終─つい─

呼べども 呼べども

声無き聲は届かず

あの辻を曲がって逃げていく

後ろ姿の幻影が


夏の夕立前の空気のような

纒わりつく湿度の重さに

呼吸すら儘ならなくなっていく

仄暗い鉛色の記憶の底


手を伸ばした所で届きやしない

あれは過去の亡霊なのだ

ひそっと漏らした呟きすら

どろりと口の端から垂れる悪夢


呼べども 呼べども

聲は身の裡で木霊して

誰の耳にも聴こえやしない

届きもせずに朽ちていく


ことり、と堕ちたのは

溜め息だったのか 涙だったのか

分からないまま目を閉じた

分からないまま呼吸を止めた










 


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