第十二話 もう一度、騎士に
「俺達が……騎士?」
クロスとクロウは、信じられないようだ。
当然であろう。
まさか、自分達が、騎士だったとは、思いもよらなかったはずだ。
ルチアだけでなく、自分達も、強い力をその身に宿していたとは。
「それは、本当なのですか?フォウ様」
「そうじゃ」
ルチアは、確認するようにフォウに問いかける。
フォウは、冷静にうなずいた。
本当に、二人は、騎士だったようだ。
ルチアは、改めて、確信した。
「クロスは、光の騎士、クロウは、闇の騎士だったんじゃ」
「でも、君達も、力を失っているみたいだよ」
「なぜ、わかる」
フォウとアレクシアは、説明する。
二人は、ルチア同様、力を失ってしまったようだ。
しかし、なぜ、二人は、その事を知っているのだろうか。
クロスは、見当もつかず、二人に問いかけた。
「君達は、古の剣を所持していた。あれを扱えるのは、騎士になった者の身だ」
「古の剣?」
「大精霊が作った剣だよ。その剣には、宝石が埋め込まれていてね。騎士であるならば、その宝石は、輝くんだけど、君達が、ここに流れ着いた時には、輝きは、失われていたんだ」
アレクシア曰く、クロスとクロウは、古の剣と呼ばれる武器で、妖魔達と戦いを繰り広げていたようだ。
だが、古の剣とは、何のことだろうか。
クロスは、思い出すことができず、アレクシアに問いかける。
アレクシアは、説明を続けた。
古の剣は、大精霊が作った剣だというのだ。
しかも、剣にも、宝石が埋め込まれていたという。
しかし、今は、輝きを失っている。
だからこそ、アレクシアは、クロスとクロウも、ルチア同様、力を失ってしまったのだと、察したのだろう。
「もしかして、記憶を失ったから、ですか?」
「そうだろうね」
ルチアは、力を失ったのは、記憶を失ったからではないかと、悟る。
アレクシアも、同じように推測していたようだ。
「だけど、ルチアが、力を取り戻しているという事は、君達も、力を取り戻している可能性があるかもしれない」
「だったら、俺達も、騎士になる」
「頼む。教えてくれ。どうしたら、もう一度、騎士になれるんだ?」
アレクシアは、ルチアが、力を取り戻しているのであれば、クロスとクロウも力を取り戻しているのではないかと推測しているようだ。
と言っても、これは、あくまで、推測。
本当に、力を取り戻しているとは、限らない。
それでも、クロスは、決意を固めた。
ルチアを守るために、騎士になると。
そして、クロウは、懇願した。
もう一度、騎士になるために。
「戻っているかはどうかは、定かではないけれど、神石に触れたら、何か、わかるかもしれないよ」
「神石に?」
「ルチアも、一度、神石に触れている。ルチアは、神石と共鳴したからね」
「確かに」
アレクシアは、騎士になる方法を説明する。
遺跡にある神石に、触れる事で、力をもう一度、覚醒できるのではないかと推測していた。
ルチアも、神石に触れた後、ヴァルキュリアに変身している。
それも、神石と共鳴を果たしたことで。
もし、仮に、二人が、力を取り戻したとすれば、神石に触れる事で、神石と共鳴し、古の剣を扱うことができるのではないだろうか。
と、アレクシアは、推測しているらしい。
ルチアも、納得したようで、うなずいた。
「結界の調査も、しなければならないし、一緒に、来るかい?遺跡に」
「うん。俺は、行く。騎士になりたい」
アレクシアは、二人を誘う。
結界がほころんでいる原因も、調べようとしているようだ。
クロスは、うなずいた。
遺跡に行き、もう一度、騎士になると。
強く、強く、願って。
「クロウは?」
「俺もだ。俺も、騎士になる」
「決まりだね」
アレクシアは、クロウにも問いかける。
もちろん、クロウが出す答えはただ一つ。
遺跡に行き、騎士になる事だ。
それ以外の答えは、あり得ない。
これにて、二人は、もう一度、騎士になる道を選ぶこととなった。
「今日は、いろいろ大変だったし、明日、行こう。ルチア、君も、来てくれるとうれしいんだけど」
「うん、もちろん、行くよ」
「ありがとう」
今すぐにでも生きたいところではあったが、今日は、あまりにも、衝撃的な事が多すぎた。
今は、昼時であっても、クロスとクロウにとっては、疲れ果てているであろう。
アレクシアは、二人の体調を考慮し、明日、遺跡に向かうこととなった。
ここで、アレクシアは、ルチアにも、動向を願い出る。
妖魔が、出現し、邪魔をする可能性もある。
ゆえに、ルチアの力が、必要なのだ。
もちろん、ルチアが、断るはずもない。
ルチアも、アレクシアに同行することを決めた。
その日の夜、ルチア達は、各々、様々な事を思い浮かべる。
ルチアは、自身が、ヴァルキュリアに変身した事を受け入れつつ、これから、何が起こるのだろうかと、不安に駆られながら、眠りについた。
クロスとクロウは、自分達が、騎士であった事を受け入れながらも、もう一度、騎士になる事、そして、ルチアを守る事を誓った。
翌朝、ルチア達は、もう一度、遺跡に向かい、神石の元まで、たどり着く。
神石に異変はなさそうだ。
ゆえに、なぜ、結界が、ほころびたのかは、やはり、アレクシアでさえも、不明であった。
それでも、二人が、騎士になってくれるのであれば、心強いであろう。
神石の力を感じ取ったのか、クロスとクロウは、ただ、静かに、神石をまじまじと眺めていた。
「どう?神石とのご対面は」
「……確かに、すごいな」
「うん。すごい、力を感じる」
アレクシアは、二人に問いかける。
二人は、神石の力を感じ取っているようだ。
こうして、神石を間近で眺めるのは、初めての事。
ゆえに、その力に圧倒されたような感覚に陥っていた。
「さすがだね。普通なら、精霊人でも、感じ取る事は、難しいんだ」
「じゃあ、アレクシアさんは……」
「私の場合は、いろいろ、調べたから」
アレクシア曰く、精霊人でさえも、神の力を感じ取る事は、難しい。
つまり、ルチア、そして、クロスとクロウが、宝石に選ばれし者であり、それほど、強い力を持った精霊人なのであろう。
と言っても、アレクシアは、物珍しさで、神石をくまなく調べたらしい。
ゆえに、神石のすごさを理解してきたようだ。
さすがは、天才研究者と言ったところであろうか。
「じゃあ、触れてみて」
「ああ」
アレクシアに促され、クロスとクロウは、同時に、神石に触れる。
その時であった。
「っ!!」
神石に触れた直後、クロスとクロウは、とっさに胸を抑える。
ルチアの時と同じように。
「大丈夫?」
「あ、ああ……」
「ちょっと、胸が熱いだけなんだ……」
「私の時と、同じだ……」
ルチアは、二人の身を案じる。
クロスとクロウは、胸が熱くなるのを感じたようだ。
やはり、ルチアと同じ感覚に陥っている。
つまり、神石と共鳴をしているという事だ。
「どうやら、力は、戻ってるみたいだね」
アレクシアは、察した。
二人も、力が、戻ったのだと。
これで、二人は、再び、騎士になる事ができる。
ルチア達は、そう、確信していた。
「じゃあ、さっそく……」
「ま、待って!!」
アレクシアは、二人を連れて、奥へ行こうとした。
その時であった。
ルチアが、何かに気付いたのは。
アレクシアは、立ち止まり、ルチアは、構える。
しかも、にらんで。
視線の先に誰かがいるのだろうか。
クロス達は、警戒し始めた。
すると、一瞬のうちに、二人の青年と女性が現れる。
しかも、二人とも黒褐色の肌であり、青年は白い髪、女性黒い髪であった。
「へぇ、俺達に気付くなんて、すげぇ奴がいるんだな」
「そうね。ちょっと、楽しめそうじゃない?」
青年と女性は、不敵な笑みを浮かべる。
まるで、この状態を楽しんでいるかのようだ。
青年と女性は、まがまがしいオーラを発動し始めた。
「まさか、この二人……妖魔?」
ルチアは、推測した。
目の前にいる二人は、妖魔なのだと。
それも、青年は光の妖魔、女性は闇の妖魔のようだ。
ルチア達は、二人の妖魔に遭遇してしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます