第5話 殺し屋の苦悩 その2
「え?ひかる、未来さんと知り合い?」
やばい、流石にバレるのは不味すぎる。
「いや… まあ確かに知り合いだな。幼馴染で小学生の頃は遊んだんだけど、小3の時に転校しちゃったんだよね。なあ、未来ちゃん?」
とりあえず頑張って誤魔化してみる、頼むからのってくれ!
「うん、こんな所で会えるとは思わなかったよ…ひかるくん!」
突然にそう言われ一瞬戸惑った表情を見せたもののちゃんと話を合わせてくれた、ていうか、俺の名前は言って無いのによく分かったな。
あ、涼輝が言ったのか。
「へぇー、未来さんとひかるが幼馴染だったんだー」
ニヤニヤしながら涼輝がこっちと未来を見る。
あんまり誤解されるのは嫌だけど変に勘繰られるよりマシか。
「ひかるくんこの人は?」
未来さんが尋ねてきたので適当に紹介する。
「彼は橋本涼輝、サッカー部で頭も良いいわゆる『デキスギくん』だよ」
「あんまり褒めるな、そこまで成績が良い訳でもないしサッカー部も普通にやってるだけだよ」
そうやって謙遜するのがまあムカつくんだよ…
「橋本くんか、なんか聞いたことのある名前だね」
「そりゃそうだよ、同級生の中じゃ有名人だからな」
「だからそういうのじゃないって」
はいはい、自分ではそう思ってないんだろ?そろそろちゃんと認めなよ。
「で、ひかるくんは何しに来たの?」
未来さんが尋ねたところで俺はここが他クラスだったのに気がついた。
周りを見ていると無駄に注目を集めている。
「あんまりこっちにきて余計なことしないでね!」
視線を戻すと未来の横には黒髪ポニーテールの男装女子がいた。
あまり同級生とも関わりのない俺でも、彼女の事は知っている。
彼女は園田未央さん、生徒会の役員で正義感の強い人だ。
なんでも、両親が警察官らしく影響されたらしい。
まあ、なんで他人に興味のない俺がこんなに知っているのは他に理由がある。
「桐崎くん!また制服の第2ボタン外しているよ!」
「はぁ、またこれかよ…」
「校則違反!これで3回目だから奉仕作業ね」
俺は大きく溜息をついた。
「大体、こうしているのって俺だけじゃないだろ?
ほら、涼輝だっt…」
と後ろを見ると彼は、きちっと第1ボタンまでつけてそっぽを向いていた。
俺は口を大きく開いた。
この裏切り者!
「ね?私が見る時はみんなちゃんと制服を着こなしているよ」
「えぇ、マジかよ…」
つまり、彼女を見た途端、みんな一斉にボタンを着けるのか…
想像すると吹き出しそうになる。
「何笑っているの?真面目に指導を受けなさい!
ハイ、これ指導要請書だよ」
園田さんは俺にいつのまに用意した紙を俺に突き出してきた。
「はいはい、行けば良いんでしょ」
俺は紙を乱暴に奪い取った。
キーンコーン、カーンコーン。
チャイムが鳴り昼休みの終わりを告げた。
「じゃ、帰ろうか。またね未来ちゃん」
「あ…うん」
涼輝が手を振った。
お前まさか狙ってんじゃねぇよな…
全く、興味がないとか大嘘じゃねぇか。
やめとけやめとけ、彼女はお前には背負いきれない過去を持ってるんだよ。
俺はそう言いたかったが、言葉を飲み込んで自分の教室に戻った。
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