想像力と数百円
先輩さん
「突然だけど、キャッチコピーの世界には神様が二人いるのを知っているかい?」
後輩くん
「ほんと、突然ですね…。神様ですか? 知っていると思います?」
先輩さん
「お、おう。まさか、開き直るとは」
後輩くん
「というか神様って、本当にいるんですか〜?」
先輩さん
「ふっふっふっ。本当にいるのだよ? そして、今日紹介するコピーもゴッドの作品であるのだ」
後輩くん
「想像力と…数百円…?」
先輩さん
「これは、なんのコピーだと思う?」
後輩くん
「数百円っていうのは、値段ですよね、、、えっと…想像力っていうのは…」
先輩さん
「想像するって言うのは、他にもいろいろなコピーで出てくるんだよ。例えば”野菜を見ると想像するもの”って言うキューピーマヨネーズのコピーとかもね。”想像”という単語は、一つちゃんと勉強しておくと後々良いことが待っているのだよ」
後輩くん
「…うーん、でも想像力だけじゃ、わからないというか…」
先輩さん
「どんな時に、君は想像する?」
後輩くん
「どんな時…何か見てる時?」
先輩さん
「何かって?」
後輩くん
「テレビとか…?」
先輩さん
「本当に?」
後輩くん
「え、だって水曜日のダウン○ウンとかを見ている時とか…はッ」
先輩さん
「(忿怒の表情で)あのね、テレビを見ている時って、考えているようで考えていないの。受動的か能動的かっていうと、受動的なの。テレビ全部を否定するわけじゃないけど、ただ漠然と見ているだけだと、本当に何も考えなくなってしまうかた−」
後輩くん
「(やっば、またスイッチ入れてしまった!?)」
〜先輩さん、クールダウン中〜
先輩さん
「はあ、はあ…それで、読んでいる時に、考えているでしょうが!」ガシッ
後輩くん
「よ、読んでいる時? あ」
先輩さん
「これは、新潮文庫のコピー。新潮文庫はさすがに知っているでしょ?」
後輩くん
「いや〜、あの、普段、本を読まないから…」
先輩さん
「あは」
後輩くん
「ちょ、待って。グーは駄目。グーは…いや、チョキも駄目です、パー。うん、せめてパーだったらなんとk−」バシィ!
〜後輩くん、ダウン中〜
先輩さん
「で、ですね。今日のコピーは、”想像力と数百円”。新潮文庫のコピーなんだけど、これはコピーの中でも、タグラインと呼ばれるコピーなんだ」
後輩くん
「たぐらいん?」
先輩さん
「企業ロゴの上にあるコピーのことをタグラインって言うんだよ。例えば、”今日を愛する。LION”とか”HITACHI INSPIRE THE NEXT"とか。企業ブランドに必ずくっ付いているコピーだね」
後輩くん
「へ〜」
先輩さん
「そして、今日のコピーも昔の新潮文庫のタグラインに使われていたんだ。色々とこのコピーには言いたいことがあるんだけど。これだけは言わせて欲しい。対比がすごく綺麗!」
後輩くん
「対比、ですか?」
先輩さん
「そう、対比。まず文字数を見ると?」
後輩くん
「想像力で3文字。数百円でも3文字。間に”と”が入って、左右対称?」
先輩さん
「そうそう、そして、ここからは私の考えなんだけど。想像力は、抽象。数百円は、硬貨何枚かで、少し具体的。ってなると、抽象と具体で対比関係があるの」
後輩くん
「確かに言われて見ると、考えることは抽象的ですもんね。数百円は、そうなると具体的な感じが」
先輩さん
「しかも! 数百円は、お金を出して文庫本を買う過程を表して。想像力は、本を読んで色々考えたと言う結果を出しているって読んで見ると。結果と過程と言う対比にもなっている気がするんだよねえ」
後輩くん
「! たった7文字に二つの対比構造を取って、しかも視覚的にも左右対称構造を取っているだと!?」
先輩さん
「なぜに、バトル漫画のやけに詳しく解説してくれるガヤモブのようなセリフを…」
後輩くん
「いや、これ! すごくないですか? すご…って、あ、確かこれがコピーの神様のコピーでしたっけ?」
先輩さん
「そうそう、よく思い出せたねえ」
後輩くん
「えへへ///」
先輩さん
「例えば、”このへんないきものは まだ日本にいるのです。 たぶん。”とか”おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。”ってコピーh−」
後輩くん
「うおおお! トトロやんけ! 魔女宅やんけ! うおおお!」
先輩さん
「あ、やっぱり知ってるね」
後輩くん
「えっ! ジブリのコピーって神様のコピーだったんですね」
先輩さん
「そうそう、糸井重里さんって言うコピーライター。いつかは、こんなコピーを書いてみたい。って思える最終到達地点なんだよ。そして、一つ一つのコピーが、今日みたいにとても勉強になるんだ」
後輩くん
「その名前は、聞いたことがあります! 探検隊とかですよね?」
先輩さん
「えっ、君は本当は何年生まれなの?」
後輩くん
「えっ」
先輩さん
「まあいいや。ジブリのコピーでとっても有名だけど。他にも”インテリげんちゃんの夏休み”とか”おとなもこどもおねーさんも”とか、たくさん紹介したいコピーがあるから、楽しみにしておけよ!」
後輩くん
「うっす」
先輩さん
「そして、全く本を読まないという君は、とりあえず糸井重里さんの本を読め」
後輩くん
「よ、読みますから! 読みますから! せめてお腹にゲンコツを! 顔だと傷が付いちゃう!」
続く
放課後キャッチコピー倶楽部 鎌田玄 @kenken-smile
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