11#1羽のカワウ

 この騒ぎに加わらなかった鳥がいた。


 その名はレセ。その鳥は心を閉ざしていた。




 それはあの日・・・そのカワウのレセはいつものとおりにお気に入りの“カワウの巣の木”に座って日差しをいっぱい浴びて羽を乾かしていた。


 その安らぎもつかの間・・・その後、そこから飛び立っていつもの巣に妙なものが・・・


 「風船?」


 その風船は、中に水が入っているらしくぶよんぶよんとしており、白濁していた。


 「邪魔ねえ!突っつき割って退かしちゃお!えいっ!」


 パチン!!


 風船が割れ、中からドライアイスが出てきた。


 「嫌ああああ痛い!やけどする!!」


 レセは、思わず叫んだ。


 「ぎゃっ!翼が!」


 思わず片側の翼にドライアイスが付着したのだ!


 「嫌だああああ!!」


 レセは、必死に翼に付着したドライアイスを振り落とした。




 レセは、周りを見渡した。




 レセは血の気が引いた。




 「ぎゃああああああああああああ!!」


 「嫌あああああああああああああ!!」




 周りの仲間のカワウ達も次々とその罠の餌食になったのだ!




 脚ひれが焼けただれ、羽根をやられ、中には命を落とすものもいた。




 レセと共にいっちょまえのカワウになろう!と一緒に頑張ってきた、ボーイフレンドのカワウも、ドライアイスまみれになって死んでいった。




 「なんでこうなるのおおおおおおおお!」


 レセは、声にならない程に泣き叫んだ。


 このドライアイス入りの風船の正体は・・・


 人間がカワウのフン公害のためにやっつけるための罠だったのである・・・




 幸い、レセの父のジーダは違う沼地で屯していたので、ドライアイス入り風船の洗礼は免れた。




 しかし・・・


 「ママああああ!!死んじゃ嫌ああああ!!」


 身体中をドライアイスの火傷を覆ったレセの母は、レセの傍らで息を引き取った。




 その後、あの地獄絵図がトラウマになっていた。


 しかもその物体がこの干潟にも現れたのがショックだった・・・




 その上空に泣きながら飛んでいく一羽のオオタカの姿をそのカワウのレセは見た。

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