誘拐犯は許しません
お弁当も食べてのんびりと過ごし、ダンジョンマスターと共に食材を採取しようと移動しているときだった。お目当ての葉物野菜ゾーンに到着したときに、エトルが慌てたように周囲を見回す。
「若様……?」
「エトルくん、どうかした?」
「いえあの、若様の姿……」
「……え?……本当だ!リディ、どこに隠れたの!?」
「若様、隠れていないで出てきてください!遊びに付き合っている暇はないんですよ!」
好奇心旺盛で悪戯好きな主を知っているエトル少年は、容赦がなかった。恐らく、里でいつもそんな風に過ごしているのだろう。声に実感がこもりすぎている。
けれど、そんな悠利とエトルを、マリアが制した。
「マリアさん……?」
「妙ねぇ。私、一応あの子のことは気にかけていたはずなのに、どうして姿を見失ったのかしらぁ?」
「マリア、ごめん。こっちもだ。ナージャの意識からも、一瞬あの子が消えてる」
「あら、貴方達も?……何事かしらねぇ」
アロールの申告に、マリアが目を細めた。一瞬の半分だけ、ぶわりと彼女から威圧めいたものが解き放たれる。けれどそれもすぐに形を潜め、いつものマリアの表情だけが残った。
そのとき、ルークスが悠利の足にすり寄った。しょんぼりとした風情の従魔に、悠利はきょとんとする。
「ルーちゃん、どうしたの?」
「キュウ……、キュイィ……」
「本当にどうしたの?誰もルーちゃんを怒ったりしてないよ?」
ぷるぷると震えるルークスは、明らかに意気消沈していた。まるで、自分が悪いのだと言いたげな態度だ。悠利が必死に宥めるが、ルークスのしょんぼりは治らない。
通訳を求めて悠利がアロールを見れば、頼れる魔物使いの十歳児はため息をつきながらルークスの心情を伝えてくれた。
「側にいたはずなのに見失った自分が悪いと思ってるんだよ」
「そんなことないよ!ルーちゃんだけに責任なんてないんだから!」
「その通りだよ、ルークス。……第一、全員が見失うなんてそんなの、」
「あり得ないな」
言い切ったのはリヒトだった。普段のリヒトからは想像も出来ないほどに低い声に、悠利は思わずぴたりと動きを止めた。悠利の腕の中で慰められていたルークスも同じくだ。
姿の見えない若様を呼んでいるエトルとマギサの耳には聞こえなかったのか、彼らはリディを呼び続けている。その声をBGMに、リヒトは静かに口を開いた。
「誰か一人が一瞬目を離したならば、まだ解る。だが、ここまで全員があの子を見失うのは異常事態だ」
「同感。そもそも、ナージャにはずっとあの子を見てるように言ってたんだ。目を離すことすらない」
「私も、あの子の気配は意識にずっと入れていたわ。……それが突然かき消えるだなんて、どういうことかしらね~?」
リヒトの言い分に、アロールもマリアも同意した。悠利はリディ一人に意識を向けていたわけではないし、ルークスも同じくだ。けれど、いなくなる直前まで、リディはマギサと話をしていたし、悠利はその声を聞いていた。それが突然途切れたから、こうして皆で探しているのだ。
エトルはまだ、若様がいつもの好奇心で突っ走ってどこかへ行ったと思っているらしい。固まって相談をしている悠利達の姿に、不思議そうに首を傾げていた。マギサも同じくだ。
そんな無邪気さすら漂う子供達と裏腹に、悠利達の表情は浮かない。
「姿隠しとか、認識阻害とか、その手の魔道具を使われたかしら~?」
「使う理由は」
「単純に考えて、あの子狙いじゃないかな」
「身分がバレたか?」
「というより、見栄えが良いからだと思う。ワーキャットは地域によっては魔物扱いだし、そういう意味で愛玩用に売られることもあるって、聞いたことがある」
胸くそ悪い話だけど、と付け加えることを忘れないアロールだった。その表情は永久凍土みたいになっている。生真面目な彼女には、ワーキャットを魔物扱いするのも、彼らの意志を無視して売買するのも、耐え難いのだろう。
訓練生三人が真面目に話をしているのを聞きながら、悠利はむぅと唸った。状況から判断して、リディは迷子になったのでも好奇心で突っ走ったのでもなく、誘拐された可能性が高い。大事な友達が誘拐されたとあっては、心がちっとも落ち着かない悠利だ。
そこでようやく、リディの身に起こった異変が大変なことに気付いたエトルが、固まっていた。自分が側にいながら若様が危ない目にあったという衝撃が凄いのだろう。おろおろしている。
対して、マギサはぼんやりとしていた。ふよふよと空中に浮かびながら、小首を傾げている。その姿は何も考えていないようにも見えた。
「誰カガ、リディヲ捕マエタノ?」
「「……ッ!」」
こてんと小首を傾げる仕草はいつもと同じ。小さく開いた唇も、フードと前髪で隠れて目元が見えないのも、いつもと同じ。口調もいつも通りだ。
けれど、その声だけが、違った。声音は幼い子供のそれだというのに、底冷えする奇妙な威圧が吹き荒れる。ネェ?と重ねて問い掛ける声が、そこから発される空気が、悠利達の喉から声を奪う。
それは紛れもなく、人知及ばぬ異形の姿だった。人の領域とは異なる何かが存在していると感じさせる、意味も解らない恐怖が全員の背筋を走り抜ける。これは、愛らしいだけの生き物ではないのだと知らしめるように。
しかし、その威圧はすぐに消えた。消えて、そして、不安に怯える子供のような声が呟く。
「リディ、探シテアゲナキャ……。キット、怖ガッテル……」
「マギサ……」
「僕、探ス……!」
ぎゅうっと両手を顔の前で組み合わせて、マギサは叫ぶ。大事なお友達が行方不明になって、きっと今頃怖い思いをしているだろうからと必死になっている。その姿は、悠利達が見慣れた、いつもの、幼い子供のようなあどけないダンジョンマスターのものだった。
一瞬だけ現れたマギサの異質さに、けれどそれこそが本質なのかもしれないと悠利達は思う。優しい気性をしているけれど、その根っこは彼らとは異なる生命体なのだと。
けれど、それは何もマギサだけではない。悠利に忠実なルークスも、アロールに過保護なナージャも、魔物である。異なる価値観と感性を持ちながら、それでも寄り添って生きている。
だから、マギサのあの変貌も、彼らは気にしないことにした。今、リディを必死に探している姿もまた、この幼い風貌のダンジョンマスターの真実だと理解して。
「姿隠しの魔道具とかって、連続使用出来ましたっけ?」
「物によるな。ユーリ、この間みたいに鑑定で解らないか?」
「近くにいないみたいなので……。見通せる範囲ならどうにか出来ると思うんですけど……」
壁ですしねぇ、と悠利は呟く。先日、海を鑑定したが、アレは一面視界に入るから成せたことだと思っている。ダンジョンの中には壁があるので、壁の向こう側までは流石に解らない。
その悠利の言葉を聞いて、マギサがふわりと悠利の肩の辺りに浮かび上がった。じっと有利を見ている。
「マギサ?どうかしたの?」
「見エタラ、リディヲ探セルノ?」
「え?あー、多分?鑑定で、リディを探せば、出来るような気が、するんだけど」
やったことないから解らないけどと悠利が答えれば、マギサは小さな手を悠利の額に触れさせた。そして、告げる。
「ジャア、僕ノ目ヲ、貸シテアゲル」
「……――ッ!」
何を言われたのか解らない悠利だったが、次の瞬間驚愕した。視界に、ぶわりと広がるのはこのダンジョン全域のリアルタイム映像だった。どういう原理かは解らないが、今、悠利はマギサと視界を共有していた。
ダンジョンマスターとは、ダンジョンを統べる者。どこにいてもダンジョンの全てを把握しているとも言える。だから、マギサにはダンジョンの全ての場所が見えている。
そして、その光景を悠利に見せることで、リディを探してと頼んでいるのだ。友人の協力をありがたく思いながら、悠利は【神の瞳】を発動させる。鑑定系最強のチート
(お願い、リディの居場所を、……怪しい場所を、教えて……!)
身体の横で握った拳に力が入る。皆が見守る中、悠利はぶわりと広がるダンジョン全体の光景を順番に【神の瞳】で鑑定していく。
……本来ならば、唐突な情報量に混乱するはずだ。けれど、マギサは悠利の頭が処理できる程度に視界に映る情報を調整してくれていた。だから悠利は、何も気にせずに【神の瞳】を発動させることが出来るのだ。
マギサの視界に映る中に、リディの姿はない。けれど、姿隠しの魔道具などを使われていた場合、マギサにはそれらは見えない。以前、ナコト草を密猟(?)していた男の姿を、マギサが認識できていなかったように、今回もそういうことなのではないかと悠利は思う。
そうでなければ、ダンジョンの主たるダンジョンマスターのマギサに、リディを見つけられないわけがないのだ。
そして、悠利の視界で、赤い光が明滅した。
「……
「「……!」」
悠利の言葉に、訓練生三人と従魔二匹が反応した。エトルとマギサは解っていないが、他の面々にはそれが何を意味するのかを解っている。悠利が口にする
つまり、この場合、リディを拐かした相手である可能性が高い。
「場所は!」
アロールが叫び、ナージャを足下へ下ろす。答えを聞いたら、頼れる従魔を派遣しようとしているのだろう。それが解ったから、悠利は簡潔に答えた。
「セーフティーゾーンの手前の通路!ここから向かって手前側になるところだよ!」
「解った。ナージャ!」
「シャー!」
アロールの言葉よりも早く、ナージャが動く。その傍らを、弾かれたように走り出す影があった。マリアだ。ダンピールの身体能力を生かして、ナージャと共に走っていく。
悠利達もその後を追おうとして、ガタガタと震えているエトルに気付いた。リヒトはエトルに歩み寄り、小さな身体を抱き上げる。
「まだ、間に合う。だから、そんな顔をするな」
「……っ、は、はい……」
「君が悪いわけじゃない」
ぽすんとエトルの頭を撫でて、リヒトは子猫を片腕で抱いたまま走り出す。その背中を見て、そういうところが子供に好かれる所以じゃないかなと思う悠利とアロールだった。
アロールがルークスと一緒に走り出し、悠利もそれに続こうとして、そこで、マギサが動かないことに気付いた。
「マギサ?」
「……ウン、大丈夫。セーフティーゾーンニ入レナイヨウニシタシ、オ姉サン達ガ着クマデハ、道モ塞イデオクカラ」
「……えーっと、マギサ?」
「コレデ、逃ゲラレナイヨ!」
褒めて、と言いたげな態度のマギサに、悠利はうわーと思った。確かに、道を作れるのならば道を閉ざすことも出来る。ダンジョンの構造はダンジョンマスターのさじ加減一つ。つまりは、マギサの自由になるということだ。
悠利の言葉からリディをさらった奴らがどの辺りにいるかの目星を付けて、逃げられないように封鎖したらしい。ナージャとマリアが先行したのを理解しているので、彼らが近付いたら開けるつもりなのだろう。至れり尽くせりだ。
とりあえず、頑張ってくれたのは事実なので、悠利はマギサの頭を撫でた。
「凄いよ、マギサ。それじゃ、リディを迎えに行こうか」
「ウン」
悠利とマギサは先行した皆を追いかける。早くリディを迎えに行ってあげないと、と。大事な友達を助けようと、二人は意気投合していた。
そして到着したそこで、悠利は何とも言えない光景を見た。
「……マリアさん、それ、窒息しそうに見えるんですけど」
「あらぁ、大丈夫よ~。この程度で窒息はしないわぁ」
うふふと楽しそうに笑ったマリアが、両手に一人ずつ男を持ち上げていた。首に手をかけているので、息苦しいのだろう男達が必死にマリアの手を剥がそうとしているが、彼女は何も気にしていない。
無事に救出されたらしいリディは、エトルと抱き合って無事を喜んでいる。にゃーにゃーと猫語のみで叫んでいる若様は、よほど怖かったのだろう。それを抱き締めるエトルも声が震えていた。
なお、二人の傍らにはルークスが控えている。護衛よろしく目をキリッとさせているので、うっかり部外者が近付こうものなら、ぶっ飛ばしにかかるだろう。可愛い見た目を裏切って、ルークスはハイスペックな魔物だ。
そこで悠利は、ナージャに顔に巻きつかれてジタバタしている女と、リヒトに組み伏せられて呻いている男に気付いた。どっちも容赦がなかった。
「……えーっと、アロール、説明して貰っても良い?」
「見ての通りだけど」
「いや、それはそうなんだけど」
「こちら、余罪が山ほどありそうな、見目麗しい子供をかっ攫うことを生業にしている商人の皆さんです」
「それ商人じゃないよ!?」
淡々とした口調で告げられて、悠利は思わず叫んだ。アロールは平然としている。だって自分で商人だって言ったから、と悪びれもしない。相手がそう名乗ったからといって、状況で考えて商人でないことは解っているだろうに。
「リディの見た目が良かったから、かっ攫うために追いかけてきたらしいよ。ご丁寧に、姿隠しの魔道具と認識阻害の魔道具で、誰の目にもつかないように」
「……それを、どうやって発見したの?」
「ユーリ、知ってるか。姿隠しや認識阻害の魔道具は、見えないだけで触れるんだ」
「……う、うん?」
悠利の疑問にも、アロールはきちんと答える。ただし、答えがあまりにも端的すぎてよく解らない。首を傾げる悠利に、アロールはきっぱりと言い切った。
「触れるなら、この空間にいると解っているなら、やることは簡単だろう?」
幼い風貌の十歳児が浮かべるにしては、どうにも物騒過ぎる表情だった。にたりと笑うアロールの顔は、とてもではないが子供のそれではない。彼女も十分に怒りを抱えていたのだと解る顔だった。
そして、その説明で、悠利は何となく何があったのかを察した。つまり、片っ端から攻撃したのだろう。そして、その攻撃で魔道具が壊れたか外れたかして、姿が見えたのだ。
つまり、見えなくてもここに確実にいるという状況を作り上げた、マギサのファインプレーである。場所が狭い通路だったのも幸いだった。逃げようにも、複数人で殴り込みをかけられたら逃げられなかったのだろう。
「可愛い可愛い子猫さんを拐かそうだなんて~、本当に困った方々ですわね~」
歌うように楽しげに、マリアは首を掴んだ男達の身体を揺さぶっている。聞いていますか~?と暢気に問いかけているが、多分聞こえていない。息苦しさから逃れようと必死になっているので。
あんな可愛い子を狙うだなんて、許せないわぁと微笑みながら、マリアはちっとも笑っていなかった。顔は確かに微笑みなのに、気配も瞳も微塵も笑っていない。とてもお怒りだった。
ただし、戦闘本能剥き出しというわけでもないので、相手を再起不能にまで叩き潰すことはないだろう。そういう意味ではまだ冷静なので、安心した悠利だ。流石に、目の前で惨劇を繰り広げられるのは見たくないので。
「子供ばっかり狙うって、大人として恥ずかしくないの?まぁ、誰が相手だろうと、売買するために拐かすのはダメだけどさ」
「シャー」
ナージャに顔を塞がれた女がジタバタ暴れながら呼吸を取り戻そうと必死になっているのを、アロールはすぐ近くにしゃがんで見ている。淡々と話しかけつつ、途中でナージャに合図を送る。ナージャはそれに素直に従っている。
その合図で、一瞬だけ女の鼻が解放される。酸素を必死に取り込んで逃れようとする女だが、次の瞬間再び鼻を塞がれてもごもご言っている。……ようは、まだ気絶させるなというお達しだった。アロールはお怒りだった。
「あまり暴れないでくれると嬉しいんだがなぁ。俺はマリアほど力がないから、これ以上暴れられると手加減無しに絞めないといけなくなるんで」
のんびりとした口調で告げるリヒトだが、言っている内容は割とえげつなかった。ぎりぎりと腕を捻り上げた状態で組み伏せられている男は、自由になる手で必死に地面を叩いている。しかし、リヒトは聞く耳を持たない。
大人しくしてくれないなら落とした方がマシかなぁ、などと物騒なことを呟いている。とても物騒だった。
普段は優しくて繊細なお兄さんとしての面しか見えていないが、何だかんだで彼も修羅場を潜り抜けてきた冒険者なのだ。リヒトさんも怒らせちゃダメなんだなと思った悠利だった。
とりあえず、誘拐犯は仲間達に任せておけば良いと理解した悠利は、リディの元へと足を向けた。エトルと抱き合っているリディの身体を、背後からマギサがぎゅーっと抱き締めていた。大丈夫だよと言うように。
そんな三人をまとめてぎゅーっと抱き締めて、悠利はリディの頭を優しく撫でた。
「リディ、怖かったね。遅くなってごめんね」
「……ぅにゃ、にゃう、にゃぁ……!」
「うーん、ごめん。猫語はちょっと僕、解らないなぁ」
必死に何かを訴えるリディに、悠利は困ったように笑った。落ち着いてからで良いよと笑う悠利に、リディはにゃうと小さく呟いた。
そんなリディに代わり、いくらか冷静さを取り戻したらしいエトルが通訳をしてくれた。
「怖かったけど、皆さんが助けに来てくれると信じていたそうです」
「……そっか」
「本当に、ありがとうございます。皆さんのおかげで、若様が無事でした」
本当に良かったと、エトルは震える声で呟いた。色々と抱えているようなエトルの頭を、悠利は撫でた。必死に大人になろうと頑張っている彼を、褒めるように。
「マギサがね、一生懸命リディを探してくれたんだよ」
「見ツケタノハ、ユーリダヨ」
「でも、マギサが協力してくれなかったら見つけられなかったし、ここに閉じ込めたのはマギサだから、マギサのおかげだよ」
悠利の言葉に、マギサは首を傾げた。そして、次の瞬間にほわんと笑った。大好きなお友達を自分が助けることが出来て、大好きなお友達に褒められて、素直に喜んでいる姿だった。
リディはまだ猫語しか喋れないでいるので、言葉の代わりにぎゅうっとマギサの手を握った。ありがとうを、伝えるために。
自分の小さな手を握るリディの小さな肉球のある手を、マギサは見つめている。相変わらず目元は見えないが、顔がそちらに向いているので、見ているのだろう。やがて、嬉しそうにぎゅっとリディの手を握り返すのだった。
「本当に、リディが無事で良かった」
万感を込めて呟いて、悠利は可愛い可愛い友達の身体を抱き締めるのだった。不埒な輩に、奪われることがなくて良かったと思いながら。
その後、リディを狙った誘拐犯達は衛兵に引き渡し、余罪もどっさり出てきたのでそのままお縄となった。
ちなみに、悠利は嬉々として彼らを鑑定し、備考欄に出てくる余罪の情報を伝えまくった。大事なお友達を怖い目にあわせた相手に、遠慮は無用なので。自分に出来ることできっちり報復をする悠利なのでした。
なお、一連の騒動を聞いたクレストとフィーアは皆に感謝し、若様の外出時にはより一層気を配ることを決意していた。そんな真面目な大人の反応に、堅苦しくなりそうだと察したリディは、帰る間際まで面倒くさそうな顔をしていた。安全は大事なので諦めるように悠利達に説得されて、やっと渋々大人の言いつけに従うことを決める程度には、若様は自由が恋しいらしい。
それでも、新しい友達の存在はリディにとってとてもとても大切なものになったらしく、また遊びに来ると元気に告げるのだった。そのときは、またお弁当を持ってマギサに会いに行こうと約束する悠利だった。
賑やかに来訪し、賑やかに去っていった若様は、お友達に貰ったお土産である大量の野菜や果物に大喜びしていたのでした。勿論、悠利もお土産は貰いました。
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