所信表明演説‐二

 政治に求められているのは、今日を懸命に生きる人々が、明日に希望を抱くことが出来る社会づくりだと思います。初当選以来、私はそのことを肝に銘じて政治活動に邁進してまいりました。

 今回の摩耗核惨事に伴う、文字どおり我が国始まって以来の国難を思うとき、復興の使命は重く、待ち構えているであろう数々の困難は並大抵のものではありません。ともすればくじけそうになることがあるかもしれません。しかし、私は今こそ、先ほど陳べました初心に立ち返り、今日を懸命に生きるこれら国民の皆様方が、明日こそ故郷を取り戻すことが出来るのだという希望を持てるよう、課せられた政治の使命を全うする決意であります。(拍手)


 被災者の皆様方の生活再建は、復興の基盤であります。政府がいくら声高に復興を唱え、その旗を振ったとしても、まずは被災者一人ひとりの生活基盤を確固たるものにしていかなければ、真の復興とは呼べません。

 本件摩耗核惨事における避難者数は、強制及び自主を含め現時点で六一〇〇万人にも及んでおり、これら避難者の皆様方の当面の生活の場である仮設住宅の建設は、事件収束当初と比較して飛躍的に進展してきてはおります。復興庁の試算によれば、本年度中には仮設住宅入居待機者はゼロになると予想されております。

 しかしながら仮設住宅の急激な増設に、電気、ガス、水道などの、生活の基本となるインフラ整備が追いついておらず、依然として電源車、給水車等による外部からの供給に頼っている地域が多くあるのが現状であります。心ならずも避難を強いられた方々が、仮設住宅を拠点にして新たな生活の一歩を踏み出すためにも、これら生活インフラの整備は急務でありまして、そのために、政府は現在第五次補正予算の準備作業を速やかに進めているところであります。

 また、従来の縦割り行政の弊害につきましては、加速しつつある復興の阻害要因となっているというご指摘がございます。政府はこれを見直し、前内閣から引き続いて、徹底して行政の簡素化を図ります。具体的には不要不急の公共事業凍結、公務員の人員削減と給与体系の見直し、国有財産の売却等、痛みを伴う改革を断行致しまして、復興予算を捻出してまいります。

 一方で、本件摩耗核惨事発生当初から「摩耗」の駆除や、避難民の誘導、暴走する複数の原子力発電所の冷却作業に、命の危険を顧みず臨んだ自衛隊については、今後もその持てる力を汚染区域の除染のために最大限発揮するため、かつ近隣諸国家に軍拡政策との疑念を抱かれることがない範囲で、増員に取り組みます。

 また、損耗した装備を補充し、本件処理の過程において新たに得られた知見を活かした耐放射線装備の開発、配備が急務であるとの観点に立ち、防衛予算の拡充を図ります。

 これによって、政府の責任において若年世代の雇用を創出すると共に、産業の活性化を図り、自衛隊が有している災害発生時の復旧復興活動の高度なノウハウを、本件摩耗核惨事の復旧復興に役立てます。

 かかる観点に立脚する防衛予算の増額につきましては、世界の恒久平和を希求し続けてきた戦後日本の永年にわたる努力に照らして、国民の皆様方及び近隣諸国家の理解を得られるものと信じます。


 核惨事は、現在も収束にほど遠い状態にあると言わざるを得ません。「摩耗」が駆除されました青森県六ヶ所村におきましては、「摩耗」の死体から流出した大量の放射性物質が、異常な高濃度汚染を周辺地域にもたらしております。(「駆除の意味分かって言ってるのか」「死体じゃねえだろ」「いつまでそんなこと言ってるんだ」と呼ぶ者あり。議長「静粛に願います」)

 解析によると、流出した放射性物質のみならず放射化された「摩耗」の死体そのものもまた、汚染源であるとの結果を得ております。更に、「摩耗」が侵攻いたしました東北地方太平洋沿岸部に立地する複数の原子力発電所周辺には、「摩耗」の侵攻に伴い散乱した無数の使用済み核燃料が、再臨界のおそれが既にない状態にあるとはいえ、今現在も石棺に埋められた応急処置の状態で放置されていることも問題であります。 

 これら汚染物質が依然として災害発生当初とほとんど変わらない状態で現地に放置されている状況は、復興復旧の最大の妨げになっていると共に、汚染源の未処理に端を発する汚染水の海洋流出の問題が、国際社会における我が国の信用問題に発展している現状はまことに遺憾とするところであります。

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