放課後キャッチコピー倶楽部

鎌田玄

帰ったら、白いシャツ

先輩さん

「さて問題です。 ”帰ったら、白いシャツ”とは、どんな商品のキャッチコピーでしょうか?」


後輩くん

「!? ちょ、ちょ! 先輩! 唐突すぎませんか!?」


先輩さん

「唐突なんてことはないのだよ、後輩くん。満員電車の程よい暇つぶし程度の駄文ならば、多少展開が強引であろうと問題はないのだよ」


後輩くん

「…」


先輩さん

「さあ、このコピーは何を伝えようとしているのかを考えようではないか…まあ、簡単だとは思うけどね」


後輩くん

「簡単なんですか!?」


先輩さん

「え…キャッチコピー鑑賞倶楽部の一員である後輩くんにも関わらず、知らないのかい?」


後輩くん

「いや、だって、キャッチコピーとかそんな意識して見てないですもん」


先輩さん

「(ゴミを見る目)」


後輩くん

「いやぁ、そんな目をされると///※」


※後輩くんは、ソフトMである。


先輩さん

「−チッ、いいから早く考えろや」


後輩くん

「ちょ、まぢの睨みは怖いですって…」


〜後輩くん考え中〜


後輩くん

「えっと、帰ったら白いシャツってことは」


先輩さん

「うんうん」


後輩くん

「クリーニング屋さんとか? ほら、真っ白い気持ちいいシャツで一日を迎えようみたいな?」


先輩さん

「ほぉ、でもまあ普通かな」


後輩くん

「ふ、普通…」


先輩さん

「あのね、これって日本のコピーベスト500※にも載っているレジェンドコピーなんだよ」


※日本のコピーベスト500(宣伝会議刊)


先輩さん

「真っ白くて気持ちいいシャツを着ましょう! みたいな単純なことではないのだよ。ほら、もっとかんがえたまへ」


後輩くん

「いや、だって、文章だけじゃ何もわからな−」


先輩さん

「文章だけから想像する。それもキャッチコピーの楽しみ方の一つなのさ」グイッ


後輩くん

「せ、先輩…ち、近いです」


〜後輩くん、照れ隠し中〜


先輩さん

「まあ最初だし、大ヒントをあげよう。 この”帰ったら”って言うのは、から帰ったらってこと。さあ、どうなる?」


後輩くん

「南国ですか…? 南国、南国、ハワイ、グアム、バカンス、水着、グラマラスなお姉ちゃ−げふ」


先輩さん

「はい、セクハラです。セクハラしたら殴るので、これから注意してください」


後輩くん

「いや、もう殴って−」


先輩さん

「はい。察しが悪すぎるので、もう答え合わせしちゃいます。こほん。南国って日差しが強いよね? 強いと、どーなる?」


後輩くん

「日差しが強かったら…日焼けしますよ」


先輩さん

「その通り! じゃあ、肌の色はどうなるでしょう?」


後輩くん

「そりゃ、褐色と言うか黒色と言うか…あ!」


先輩さん

「気づいた? 肌が焼けると、真っ白いシャツが似合うと思わない?」


後輩くん

「確かに! 白色とのコントラストを決めている日焼けダンディがイメージできます!」


先輩さん

「そう! いいね! これは、全日空の沖縄旅行のキャッチコピーなんだ。沖縄に行って、かっこよく日焼けして、帰ってきたら真っ白いシャツを着こなしちゃお! って言うコピー!」


後輩くん

「!!!」


先輩さん

「南国に行くって言ったのは、ほぼほぼ答えを言っていたというのに、気づかないとは…はぁ」


後輩くん

「だ、だって! まだ初めてですもん」


先輩さん

「たった9文字に、ここまでストーリーが入るなんて驚きだろう?」


後輩くん

「…」


先輩さん

「どうしたのだい?」


後輩くん

「いや、なんか、面白いです…なんというか、沖縄の良さってもっとあるのに、白いシャツを押し出すなんて」


先輩さん

「おぉ! 鋭いではないか、後輩くん! これは沖縄旅行に行った後の良いところを書いている。それがすごく面白いんだ。ソーキそばとか、ラフテーとか、にんじんしりしりとか、色々な良いところがいっぱいあるのにも関わらず!」


後輩くん

「(全部、食べ物ですよ。先輩)」


先輩さん

「それにだね。コピーの面白いのは、この一文が誰に向けて書いてあるのかを考えることなのさ」ビシッ


後輩くん

「誰って…ドユコト?」


先輩さん

「えっと…例えば、今日のコピーは、子供にはわからないよね?」


後輩くん

「そりゃそうですよ。自分みたいな、インテリモテたい系男性ならわかるかも知れないですけど」


先輩さん

「…君がインテリかどうかは置いておくとして。それってどんな男性?」


後輩くん

「そりゃ、彼女がいないモテたい男とかじゃないですか?」


先輩さん

「…奥さんがいる30代くらいのダンディとかは?」


後輩くん

「−ッ! 最近ご無沙汰で、ここは一つ男らしさをつけるた−げふッ」


先輩さん

「はい、セクハラです」


後輩くん

「ちょ、今のは先輩が−」


先輩さん

「口ごたえも一発レッド※です」


※一発でレッドカードの略。ここでは、先輩さんの殴り判定に一発で入ると言うことで使われている。


後輩くん

「げふぅ」


〜閑話休題〜


先輩さん

「ちなみに、これを機会に覚えていてもらいたいのが、このコピーを作った人」


後輩くん

「作った人ですか?」


先輩さん

「そう! 我が部のメンバーだったら、キャッチコピー界のビッグネームはちゃんと覚えてもらいます」


後輩くん

「が、頑張ります…」


先輩さん

「今回覚えてもらうのは、眞木 準※さん。”でっかいどお。北海道”と言った洒落っ気のあるコピーが、もう最高! いつ見ても、心に響いてくるって言うか、もうこの気持ちを言葉にできないのがもどかしい!」


※詳しくは調べて見てね☆


後輩くん

「(うっわ、スイッチ入っちゃったよ…)」


先輩さん

「他にもね、今回のコピーと関連させると、”トースト娘ができあがる。”とかね、他にも−」


後輩くん

「話が長くなりそうなので、今回はこのへんで!」


つゞけ

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