私には恋愛なんて絶対無理。

御狐神彼方

第1話 私の秘密

私はどこにでもいる普通の女子高生である。そう、どこにでもいる生物学上では女である。ひとつの事情を除いては。

「あれ、今日は早起きなのね。まあ、委員会あるしそりゃそうのかしら。ていうか!なんでそんな適当な髪型してきてるの!?あたしの目の黒いうちはおしゃれをしないなんてこと許さないからね!!」

「うるさいなぁ。べつにいいじゃん、私を見てる人なんていないだろうし」

そういうとオネエ言葉の男、祠堂佳門しどうかもんは私と幼馴染で驚くくらいのオシャレ好きと名の通るオネエ王子とも呼ばれている。しかも財閥の御曹司と物本の王子様だ。

「そんなことないわよ。窓架は結構男子の人気ナンバーワンなのよ?可愛いし、頭いいし、運動もできる。こんな完璧な女生徒なんて早々いないし!」

「いや、私はの女子高生だし。ていうか、できるからやっているんだよ。の女子高生ならあたりまえでしょ。できるのにやらないなんて嫌じゃん」

「なんか普通っていうのを強調するわね。なんでそんなに普通って言うのを強調するのかしら?」

私はそのオネエ野郎に傘の持ち手を突き付けた。

「佳門。私、ちょっと朝から機嫌が悪いんだけど。これ、何でだと思う?」

「ごめんなさいごめんなさいね。あたしが悪かったわ!だから傘を持ってあたしの首に突きたてんのは止めてちょうだい!!そして殺意を帯びた目であたしを見るのも止めていただけると幸いなんですが……」

私は傘を下ろし、佳門の顔から前に向き直った。

「そう言えば窓架、昨日告白されてなかった?下駄箱に手紙は入ってたわよね!」

「え?ああ、付き合ってくれって言われたからどこに?って答えたらなんか逃げて行った」

私は当たり前のように言ったが、佳門は私を見て一瞬キョトンとして頭を抱えて溜息をついた。

「まったく、鈍いわね。普通付き合ってくれって言われたらどこかへ付き合ってほしい訳じゃないと思うんだけど」

「まあ、どっちにしろ私は異性と付き合うなんて興味ないし」

そう言うと、佳門はまた溜息を吐いた。そして私の方に歩いて来て壁に腕をバンと叩いた。

「俺でも意識しない?」

「ちょっ。佳門、邪魔すぎるんだけど」

「あ、うん。ごめんなさいね」

そう言うと、佳門は私から一歩後ろに下がった。

「あ、そう言えば……」

「ねぇ佳門。もう学校だから早くクラス行きなよ」

「あ、はい」

佳門は少し落ち込んだように隣のクラスに歩いて行った。私も自分のクラスに入って行った。そしてすぐに私は女子男子に囲まれた。

「窓架ちゃん、この前の中間テストで一位だったんだよね!?ってことはシルバーピン獲得?!」

「ああ、そう言えばそうだったね」

私立小金沢高等学校では成績優秀者に与えられるシルバーピンなるものがある。学食免除、文房具、交通費まで免除される。これを獲得する為に学年1位を目指している人もいる。まあ私は正直そういうのはどうでもいい。

「あらぁ、学年1位さんは余裕ですこと」

そう言ってきたのはクラスメイトの戦国朱鳥せんごくあすかだった。彼女は私の事を怨んでいるらしい。はて、何をしたのだろうか。

「まあね。私、そーゆーの興味ないし」

「あら、お金に困ってる人に挑発をしているの?」

「いや、そんなことないよ。ていうかあなたの方が一生懸命やってる人の事を馬鹿にしてくるような言い方じゃないかな?」

私は戦国さんに対して我ながら天使の様な眩しい笑顔を向けた。その笑顔を受けた戦国さんは苦虫を噛んだような顔で教室を出て行った。

あの子の家は巷で知らない人はいない超豪邸。しかもそこの一人娘って事でいつも甘やかされて生きて来たまさに王女様のような性格をしている。だが、戦国家でも頭が上がらない家がある。それは榊家。旧家で金持ち。日本の業界ではトップに降臨している。ゲームで言うところのラスボス的な立ち位置にある。しかもその榊家を仕切っているのは若い女子だ。

「そう言えば今日は分家の人達が集まって会議があるんだったわね。何の会議なの?」

「ん?えっとまあなに。ちょっと異端者を裁く会議。かな」

「そう。て言うか、業界にいる顔になってるわよ。流石、榊の女帝ね」

「最近業界の仕事が多くてさぁ。いつもこんな感じだったから抜けなくなってるらしい」

「まあ根を詰め過ぎないようにしなさいね」

「分かってるよ、ママ」

「ママとは何よ!?」

そうそう。私には学校の人に言っていない事が一つある。それは……。

「お帰りなさいませ、窓架様」

「ええ、ただいま」

私は榊家の長女であり、榊家総帥である。

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