代表質問‐三

 次に、本件災害に伴う賠償責任の所在について、総理に質問します。

 本件災害による避難者は少なくとも六一〇〇万人に及び、その殆どが一夜にして安定した職や家財を失いました。これら避難者や高濃度汚染による急性死者、その他の犠牲者に対する賠償問題が、昨日の所信表明演説においてひと言も言及されなかったことに、私は深く失望致しました。

 勇ましい軍拡論や展望の見えない汚染水及び汚染源処理方法については厚顔無恥な政策論をまくし立てた総理が、一転、一家の大黒柱や家財の殆ど全てを失った災害遺族、避難民の皆様方に対する賠償問題について一切口をつぐんだ在り方につきましては、本国会の場でことあるごとに追及致します。

 そもそも本件災害は、巨大球体上陸による被害よりも巨大球体による複数の原子力発電所襲撃によって放射性物質が大量に漏出したことが被害の拡大を招きました。政府は巨大球体を半ば恣意的に生物と断定したことを以て、その被害については「原子力損害の賠償に関する法律」第三条第一項但書ただしがき、すなわち「その損害が異常に巨大な天変地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りではない」という条文を準用して、電力各社の免責対象事案であると安易にお考えなのではないでしょうか。(「実際そうだろ」と呼ぶ者あり)

 そもそも法解釈上のかかる誤謬ごびゅうは、巨大球体を生物であると認定した政府の決定に端を発するものであります。その目的とするところは、災害発生時においては武器使用の責任を自衛隊に一元丸投げすることだったのであり、現在においては電力各社による損害賠償責任の免責だったのではなかったかと強く疑われるのであります。

 私は、かかる恣意的決定による電力各社の免責の動きを阻止し、本件核惨事の損害賠償賠償責任の所在を明確なものとし、その責任を負うべき機関に適切に賠償を行わせることによって、被災者避難者の皆様方が安心して生活再建に邁進できる体制づくりを総理に求めます。

 

 さて総理は、昨日の所信表明演説において教育の底上げによる除染活動の推進に言及されました。それ自体はまことに評価されるべき政策ではありますが、私に理解できないことは、当該政策の目的の一つに、原子力政策の更なる推進を上げられた点であります。

 過去の或る内閣においては、福島第一原子力発電所事故を惹起せしめた我が国の、いやしくも総理大臣が、トップセールスと称して東南アジア及び東ヨーロッパの新興国に対し原子力発電所の新規建設を売り込む暴挙に出ました。現地の人々にとってはまことに迷惑きわまりないセールスだっただろうと考えます。

 他国に対してかかる厚顔無恥なトップセールスを敢行し、核惨事を経た今日においても、原子力政策拡充を見据えた教育の底上げを提唱するなど、まさに亡国の論であります。

 私は、教育とは未来への投資であると考えます。国家が如何に困難な状況に置かれたとしても、その困難を克服し明日へと雄飛するための要諦は教育にこそあると考えます。然るに総理は、明日の日本を破滅に導く恐れを大いに含んでいる原子力発電のために教育を底上げしようと表明されました。これを本末転倒と言わずしてなんというのでありましょうか。

 また教育底上げの成果として、核種変換技術の確立による放射性物質の無毒化に取り組むと明言されましたが、所謂核種変換技術は総理が陳べられたように理論上可能ではあっても、それにより別の新たな放射性物質が生成されるといわれております。このような先の見えない教育論を振りかざし、過ちを認めようとしない政府の方針については本国会でしっかり追及して参ります。

 

 いずれに致しましても、現政権にこの国難を収拾する明確なビジョンがないことは昨日の所信表明演説により図らずも明らかになりました。我が党は本国会において確かな足取りによる復興政策を提唱しながら、同時に本件核惨事における政府の責任についても追及して参る所存です。


 ご静聴ありがとうございました。(拍手)

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