夢の蕾
@akiko_ooo
第1話
「しあわせ。」
思わず、声が漏れた。だってこんな平日の、やわらかく、春めいてきた日に、あなたと手を繋いで散歩できるなんて。
「わたしも」
彼女は太陽の眩しさに目を細めていた。それは女神様のようで、いまこの瞬間に光のなかに消えてしまうんじゃないか。そう思ったら彼女が本当にここにいることを実感したくて、思わず抱きしめていた。
どうしたの、と言いながらそっと私の背中を撫でてくれる。さぁっと風が吹いた。風はまだ冷たくて、思わず彼女の首元に顔を埋める。
「ここにいるから。」
私の心を見透かしたように彼女は答える。ずっとずっとあなたのそばにいるから、と。いつから私はこんなに弱くなってしまったんだろうと思う。ひとりで生きていけると思っていたのに。
また風が吹いた。今度は春の香りを連れて。顔を上げて、彼女の目を見た。ひとりで生きていける自信はもうないけれど、これだけは約束できる。絶対に彼女をしあわせにする。じわっと涙がでてきそうになったのは、隠し通した。
夢の蕾 @akiko_ooo
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