9#みんなで風船を膨らませよう!

 空き地を後にした野鳥達の一群は、一斉に危機迫る干潟へと飛び立った。


 ヒヨドリのビアやカラスのジョイ達が街でかき集めたまだ膨らましていないゴム風船は、ドバトのポポ姉さんの計らいで、ポポ姉さんとドバトの群れの下っ端に分担して運んだ貰った。


 「さあ、干潟に着いた!でももう夕暮れ。干潟埋め立ての視察がくるまで後がない!急いで集めた風船を膨らまそう!」

 

 野鳥の群れを先導していたカワウのジーダは、みんなに言い渡した。


 いきなり干潟に物凄い野鳥の集団がやって来て「何なんだ!」と干潟の野鳥達も集まってきた。


 「こんな夕暮れでもうすぐ寝る時間なのに、何やろうとするんだ?」


 「今日は餌取るのに疲れたからやるなら明日やりゃいいのに。」


 「でも何だか面白そう!」


 野鳥達は今から始まる“作戦”に野次馬になっていた。


 ハシブトガラスのジョイも、オオタカのピムも、シラサギのロイも風船に息を入れて膨らます。


 ヒヨドリのビアの方は、ムクドリのムックに不敵な笑みを浮かべながら、


 「さあ、僕達は肺活量が少ないから一緒に膨らまそうよ!」と頼んだ。


 「げえっ!ガビーン!やっぱりこうなると思った・・・!」


 ヒヨドリのビアは、躊躇するムクドリのムックを翼で抱き抱えて、


 「いっせーのせ!で膨らまそう!はい、いっせーのせ!」


 と、お互いの嘴をゴム風船の吹き口を入れて、力いっぱい二羽分の息を吹き込んだ。


 「おら~っ!一気にゴム風船に息を吹き込め~っ!!お腹に息を吸い込んで~っせ~のっ!ふーっ!ぽっぽぉ!」


 と部下のドバトに激を飛ばすのが姉さんドバトのポポだ。


 「ポポ姉さん、あなたは・・・何でゴム風船を・・・?」


 部下のドバトがポポ姉さんに突っ込みを申したが、


 「つべこべ言わないで早く膨らますのっ!!ぽっぽぉ!」と言い放った。


 そこに、ゴム風船を一緒膨らます仲間がいなくてウロウロするスズメのチュンタがやってきた。


 「あのぉ~・・・そのぉ~・・・ドバトのオバサ~ン!」


 「あたいはオバサンじゃないよっ!ぽっぽぉ!」


 ドバトの姉さんはぷうっと膨れた。


 「じゃあ、ドバトの可愛いねーちゃん!」


 「はーい、なぁに?ぽっぽぉ!」


 「すいません、僕と・・・一緒に・・・ゴム風船を・・・膨らませませんか?」


 スズメのチュンタはもじもじしながら、ドバトのポポ姉さんに頼んだ。


 「あいよ!スズメのチュンタちゃんとやら!こっちおいで!ぽっぽぉ!」とドバトのポポ姉さんは気まえよく言って、隣に着かせて、


 「じゃあ、せーので膨らますよっ!せーの!」


 と、ニ羽は息を思いきり吸い込み、スズメのチュンタがもってたゴム風船に二羽の息を吹き込んだ。


 スズメの体高がドバトと合わないので、ドバトのポポ姉さんは屈んでスズメのチュンタのパワフルに吹き込む息に負けじと、ポポ姉さんの自慢の美貌も崩れる位に頬をめいいっぱい張らませてゴム風船に思いっきり息を吹き込んだ。


 ヒヨドリのビア達やドバトのポポ姉さん達と共に一緒にやってきた、野鳥の集団も、分けて貰ったゴム風船や持参したゴム風船をひとかたまりになって、一生懸命膨らませた。


 中にはシメやシジュウカラ、ツグミ、ヤマガラ、モズ、キジバト等が、自分の嘴のサイズにあった水風船サイズのゴム風船を一羽でぷぅ~っ!と膨らませたり、細長いマジック風船をひゅ~っと膨らますムクドリもいた。


 それを見たムクドリのムックは目を輝かせて、


 「あっ!僕こっち!こっちがいい!」とせがんだが、ヒヨドリのビアに


 「君は僕と普通の風船を一緒に膨らますのっ!」と言われてしゅんとなった。


 でも、問題が発生した。


 鳥の中では脚や嘴が不器用で吹き口を結べないものもいたのだ。


 「あ、止め具が袋に一緒にはいってる!」


 結べない鳥は、脚や嘴で止め具でパチッとセットした。


 風船を持参した野鳥達の中には・・・各自足元の石を栓代わりにして、ゴム風船の吹き口に空気が漏れないように、差し込んだ者もいた。


 「やるなあー!こいつら!

 ん・・・やば!!もう間に合わない!干潟のみんな、風船を膨らますのを手伝ってくれ~!」


 「は~い!」


 「僕らも?」


 「いいよ~!」


 カワウのジーダは干潟の仲間に声をかけ、みんなやってきて一直線に並んだ。


 「まったまった!この干潟の鳥達は風船を見るのが始めてのもいるからちょっと教えるね。この風船の元になるこれに息を吹き込んでね・・・」


 「知ってるよ!風船の膨らまし方なんて!」


 「ギャフン!」


 ずっこけたシラサギのロイは「知ってたの?」と翼で頭を掻きながら、一羽づつ膨らましてない風船を手渡した。


 「さあみんなで息を吸い込んで~せーの!」


 ハシブトガラスのジョイが言った。


 干潟の野鳥達も一斉に、風船に嘴で息を入れて膨らませた。


 カワウの皆さんが大きく膨らましている。


 赤い風船を膨らますカワウまるでグンカンドリだ。


 特にお手本にと一緒に付き添っているカワウのジーダは、カワウのリーダー格だけあって、他のカワウよりパワフルに鼻の孔や黄色い頬をパンパンにして膨らましている。


 キンクロハジロの3羽は、気合いを入れて豪快に、


 オナガガモのナフとスフ夫婦は、恥らいながら、


 オシドリの夫婦は、オナガカモ夫妻と対抗心を燃やしながら、


 アオサギのビッダとブルームは、細長い嘴の横に吹き口をくわえ喉をパンパンにして、


 カルガモのガーコ母さんは子供たちに励まされながら、


 苦戦してるのがコアジサシやオオヨシキリのような肺活量の少ない鳥達だ。


 干潟の野鳥達もまた、風船の吹き口を結べない鳥は、風船を持参した助っ鳥達と同様、河原の手頃な小石を風船と吹き口に空気が漏れないように詰め込んだ。


 洋梨状直前までにパンパンにまでゴム風船を大きく膨らませたカワウのジーダは言った。


 「ところで・・・」

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