零点五本目 いつもの

「いやー、便利な世の中になったものだなー。ネットでこんなにカンタンにイメージ通りに作ってもらえるなんてなー」

「社長ー、やっぱりこのポスターの煽り文句やめませんか?僕これ嫌いなんですけど」

「おいおい、何言ってるんだ。こんなセンスという言葉の例文として辞書に載せられそうな煽り文句、むしろ発信しないと人類史の教科書がつまらなくなって、未来の学生達に申し訳ないだろう」

「無駄よ。このナンセンスの権化には、何言っても遠慮か謙遜か照れ隠しにしかならないわ。まったく、その自信の水源みたいな性格、どうにかならないかしらね」

「はっはっはっ、褒めるな褒めるな」

「社長、縫い方は選ばせてあげますから、口を閉じてください」

「おっと怖い怖い。口は災いの元ってね、なにが災いしたのかはわからんが。あと社長じゃなくて所長、っと指ぬきは外しておいてくれて大丈夫だぞ」

「なんだ、せっかく糸まで通したのに」

「なー、暇ならこの問題教えてくれよー。資格試験もうすぐなんだよー」

「仕方ないわね、依頼来なくて暇だったのは確かだしね、手伝ってあげr」

 ピンポンパンポンピンポーン、ピンポンパンポンピンポーン

「・・・やっぱりもうちょっと自分で考えなさい」

「ええー」

「というか所長。インターホン変えて、って僕この前言いましたよね。なんで某コンビニの入店チャイムと同じもののままなんですか」

「あー忘れてたわー。すっかり忘れてたわー。あー、うん、またしとくよー。はいはいそんなことより早く出てよ、お客さん待たせてるよ」

「わかってますよ。

 はーい、今出まーす」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る