書籍12巻部分
豆腐をメインに!豆腐ステーキ。
ぷるんぷるんと揺れる白い物体を前に、
まぁ、醤油や味噌が流通していたり、悠利が作る和食系の味付けが嫌われていないので、それほど味覚に差はないと思っているのだが。
そんな豆腐を、悠利は皆に美味しく食べて貰いたいと思っている。味噌汁に入れるぐらいは可能だが、冷や奴は今一つ不評だった。普通に食べていたのはヤクモぐらいだが、彼はそもそもの食文化が和食と似ている地域で育っているので除外しよう。
どうせなら、喜んで食べて貰える料理にしたいなぁと思っている悠利だ。豆腐のポテンシャルを引き出すにはどんな料理にすれば良いだろうかと、必死に考えている。
考えて考えて、そして悠利ははたと気づいた。皆が好む味付けに仕上げる方法がある、と。
「豆腐ステーキにしよう!」
名案だと言いたげに悠利が叫んだのには理由がある。豆腐ステーキの味付けは照り焼きっぽいのだ。つまり、甘辛。お肉大好き、ボリュームを求める皆にも好評になること間違いなしだった。
また、味付けは濃くとも豆腐は豆腐。ヘルシーでさっぱりとした味わいも残るので、食が細い面々にもきっと受け入れてもらえるだろう。良いアイデアが見付かって、悠利はご機嫌だった。
そうと決まれば下準備をしておかなければならない。豆腐ステーキを作るときには、大事な大事な下準備があるのだ。揚げ出し豆腐などでも同じだが。
そう、豆腐の水切りである。
豆腐には水気があるので、調理する前にそれをしっかりと切っておくことが必要だ。悠利はいそいそとバットを幾つも取り出して、そこに清潔な布巾を敷いた。その上に、水をしっかり切って半分にスライスした豆腐を丁寧に並べていく。
切らずにそのままのサイズで豆腐ステーキにすると、ちょっと厚みがありすぎるのだ。厚みがあると、表面にいくら照り焼き風の味を付けたところで、真ん中の豆腐の部分に届かない。どこを食べてもしっかり味があるように仕上げるには、半分ぐらいにスライスする方が良いのだ。悠利の体感では。
そうやって豆腐を並べたら、豆腐を包むように布巾を折りたたむ。そうして布巾で包むことによって、豆腐の水気を吸い取って貰うのだ。
現代日本にいたときは、布巾ではなくキッチンペーパーを使っていた。ついでに言えば、布巾などを使って少し斜めにしたまな板の上に並べていた。ただ、人数の多さもあってそれでは追いつかないので、今日はバットを活用しているのだ。
「よーし。準備オッケー。後はご飯の前に焼くだけだね」
豆腐の下準備を終えた悠利は、今のうちの他のメニューを考えようと冷蔵庫の中身と睨めっこを始めるのだった。豆腐ステーキだけがメニューではないので。
「と、いうわけで、今日の夕飯は豆腐ステーキです」
「豆腐で、ステーキ?」
「そう」
「……何かイマイチ想像が出来ねぇなぁ」
首を傾げるカミールに、悠利はあははと笑った。確かに、ステーキという単語と豆腐が結びつくかと言われたら、結びつかない。それでも、実際に豆腐ステーキという料理なのだから仕方ない。
バットの中の布巾に包まれた豆腐を、カミールは不思議そうに見ている。布巾は湿っており、水気をしっかり吸い取ってくれているのが解る。
「水気をよく切った豆腐を焼いて、照り焼きっぽい味付けにするんだよ」
「照り焼きって言うと、甘辛い感じの?」
「そう、それ」
「美味そうだな」
「美味しいよ」
悠利の説明にふんふんと頷いていたカミールは、先ほどとは打って変わって嬉しそうに顔を綻ばせた。照り焼きっぽいと聞いて、考えを改めたらしい。照り焼き系の味付けは、食欲旺盛な若手に大好評なのだ。
布巾をぺろりとめくってみれば、ぷるんとした豆腐が現れる。水分は布巾に吸い取られたのか、いつもより水気が少なく見える。その豆腐を、悠利は乾いたまな板の上へと移動させる。
「こうやって水を切った豆腐に、型崩れしないように小麦粉をまぶします」
「了解。けど、どうやってまぶすんだ?豆腐だろ?ヘタに触ったら壊れそう」
「今日はこれを使います」
「……茶こし?」
「うん」
えっへんと胸を張って悠利が取り出したのは、茶こしだった。細かい目が特徴的な小さな手持ちザルみたいなやつだ。
何をするのかと不思議そうな顔をしているカミールの前で、悠利は茶こしを豆腐の上に構えて、その中へ小麦粉を入れた。そして、とんとんと揺することで振りかけていく。
「あぁ、そうやってまぶすのか」
「うん。これなら全体に行き渡るかなって」
小麦粉が付きすぎないように気を付けながら、豆腐をコーティングしていく。片面が終われば、豆腐を壊さないようにそっとひっくり返してもう片方。
そこでカミールは、側面が残っていることに気付いた。
「ユーリ、横は?」
「横は、周りに落ちた粉をそっと指で付ける感じで」
「了解」
「流石に、立てると壊れちゃいそうなんだよねー」
「確かに」
豆腐は柔らかいので、あまり何度も動かすと壊してしまいそうになる。壊れたら元も子もないので、側面に指で小麦粉を付ける作業も真剣だ。
そうやって全体に小麦粉をまぶしたら、次は焼く作業だ。
「焼くときは、フライパンに油を入れて中火ぐらいにして、豆腐をそっと入れます」
「バチバチ言う」
「小麦粉をまぶしてても、水分が完全に抜けたわけじゃないからねぇ」
「水気が残ってたら大惨事だろ、これ」
「まぁ、水と油だから……」
気を付けようと戦々恐々とするカミールに、悠利は思わず笑ってしまった。確かに、油ハネはとても怖い。怖いというか、ハネた油が皮膚に触れると火傷をしてしまうので、それが嫌なのだ。
食材が豆腐なので、そこまでしっかりと焼く必要はない。ただし、小麦粉をまぶしたのでそこがちゃんと焼けるかどうかは大事だ。こんがりときつね色になるように焼くと、香ばしさが際立って実に美味しく仕上がるので。
ジュージュー、パチパチと食欲をそそる音が聞こえる。じぃっと二人で豆腐の状態を確認し、音が少し変わったところで悠利はそっとフライ返しを豆腐の下に差し込んでみる。
軽く持ち上げると、真っ白だった表面がこんがりきつね色に焼き上がっていた。
「うん、良い感じ。ひっくり返して反対側も焼くね」
「壊すなよー」
「気を付けるー」
カミールの心配ももっともなので、悠利は決して怒らない。そっと、そぉっと、壊さないように気を付けながらフライ返しを滑り込ませて豆腐を全て載せ、これまた壊さないように気を付けてひっくり返す。
ひっくり返した瞬間、まだ焼かれていない面が油に触れたことで、再びジューっという音が響いた。壊れず綺麗にひっくり返せて、悠利はご満悦だった。カミールも小さく拍手を送ってくれる。豆腐が壊れやすいことを解っているからこその賞賛だった。
「で、これが焼けたら味付け?」
「うん、そうなんだけど、味付けは別のフライパンでやるつもり」
「何で?」
「だって、この後もいっぱい焼かないとダメだし。その度にフライパン洗うの、面倒くさくない?」
「理解した」
悠利の物凄く現実的な言葉に、カミールは大きく頷いた。もっともだと思ったのだ。何しろ人数分の豆腐ステーキを焼かなければいけないのだ。その度にいちいちフライパンを洗っていたら、作業効率がとても悪い。
第一、熱いフライパンをすぐに洗うことは出来ない。触ると火傷するし、塗装の種類によっては熱いところへ水をかけたら傷んでしまうのだ。
それならば、二つのフライパンを使い分けた方がどう考えても賢い。
そうこうしているうちに、ひっくり返した豆腐が焼き上がった。なので、一度火を止めて置いておく。その間に、調味料の準備だ。
使うのは、酒、みりん、砂糖、醤油。砂糖と醤油が味の基本なので、そこは好みで調整すれば良いだろう。今日は少し甘めに仕上げるつもりの悠利だ。なお、砂糖の代わりに蜂蜜を使っても美味しくなります。
「調味料を全部フライパンに入れたら、しっかり混ぜて煮詰めるよ」
「どれぐらい?」
「目安は分量が半分になるくらいかな。ちょっととろみが出てくる感じ」
「とろみが出てくる感じ、と」
フライパンに調味料を全て入れ、焦げ付かないように火加減に気を付けて煮詰めていく。しばらくすると、水分が減ってくる。分量が半分になったところで、悠利は一度火を止めた。
味見用の木のスプーンを二本取り出すと、悠利は一本をカミールに差し出す。何をするものかをちゃんと解っているカミールは、悠利に続いてフライパンの中身へとスプーンを突っ込んだ。煮詰まっているので、スプーンで掬うとどろっとした感じになった。
ふーふーと息を吹きかけて冷ましてから、二人は煮詰めたタレを口に運ぶ。味見は大事な仕事なのだ。このタレの味付けで豆腐ステーキの味が決まるのだから、責任重大である。
ぱくりとスプーンを銜え、二人は顔を見合わせる。砂糖と醤油の絶妙なハーモニーだ。やや甘めに仕上げたが、それが逆に醤油の味をまろやかに包んでくれている。
端的に言うと、美味しい。
「甘いけど、醤油の味もするし、これ絶対にライスが美味いやつ」
「甘辛系はライスとかパンが進むよねぇ」
「で、これとさっき焼いた豆腐を合わせる、と」
「絡めます」
「絶対美味いやつじゃん」
悠利が親指をぐっと立てると、カミールが食い気味で答えた。そう、どう考えても美味しいやつだった。豆腐のシンプルな味に、この甘辛の美味しいタレが絡むと思ったら、美味しい以外の想像が出来なかったのだ。
豆腐はそれ自体は淡泊な味をしている。勿論、大豆の風味がぎゅぎゅっと濃縮されているものもあるし、シンプルだからこそ風味豊かな味わいも魅力的だ。
しかし、それはそれとして、薄味であることは事実だ。他のどんな味付けとも喧嘩をしないというのは、豆腐の素晴らしさだ。何しろ、豆腐を使った料理の味付けは千差万別なのだから。麻婆豆腐と餡かけ湯豆腐の間には決して越えられない壁がありそうなのに、どちらの味付けでも美味しい豆腐は凄いのだ。
焼き上がっている豆腐を、悠利はそろりとタレの中へと滑らせた。火を付けて、ことことと煮詰めながら、大きなスプーンでタレを豆腐の上へとかける。何度もひっくり返すと壊してしまいそうなので、上からタレをかけることにしたのだ。
しばらくそうしてタレを絡め、ほどよく豆腐に色が付いた頃合いで火を止める。皿に取り出したタレがたっぷり絡んだ豆腐ステーキの完成だ。
「それじゃ、味見しようか」
「おー!」
出来たてほかほかの料理を堪能できるのは、料理当番の特権である。誰より先に美味しいものが食べられるのだ。
なお、味見はとても重要な任務なので、これは決して単なる食い意地だけで行われているわけではない。味付けを確認しなければならないのだ。ましてや、ここは大所帯だ。味見も大事な仕事です。
ナイフとフォークで食べやすい大きさに豆腐ステーキを切り分けると、悠利はその一つをフォークで突き刺した。なお、隣でフォークを持ってスタンバイしていたカミールも同じくだ。
まだほかほかと熱い豆腐ステーキ。火傷をしないように注意しながら、二人はぱくりと口へと運ぶ。最初に感じるのは熱と、甘辛いタレの風味だ。どう考えても食事が進むとしか思えない甘辛のタレと、その風味を和らげて口の中に広がる豆腐の味わいが実に良い。
熱い。確かに熱いが、つるんとした豆腐の切断面と、まぶした小麦粉がカリッと焼けた表面。更にその表面はタレが絡んで少ししんなりしており、対比が良い塩梅だった。どちらか片方だけでは物足りないだろうが、両方の食感が口の中を楽しませてくれる。
「うっま……。熱いけどうっまい」
「久しぶりの豆腐ステーキ美味しいー」
「これ、本当に豆腐なんだよな?」
「作ってるところ見てたじゃない。豆腐だよ」
何言ってるの?と悠利が首を傾げる。豆腐ステーキが美味しかったのはよく解ったが、カミールが何を言っているのかはちっとも解らない悠利だった。
そんな悠利をそっちのけで、カミールは叫んだ。万感を込めて。
「これがあの味のなかった豆腐かよ!」
「味がなかったって……」
あまりの言い草に、思わず遠い目をする悠利。
いや、確かにカミールが言いたいことも解る。解るのだ。豆腐はシンプルな味わいの食品だし、食べ慣れていないカミールには味が薄いとか味がないと思われても仕方ない。仕方ないが、何もそこまで力説しなくても、と思ってしまうのだった。
とはいえ、カミールの反応から問題ないと理解した悠利は、皿の上の豆腐ステーキにフォークを伸ばす。カミールと二人で半分こなので、もう少し残っているのだ。豆腐ステーキは豆腐なので、味見で多少食べたとしても満腹にはならないのだ。
「それじゃ、これを食べたら皆の分を焼こうね」
「おう」
味見用の豆腐ステーキを食べながら、カミールは素直に頷いた。素の顔は、とても幸せそうに緩んでいる。よほど気に入ったらしい。
そんなこんなで、夕飯の時間。
各自、自分の前に並べられた本日のメインディッシュが何か解らずに、首を傾げていた。そんな仲間達に向けて、悠利はにこにこ笑顔で告げた。
「今日のメインディッシュは豆腐ステーキです。焼いた豆腐に甘辛のタレを絡めてあります」
豆腐、という単語に皆が驚いているが、悠利は気にしない。そういう反応は既に一度カミールで見ている。なので、悠利は何も気にせず、説明を続行するのだった。
「お箸でも食べられると思いますが、切り分ける方が良い人はナイフとフォークを使ってくださいね。豆腐なので壊れやすいので気を付けてください。また、お代わりも幾つかあるので、欲しい人は僕かカミールに声をかけてくださいね」
にこにこにこと笑いながら告げられる言葉に、皆はとりあえず頷くだけだった。目の前の謎の料理を見ている。豆腐とステーキが結びつかないのだ。けれど、ふわりと香るのは食欲をそそる匂いだった。
なので、皆はそっと豆腐ステーキに手を伸ばす。悠利の料理が不味いわけがないという信頼も手伝って、食事は開始された。
そして――。
「あ、これ美味しい!美味しいね、ユーリ!」
猫舌対策として、他の人より先に調理を終えていた分の豆腐ステーキを与えられたレレイが、にぱっと笑みを浮かべて声をかける。悠利の返事を待ってはいなかったのか、そのままばくばくと美味しそうに食べていく。どうやらお口に合ったらしい。
レレイの食べっぷりに触発されたのか、皆の箸も進む。確かに美味しいという声があちこちから聞こえて、悠利は満足そうに笑った。皆が喜んでくれるのが彼はとても嬉しいのだ。
そんな中、悠利は傍らに座る人魚の少女に声をかけた。彼女は少しばかり食が細いので、一応確認をしておきたかったのだ。
「イレイス、食べられそう?他の人より少なめにしてるんだけど」
「えぇ、大丈夫ですわ、ユーリ。柔らかくて、甘くて、とても美味しいですわね」
「それなら良かった」
他の人より少々控えめに盛りつけられた豆腐ステーキを、イレイシアは嬉しそうに微笑みながら食べている。ナイフとフォークで切り分けて、上品に口元に運ぶ姿は眼福だ。美少女が美味しそうにご飯を食べる姿は、プライスレスである。
幸せそうなイレイシア。彼女は食が細いので、これが肉のステーキだったらこんな風に食べることはなかっただろう。胃もたれを起こして半分ぐらいでギブアップしているはずだ。けれど、どれだけ濃い味付けにしても、豆腐は豆腐。決して重くないので食べやすいのだ。
甘辛とろりとしたタレの風味と、つるんとした豆腐の食感が絶妙のバランスだった。タレを含んだ表面部分もカリカリがしっとりに変化していて、食感が楽しい。ご飯が進むのに胃もたれしない、実に素晴らしい料理だった。
「ユーリ、皆の顔を見ていないで自分も食べないとダメですよ」
「え?あ、はい」
「本当に、貴方は皆が食べる姿を見るのも好きですね」
「美味しそうに食べてくれると、嬉しくて」
えへへと照れたように笑って、悠利は自分の食事に戻る。ついつい、皆が美味しい美味しいと言いながら食べているのを見てしまっていたのだ。そんな悠利の性質を理解しているので、ティファーナのツッコミも声音は優しかった。
その彼女も、美味しいですねと微笑んで豆腐ステーキを食べている。冒険者は身体が資本。出された食事はきっちり食べるというのは鉄則だが、それでもティファーナは女性だ。胃袋はそこまで頑丈ではない。そんな彼女なので、美味しいのに胃もたれしない豆腐ステーキはお気に召したらしい。
なお、豆腐は大豆食品なので、栄養価は問題ない。植物性タンパク質の王様、畑のお肉とまで呼ばれる大豆の栄養たっぷりな食品だ。肉や魚の代わりを立派に務めてくれるだろう。
勿論、それだけでは物足りないと言われることを考慮して、野菜炒めにウインナーを入れてみたり、具だくさん野菜スープにハムを入れたりしている。その辺りは抜かりない悠利だ。その結果、食べ盛りの少年達がから「肉が食べたい!」という声は出ていない。
「それにしても、豆腐がこんな風に食べ応えのある料理になるとは思いませんでしたね」
「豆腐って、淡泊な味をしてるので割と色んな料理に使えるんです」
「あら、そうなんですね」
「はい。味噌汁の具材以外にも使い道はあるんですよ」
感心したようなティファーナに、悠利は胸を張って答えた。美味しいは無限に広がるので、その一端を伝えられたのはちょっと嬉しかったのだ。
「それに、豆腐はカロリーが少ないので、ダイエット食にも使われてるんですよね」
「……え?」
「栄養価は高いんですけど、肉に比べるとカロリーが低いので。味付け次第ではこんな風に立派におかずになるので、姉や母がダイエットによく使ってました」
のんびりと、何でもないことのように告げられた言葉に、ティファーナの動きが少し止まった。素晴らしいスタイルを維持しているお姉様だが、それは努力してのこと。美味しいとダイエットが結びつくならば、反応しないわけがなかった。
そんなことは考えず、悠利はのほほんと言葉を続けている。あまり食べないので特に太りもしないイレイシアは、慎ましく豆腐ステーキを食べることに集中していた。あちらこちらから、女性陣が耳をそばだてているのに気付いては、いたけれど。
「チーズをかけて温めたのとか、オリーブオイルと色んな塩でさっぱり食べるとか、色々やってたんですよねぇ。一時期、豆腐料理ばっかり並んでたこともあったなぁ」
懐かしいなぁと笑う悠利。彼は、趣味嗜好が女性に近しい部分のある少年だったが、女性の大半が抱えるダイエットへの欲求に関しては、今一つ鈍感だった。
何しろ悠利の考え方が「三食栄養バランス考えてきっちり食べて、適切な運動をするのが一番正しいダイエットじゃないかな?」というものだったので。リバウンドの心配もない、健康を害することもない、実に素晴らしい方法だ。出来るかどうかは別として。
「ユーリ」
「はい、何ですか、ティファーナさん」
「その、貴方のお姉様やお母様がダイエットのときに食べていらしたという料理、今度作ってくださいね」
「へ?」
「美味しくて健康に良い料理だなんて、興味がありますから」
にっこりと微笑むティファーナ。その顔はとても美しく、優しく微笑んでいる。けれど、何だか妙に圧を感じるなぁと思う悠利だった。
なので、返事をする声が少しばかり、引き気味になった。悠利は悪くない。
「えーっと、冷蔵庫の中身とかと相談しながら、頑張ります」
「はい。よろしくお願いしますね」
悠利の返答に納得したらしいティファーナは、とても素敵な微笑みを浮かべてくれるのだった。
なお、その会話を聞いていたアリーから食後に、「何でお前は自分から女共の欲望に火を付けるんだ」とツッコミを貰うのだった。今度から気を付けようと思う悠利だった。
ちなみに、豆腐ステーキは肉食メンバーにも好評で、また食べたいとリクエストを貰うのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます