧ろ磐城第二及び常陸第二発電所の溶融燃料について、その所在を明らかにし、撤去方法を検討確立することを最優先事項とし、それに対処していく所存であります。


(小笠原委員)

 相当な高線量に曝されて、人間が近付くことすらできない地域に放置されている使用済み核燃料が、新たな破局事故の原因になり得ないとどうして断言できるんでしょう。


(廣瀬内閣総理大臣)

 ですから、ホウ素には核分裂反応を抑制する作用がございますので、その作用により使用済み核燃料の核分裂反応は既に抑えられている、という化学的根拠に基づいて申し上げております。


(小笠原委員)

 それでは現在、使用済み核燃料がスラリー下でどのような挙動を示しているか、その周辺で何が起こっているか、知り得る術はない、ということでよろしいですか。例えば付近に監視カメラを設置するなどして終始これを監視下に置く、というような対策はお考えでしょうか。

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