第1話 ある白い愛の詩
ミカサって、
羽川 ミカサのこと、
なぜ彼女があんなことをして、
石もて追われるように
この街を出て行ったかは、
誰も知らない。
ただ、
彼女のことをうたったうたが、
そのあと数年、
この街に残っている。
なぜだろう?
《泣いてない
ミカサのリタに憧れて
愛して馬鹿みて なにが悪いか》
リタって利他のこと。
利他って利己の反対。
本当に存在するかどうかは別にして
言葉としては、そういう意味。
自分自身を悪者にして
他人を助けることが
自分自身にとってなんのブラスになる?
その崇高な行為に対して失礼極まりないが
売名以外なんの得にもならないだろう。
売名にはなるだろう。
選挙に出るとか、ものを売るとか、
その利他行為をした『私』ですが
どうかよろしくお願いします。
という自己アピールにはなるだろう?
ミカサの場合は、明らかに違うから。
利他行為ののち、
この街から出て行って戻って来てないから。
訳がわからない。
なにをしたかったの?彼女?
誰の為に、おこなった?
泣いてるひと。
なんの為に、おこなった?
泣いてるひとを、助ける為。
結果、どうなった?
泣いてるひとが、助かった。
そのあと、どうなった?
泣いてるひとに、感謝された。
そしておそらくは、
今泣いてるひとの心に自分の存在を刻み込めた
今泣いてるひとは永遠に自分のことを忘れまい
ずっとずっと、自分のことを覚えていて欲しい
ずっとずっと、自分のことを覚えているだろう
それだけが、願い、
想い、
愛。
ただ彼女は、泣いてるひとのことを
愛していただけなんだ
その愛に
プラトニックしかないから
もう二度と会わないことで
逆に、
いつまでも覚えていてもらおうという
切り刻む自己アピールを
実践しただけなんだ。
それは、凄まじくストイックな愛。
リスペクトに値する
愛のレジェンドといつまでも
讃えられる行為だろう。
ただし、
泣いてるひとが、
本当に永遠にミカサのことを覚えているかは
保証できないんだが。
でも、私だけは、
絶対にミカサのことを忘れない。
べつに、ミカサを愛していたわけじゃない。
(勘違い、しないでよね!)
ただ、
彼女を忘れ去ることは、
世界の純愛をすべからく否定することになるから。
だから忘れないだけ………
《泣いてない
ミカサのリタに憧れて
愛して馬鹿みて なにが悪いか》
でも、「馬鹿みて」って、そういうこと。
いくら私が、覚えているって誓っても、
その相手から忘れられたら、
ミカサの当初の希望が叶ってない。
そうね、
それはその通り。
まるで絶望よね?
愛を捧げた相手に
忘れ去られるなんて。
デモネ、ボウヤ、
ソレガ、アイ、ナノヨ
アイッテ、バカナノヨ…………
ソウネ………ソウ……
バカナノハ、ワタシモ、ソウネ………………
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