所信表明演説‐五

 私は、このような状況を打開し、まさに原子力発電こそが我が国の未来を切り拓く技術であるとの確信を国民の皆様方に改めて示し、次世代の技術者を育成することにより、より安全なエネルギーとしての原子力発電を目指し、従来の核燃料サイクル政策を継承するとともに、放射能汚染の無毒化技術の早期実現を目指します。

 そのために、義務教育の内容を更に充実させ、教育水準の底上げを図ると共に、核変換技術を研究する大学その他研究機関に新たに予算を投入致します。(「実現不可能」と呼ぶ者あり)

 更に、教育の底上げは人工知能、所謂AIの研究開発に資するものであります。高濃度汚染地域は依然作業員が立ち入ることが出来る状況にはなく、これを除去することはもとより容易ではありません。しかしながら既に我が国で他国に先んじて獲得しているAI 技術の、除染活動への活用を目指すことにより、現時点で我々が実施し得る如何なる除染活動よりも効率的で効果的な除染を行い得るものと信じます。このように教育分野の拡充は、我が国の浮沈の鍵を握っているといっても過言ではありません。


 外交方針に関する所信を申し上げる前に、摩耗核惨事の収束及び住民の避難誘導、救援物資、資金援助等多大なるご協力とご援助を得ました米国をはじめとする世界各国に対しまして、国民を代表しこの場を借りて感謝の意を表します。我々日本人は、未曾有の大災害に直面しましたが、同時に、世界各国から寄せられたご厚意に強く心を動かされました。「我々は孤独ではない」と。

 外交に関しましては、依然として基軸である米国との同盟関係を重視し、劇的に変容する国際社会に対応していく所存であります。具体的には、強制避難区域に立地していた米軍基地の西日本移転を、地元自治体と粘り強く協議を重ね実現して参ります。

 この度の災害に関しまして、我が国自衛隊の活躍は言うに及ばず、「摩耗」襲撃からの国民の避難誘導に際し、在日米軍が「フレンドシップ作戦」と称する人道支援作戦を実行し、これにより多くの国民の生命が救われました。まさに、日米同盟が我が国の国益にかなうものであると再認識できた好事例であります。


 最後になりますが、未曾有の大災害を経て、我々日本人は自信と誇りを失ってはいないでしょうか。

 ここまで縷々、復興に賭ける私の所信を申し上げましたが、本件摩耗核惨事により失われた日本人としての自信と誇りの復興が成し遂げられなければ、政府の復興政策に意味を見出すことなど出来ません。

 国民の皆様方、そして議場にお集まりの各党各会派の皆様に改めて申し上げます。

 現在、我が国はまさに存亡の淵に立たされております。国土の荒廃と経済的混乱によって、国民は日本人としての自信と誇りを喪失し、哀しみと絶望、怒りと不信が至るところに蔓延して、これらが間隙を衝いて我々の心を支配しようと企んでおります。

 復興の大義を果たすために求められるのは、国民、政治家、官僚その他が、それぞれの立場で全力を尽くすことであります。所掌しょしょう事務や行政の区割りなどの些事さじ拘泥こうでいして、お互いの足を引っ張り合っているいとまは、現在の我々には寸刻も与えられてはいないのです。

 偉大な先達は、まさに挙国一致して、敗戦直後の荒廃や東日本大震災からの復興を成し遂げました。同じことが我々に出来ない道理がないのです。

 今こそ万難を排し、国民一丸となって、必ずやあの美しかった国土を取り戻そうではありませんか。子孫のため、そして何より、今を懸命に生きる我々自身が、明日への希望を抱くことが出来るようになるために。(拍手)

 ここに、復興に賭ける私の所信の一端を陳べました。皆様のご理解とご協力を改めてお願い申し上げます。


 ご静聴ありがとうございました。(拍手)


(財務大臣演説は省略)


(議長を呼ぶ者あり。議長「坂上孝介君」)


(坂上孝介君)

 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明十一日午後二時から本会議を開き、これを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。


(榊原議長)

 ただいまの、坂上君の動議にご意義ございませんか。異議なしと認めます。

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