ホームレス

ホームレス

　ホームレスの俺にとって、空き缶拾いは貴重な収入源だ。だが、最近どうも実入りが悪い。どうやら他に空き缶を拾っているやつがいるらしい。小学校の低学年くらいの男の子だ。ランドセルより大きく膨らんだゴミ袋に空き缶を山ほど放り込んでいつも持ち歩いている。何か学校からの課題でやっているのかと初めは思ったが、そうでもないらしい。

　ホームレス仲間の1人に相談したら、そいつの車で隣町まで便乗させてもらえることになった。さすがのあいつも隣町の缶は拾っていないだろう。その推測は当たっていて、俺は2袋の缶を集めることができた。久しぶりの収穫だ。これで3日は食うものに困らない。

　仲間の車にその袋を積み込んでいると、

「これからはこっちの缶も拾わなきゃいけないのか」

　あの男の子だ。

「なあ、僕。別に僕が全部の空き缶を拾わなくてもいいんだぜ？それに、僕に全部拾われちゃったら、おじさん飢え死にしちゃうよ」

　その男の子は、不満げに口を尖らせて言った。

「はじめからそのためにやってるのに」