さんしょううお




煙を呼吸とまちがえたまま

いきをする。

パイプ椅子の上ちかちかする蛍光灯。

取り違えたまま生きている、という

確信だけがある。

溜め息に代えて煙を吐いても

しあわせは、逃げますか。


ちかちかしている蛍光灯の、

一瞬に満たない暗黒の

トンネルのあちらに

明星が隠れている。

暗がりでしか見えないものを

しあわせと、

信じていいか分からずに煙を吐いている。

穴のあいた奥歯のすきまに

昨日食べたものと毒ガスがつまって

いずれこの部屋の人間は息絶えるのだろう。


呼吸が止まっても、

煙をすってはいて生きていける

そんな気がずっとしている。

えら呼吸に似た生態の変化を夢想して

さんしょううおの世界に

水音。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る