アイネクライネ

@akiko_ooo

第1話






あなたと出会って、自分がこんなにもめんどくさい人間だったことを知りました。

あなたにはすべてを見せたいと思ってもどうしても隠してしまうことがある。わたしのせいで誰かがつらい思いをするのなら身を引こうと思う一方で、あなたの名を呼びたいと思ってしまう。そうやって他人の心配をしつつも、あなたが居場所を失くし彷徨うくらいならば、誰かが身代わりになればなんて思ってしまう。いっそのことあなたと出会わなければよかったとも思うけれど、あなたと出会えたことで「消えてしまいたい」という気持ちがなくなったのだから、これは運命なんじゃないかとも思ってしまう。わたしはこんなにめんどくさい人間だったのかしら。


あなたと会えるたびに嬉しくてしあわせで、もう死んでしまってもいいと思うけれど、嬉しくなるたびに、しあわせを感じるたびに、あなたと別れる日が来ることを恐れて、怖気づいてしまう。




自分が嫌になって、不安に押しつぶされそうになった夜、なぜだか、必ずあなたは電話をくれる。あなたの声を聞くだけで、あなたに名を呼ばれるだけで、負の感情は消えていく。こんなにしあわせでいいんでしょうか。わたしにはもったいないのではないですか。


でも、もし、このしあわせが許されるのなら、あなたの名前を呼んでいいですか。
























  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アイネクライネ @akiko_ooo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る