ある日、日経は顔に出る。

後輩くん

「…もう答え、出てますやん!」


先輩さん

「察しが悪い後輩くんでも、さすがに気づくか〜」


後輩くん

「いやいやいやいや! これは気づかなきゃダメでしょ!」


先輩さん

「ふーん。じゃあ、このキャッチコピーは、何を紹介しているでしょうか?」


後輩くん

「そりゃあ、日本経済新聞ですよ!」ドヤァ


先輩さん

「なんで、読売新聞とか中日新聞とか報知新聞とかじゃなくて、日本経済新聞なんでしょうか??」


後輩くん

「そりゃあ…え、えっと…、あの、その」


先輩さん

「バーカ」


後輩くん

「〜ッ!!!」


〜後輩くん、クールダウン中〜


先輩さん

「と言う訳で、今日は日経新聞のキャッチコピーを鑑賞したいと思います!」


後輩くん

「あれ、前回の”でっかいどお”はいいんですか??」


先輩さん

「近い将来に、特集組んでやるから覚悟しておけっ!」ビシッ


後輩くん

「あ、はい///※」


※後輩くんは、女の子の「っ」と言う語尾に萌えを感じる趣向がある。


先輩さん

「で。今日の面白いところはなんだと思う?」


後輩くん

「面白いところ…ですか? えっと、日経って文字があるところ?」


先輩さん

「確かにそこも面白いんだよ。日本経済新聞ってあったらどうなる?」


後輩くん

「ある日、日本経済新聞は顔に出る。うわ、なんか他人行儀な感じ」


先輩さん

「ふふん、そうでしょう? 正式名称だとかしこまった感じがするから、少し距離感ができちゃうんだよ。例えば、フランシスコ・ザビエル※と言うのと、ザビと言うのでは距離感が違うよね」


※イエズス会の宣教師。シャビエルと表記した方がより正確。ヒゲと唇の間に二つ点を打って180度回転させるとペンギンになるのは、あまりにも有名。


後輩くん

「なんでザビエル…。あ、でも確かに苗字で呼ぶより、名前を短く《もじって》呼んだ方が、仲が良いと言うか距離感が近い気が」


先輩さん

「確かにそれもある。しかぁし! それだけではないのだよ、後輩くん! もっと面白いところがあるんだよ! よおく考えたまえ」


後輩くん

「たった12文字なのに、まだあるんですか!?」


〜後輩くん、必死に考え中〜


後輩くん

「わかりませんでした…」


先輩さん

「あ〜やっぱり分からないかぁ、あ〜残念残念、本当にがっかりだ」


後輩くん

「うっ※」


※後輩くんはソフトMであり、最近は言葉責めがマイブームである。

ちなみにマイブームもれっきとしたキャッチコピーであり、名付け親は「ゆるキャラ」などでおなじみのみうらじゅんさんだ! 

ちなみにちなみに、みうらじゅんさんの『正しい保健体育』(文春文庫)は、人生の必修単位である。


先輩さん

「”顔に出る”って言葉、普通どう言う時に使う?」


後輩くん

「…考えていることが顔に出るとか? 感情が顔に出る?」


先輩さん

「それって、一時的な現象だよね?」


後輩くん

「あれ…でも、今回のはずーっと続くみたいなイメージで読んでました」


先輩さん

「ふふん。なんで、ずーっと続くイメージだったのカネ?」


後輩くん

「そりゃあ…うお! ”ある日”だ!」


先輩さん

「そう! 面白いでしょ! ”ある日”を抜いて読んでみて??」


後輩くん

「日経は、顔に出る」


先輩さん

「どーよ?」


後輩くん

「何を言っているのかが、分からないのと…上から目線みたいな感じがして、ちょっと嫌味な感じも」


先輩さん

「それが、”ある日”って言う、時間を指定する言葉が入ると、しっくりきちゃう」


後輩くん

「! 本当だ! なんでだ!?」


先輩さん

「いつ顔に出るのかって言う瞬間を、”ある日”が説明してくれているからではないかなあって」


後輩くん

「な、なるほど…」


先輩さん

「それで、話が最初に戻るんだけど」


後輩くん

「?」


先輩さん

「これが全国紙の新聞だと、しっくりこない。経済を専門にした新聞だからこそ、”ある日”や”顔に出る”がしっくり来るのだ! …いや〜こういうところまで行けると鑑賞している感じが出るねえ!」


後輩くん

「ある日、読売は顔に出る。ある日、朝日は顔に出る。そうか、身近すぎるんだ…。逆に、経済の新聞はちょっと遠いところにあるから」


先輩さん

「そう言うことなのだよ、後輩くん。経済を専門にした、ちょっと遠いところにある感じの新聞だからこそ、”ある日、顔に出”て来るんだ」


後輩くん

「これって、”日経”のところに何かを入れても面白そうですよね?」


先輩さん

「ほほう。良いところに気づくではないか?」


後輩くん

「”ある日、チャート式は顔に出る。”

 ”ある日、NARUTOは顔に出る。”

 ”ある日、LOは顔−”ゲフッ」※


※チャート式…言わずと知れた数学問題集の王道。色ごとに難易度が分かれている仕様。赤色がむちゃくちゃ難しい。

※NARUTO…言わずと知れた少年漫画の王道。忍者の世界を舞台に、主人公がトップを目指す物語。

※LO…言わずと知れない青年雑誌の覇道。高校の時に、ロリコンの友人が嬉々として学校に持ってきていた雑誌。表紙のキャッチコピーはグラフィックと混ざってとても美しい。中身は…【検閲により削除】。


先輩さん

「はい、アウトです〜」


〜後輩くん、昇天中〜


先輩さん

「ちなみになんだけど」


後輩くん

「はい?」


先輩さん

「これって正しく言うならば、顔つきが変わるんだよねえ。でも”顔に出る”と書いてあった方が、”ある日”っていう、瞬間切り替わる言葉と馴染むんだ。まあ、意味的に馴染むのもあるんだけど…」


後輩くん

「…?」


先輩さん

「”ある日”って何文字?」


後輩くん

「3文字ですよ、バカにするなあ!」


先輩さん

「バカにしてないってっ。じゃあ、”顔に出る”は?」


後輩くん

「か・お・に・で・る、5文字です」


先輩さん

「ふふん。どちらも奇数。五七五の俳句もそうだけれど、日本人は奇数が大好きなのさ!※」


※北野武監督も、映画を撮る時に、一つのシーンの秒数を意図的に奇数秒にしているのも有名。


先輩さん

「故に、日本人の語感的にもしっくり来るんだよ」


後輩くん

「確かに、語呂が良いです!」


先輩さん

「とまあ、こんな具合にキャッチコピーって面白いんだけど、どうでしたかね?」


後輩くん

「面白い! 面白い! 今日のは、なんか頭を使ったな〜って感じで面白かったです!」


先輩さん

「じゃあ、そろそろ帰ろうか?」


後輩くん

「あ、はい、先輩。お疲れ様です〜」


先輩さん

「…」


後輩くん

「?」


先輩さん

「…ばか」


後輩くん

「何か言いました??」


先輩さん

「お前は馬鹿野郎だ!」


つゞけ

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