けもの ひととせ

と こ ろ ん

ぷろろーぐ

「あけましておめでとうございますですよ、助手」


今夜は、雲が無い。

夜の雨は好きでは無い。今日晴れた事で昨日の鬱憤も晴れようか。


顔は崩さないまま、心はうきうきとしながら、昨晩読み切れなかった本を片手に、いつもの月がよく見える窓まで飛ぼうとした間際。


ちょこんと、少しだけ手首を開き気味に佇みながら。

月光を浴びて真白の羽をほのかに色付かせ。

そして、くりくりとした目を、微かに輝かせ。


こんな時の博士は、いつも私に新しいなにかをくれる。


「それは」


聞き慣れない言葉は、軽く顔を傾げてみても噛み砕けない、いや、飲み込めないままであった。

不思議そうにする私を見てか、私と同じ様に本を持つ博士は、それを差し出しながら言うのだった。


「1年を、始めるですよ、助手」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る