14#翼を持った風船たち

 その日は日が暮れるまで、干潟はパーティーだ。


 オオタカのピムは、オレンジの風船を頬をパンパンにして一生懸命に大きく膨らます。


 そのオオタカのピムの膨らませ方を見ながら、子カワウのレセが青い風船をピムに負けない位、更に大きく膨らます。

 

 それを見たカワウのジーダは嬉しくなって、


 「グンカンドリの真似~っ!!」


 と叫んで、赤い風船を胸に翼で抑えながら膨らます。


 アオサギのビッダとブルームは、お互い対抗心を燃やして緑色の風船を喉と頬をめいいっぱい孕ませて膨らます。


 「お前ら!気合い入れて膨らませぇー!」


 「うぃーっす!」


 キンクロハジロのガト、リン、グーの3羽は、豪快に思い切り黒い風船を膨らます。


 オナガガモのナフとスフ夫婦が、同じピンク色の風船を膨らましあいっこをする。


 オシドリの夫妻が、オナガカモ夫妻に対抗心を燃やし、


 「もっと大きく膨らますのよ!ジェント!!」


 「はいはい!解りました!!バーグちゃん!」


 と、夫のジェントは妻のバーグの『尻』に敷かれながら一緒にオレンジ色の風船を一緒に膨らます。


 「ひー!割れるの怖いい!」


 「何か言ったぁ?」「何でも無いですっ!」


 カルガモのガーコ母さんは、子供たちに励まされて黄色い風船を膨らます。


 ハシブトガラスのジョイが、紫の風船を膨らます。


 パァン!


 シラサギのロイが、白い風船を膨らましすぎて割れた音にビックリしたオオバンのラーダが膨らましていた水色の風船を嘴から離してぷしゅ~っとなり、怒るラーダにロイは平謝りする。


 イソシギのラスとオオヨシキリのロークとコアジサシのティンガが、


 「ねえ、窮屈なんだけど・・・」


 と、一緒に青い風船を膨らます。


 「だれも手伝わんの?」


 カワセミの長老は、若い頃より肺活量がパワー落ちしたことを嘆きながら、歳に似合わないパワフルに黄色い風船を膨らますが、なかなか膨らまず・・・


 そこにスズメのチュンタが、


 「カワセミのじいさ~ん!」


 「じいさ~んじゃないっ!」


 「じゃあ、カワセミのおじさん」


 「なあ~に~?」


「一緒に風船膨らましを手伝ってもいい?」


 「ありがとー!」


 と、老体に鞭打つカワセミの長老を労って一緒に風船を膨らます。


 そして、ヒヨドリのビアは、


 「また一緒に膨らますの~?」


 と嫌がるムクドリのムックを、


 「僕らの『友情の結晶』の風船を膨らまそうぜ!」


 と、無理やり嘴を一緒の吹き口に押し込んだ。


 ヒヨドリのビアはニヤニヤしながら、赤い風船を膨らますが、ヤケになっているムックは


 「ビアより息を入れてやる!」


 とぷうっと膨れっ面をしてパワフルにぶう~~~っと音がする程息を吹き込んでいた。


 今回の作戦に参加した干潟以外の有志の野鳥達・・・


 スズメやムクドリ、ヒヨドリ、キジバト、オナガ、メジロ、シジュウカラ、キビタキ、ツグミ、モズ、シメ、カラワヒワ、ハクセキレイ・・・セキセイインコ、九官鳥、文鳥、そしてドバトのポポ姉さんとその部下は、一緒に翼を取り合ってダンスをした。


 ふと、「ちょっと待っててね~っ!ぽっぽぉ!」


 と、ドバトのポポ姉さんは、カワセミの長老とスズメのチュンタの膨らましている、黄色い風船のところに行き、


 「ねぇ~!あたいも手伝おうか!カワセミ爺さん余り無茶しないでね~っぽっぽぉ!」


 と、カワセミの長老をぽーん!と押しのけて、


 「スズメのチュンタちゃん!また一緒にゴム風船をふくらまそう!あたいはあなたの健気なとこが好きよ!ぽっぽぉ!」


 と、チュンタを翼で抱いて嘴を一緒に吹き口に入れた。


 ポポ姉さんは美貌が崩れる位に頬をパンパンにして喜びながら、チュンタも頬をめいいっぱいに張らまして、二羽の息を黄色い風船にぷぅ~っと入れていた。


 押しのけてられたカワセミの長老は


 「けしからん!」


 と、鋭く尖った嘴を二羽の黄色い風船の前に、耳を塞いでそばだてた。




 干潟の野鳥達の歓喜の舞い(?)は、まるで翼の生えた風船のようだった。


 その光景を目の当たりにした干潟埋め立てのために本当に視察に来た人には奇妙で脅威に見え、埋め立て計画が取りやめになったらしい・・・

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