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 今回は中世がベースの世界だった。客船が舞台で一夜にして連続の殺人事件が起こる。その殺人気がマリオ君だ。面白いのは初めからマリオ君が殺人鬼だと分かるところ。喜劇とも悲劇とも取れる舞台は、さすが劇団トライトットと言うべきだと思う。舞台装置が少ないところも想像が掻き立てられて話が膨らむ。これだけ余韻が重く感じるのも、濃厚さゆえだろう。

 もちろん、キャラクターを際立てていた星見さんの衣装も凄かった。中世をベースにしていることもあり、星見さんのデザインはぴったりだった。華やかなドレスやスーツは今まで見た舞台のものより豪華で、それだけで立場やキャラクターが透けるようなデザインだった。さすが星見さんだ。

個人的にはヒロイン役の勝気なお嬢様の短めの舞踏会ドレスが一番好きだ。一番初めに殺された貴族の男が着ていたスリーピースのスーツも良かった。売っていたら買うのに。

星見さんに頼めば作ってくれるだろうか、なんて。

「すごいなぁ」

 店に来てくれる星見さんもマリオ君も、こんなに凄い人だなんて。ちょっと誇らしいわ、俺。

 最初はどこにでもいるような演者だったのに、マリオ君は素敵に成長していた。ただ観劇が好きな俺が言うなんて甚だ失礼な話だが、マリオ君の成長は凄い。今の彼は自信に満ち溢れているようだった。

 今度店に来てくれた時は、一杯奢らせてもらおう。こんな素敵な舞台を観させてくれた二人に。

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