小笠原貞弘君の質疑-三

(小笠原委員)

 巨大球体の出現の可能性を予見していたかどうかなんて、そんなこと聞いてませんよ。質問の意味が分からないとか言葉の意味が理解できないという次元の話じゃないですね。これは明らかに質問の意図を理解していながら、はぐらかしているとしか思えません。ですからもう単刀直入に質問申し上げます。

 東日本大震災の直後にですね、発生当時の政権によって全国の原子力発電所が稼働を停止いたしました。残念ながら、その次の内閣によって安全基準の見直しと、基準を満たした原発の再稼働という方針が示され、続々と再稼働を開始したわけであります。この一連の流れから本件核惨事までを見渡しますと、まさに喉元過ぎて熱さ忘れるのたとえどおりですよね。

 福島第一原発事故の折にですね、相当その収束作業に苦労したわけですよ。時々刻々と原子炉の状態が悪化していく中で、それが一個の原子炉に止まらず三基同時に進展したわけです。とんでもない量の放射能が環境中に放出されて、故郷に帰還できない住民の方々が福島にはたくさんいたわけですよ当時。

 この悪夢のような福島第一原発事故の発生を受けて、全国の原発停止が時の政権から各電力会社に要請されたわけですけれども、それを継続、発展させて、従来の原子力政策から脱するべきだったとは思いませんか。

 あの時、原発というものがとんでもなく危険な代物であるということが明らかになったわけですよ。我々はそのことを否応なく思い知らされたんです。もし福島第一原発の事故を契機として全国の原発の即時廃炉が進んでおれば、その時点で、新たな放射性廃棄物が増えるという事態は少なくとも避けることが出来たわけです。そういった危険な代物の貯蔵方法も変わっていたかもしれない。結果として今回の核惨事を防ぐことが出来たかもしれないんです。

 今私が申し上げたのは多分に希望的な観測かもしれませんし、過去の政策の誤りについてほじくり返すことが復興の進展に寄与するかといえばそうではないかもしれません。

 しかし本件核惨事を経てなお、原発再稼働の方針に舵を切ろうとする現政権の方針が、福島第一原発事故後に一旦全国原発の稼働を停止しておきながら、早い段階で再稼働に転じた一連の政治的動向と完全に一致していることに私は大いなる危惧を抱いています。

 総理は前内閣が示した全国原発の稼働停止要請を継続、発展させるべきです。あまつさえ復興にかこつけて再稼働に舵を切るなど、言語道断の決定といわざるを得ません。

 総理、今からでも決して遅くないと私は思います。唐突に表明された原発再稼働の方針をこの場で撤回してください。


(廣瀬内閣総理大臣)

 今後求められる被災地復興のためには、火力水力その他の自然エネルギーではその需要をまかないきれないことは明らかであります。

 原油の価格というものは委員もご承知のとおり、産油国の政情に左右されるものであって、これが価格、量共に安定的に供給される保障というものは全くないわけですよ。しかも本件核惨事の発生による経済的打撃は計り知れず、原油の輸入額も国民生活を圧迫することになります。我が国の置かれた現在の危機的状況の中で、安定的にエネルギーを供給できる可能性があるのは原子力をおいて他にないことは、これは明らかなのであります。

 我が国が福島第一原発事故後に新たに策定した規制基準の厳格性にかんがみ、これを満たしている原子力発電所の再稼働につきましては法的に何ら問題ないという政府の立場に変更はございません。政府と致しましては原発再稼働の方針については継続し、更に発展させ、復興に邁進する所存であります。


(小笠原委員)

 これほどの被害を出しながら世界一の安全基準も名もあったもんじゃないと思うんですがね。

 総理はコアキャッチャーというものをご存知かと思います。格納容器から漏れ出た溶融燃料の受け皿みたいなものなんですけれども、そもそも世界の原子力発電所においては、もはやスタンダードになりつつあるコアキャッチャーすら、規制基準に含まれていなかったじゃないですか。これ、中国の原発ですら標準装備ですよ。そういったものが、我が国では設置義務がないんです。これのどこが世界一の安全基準なんでしょう。

 お答えください総理。

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