むくじゃら



僕には毛がある。

その点、君より勝っているのさ。


木洩れ日を浴びたら微かに震える、あの熱を感じたことはあるかい。

君には分からないのだろうけど。


風のない夜、どこにもない葉に撫でられる、あの心地よさを知っているかい。

君は覚えていないだろうけど。


凍てつく朝に死んでしまった友達の、背中にいくつもの虹がひかる、

あの美しさを知っているかい。

君にはどうせ、濡れた毛むくじゃらにしか見えないのだろうけど。


あのやわらかさを知っているかい。

僕らの全身を包んでいた、無数のやわらかさが、あんなに美しかった時のこと。


永遠の草原よりも、ずっとずっと、

美しかった時のこと。



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