おとなの掟

@akiko_ooo

第1話




「…何を考えているの?」

隣にいる彼女が聞いてきた。同じベッドのなか、触りごごちのいいシーツに包まれて、すこし上目遣いで私を見る彼女。

そんなやつのところに行かないで、ずっと私のそばにいて、どうしようもないくらい愛してる。次から次へといろんなことが頭に浮かぶけれど、どれも考えたって意味がない。答えはわかりきっている。けれどぐるぐると同じことを考えて、頭のなかがごちゃごちゃして、わけがわからない。

「わたしが考えてるのはひとつだけよ」

いつの間にか、彼女がまたがっていて。目の前に彼女の瞳があって。耳元で囁かれる。

「あなたのことが好きっていうことだけ」

ほら、そうやってあなたはまた私を底なしの闇に陥れる。あと1時間もすれば、旦那のもとに帰ってしまうくせに。



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