シャコたんの災難

有原ハリアー

シャコたんの災難

「はあ……銀行まで行くの、恥ずかしいよぉ……」

 地方都市のアパートに住むシャコたん。

 彼女はとてつもない恥ずかしがり屋で、外に出るのもままならない!

「やっと、ついたぁ……。みんな、ジロジロ私を見ないでよぉ……」

 残念だが、通行人のほとんどは、キミを見ていない! キミの自意識過剰だ!

「よきん……預金、引き出さなきゃ……」

 シャコたん、頑張れ! 数分だけ、耐えるんだ、シャコたん!

「暗証、番号……えい、えい、えい、えいっ」

 いちいち掛け声上げるの可愛いぞ、シャコたん。

「ほっ、終わった……」

 目的だった預金引き出しも終わり、おずおずと帰るシャコたん。可愛いよ。


「動くなぁ!」


 何だ!?

「俺達は強盗だ! 全員動くな!」

 二人組の男が、銀行強盗を働きに来た! 一人はナイフ、一人は拳銃まで持ってるぞぉ!?

「はわぁあああっ!」

「おいそこの女! こっちに来い!」

 おいナイフを持った強盗さん、彼女に――シャコたんに――触らない方がいい。

「うるせぇ!」

 聞こえてるのね。けど、やめとけやめとけ!

「知るか! オラッ、来い――」


「やめてくださぁ~い!」


 シャコたんが目にもとまらぬ速さで拳を振るぅ!

 一節によると、本来のシャコエビのパンチの威力は.22口径(5.56mm)拳銃弾と同等の威力があるらしい。つまり拳銃で撃たれたのと同じ衝撃を、殴られるヤツは受けるワケだ。

 それが人間サイズになったシャコたんの場合――

「ぐふぅっ!」

 運よく強盗は死にはしなかったが、壁にぶっ飛ばされ、大の字に穴を開けた。

「この野郎!」

 おい、その銃はモデルガンだろ、もう一人の強盗さん!

「チッ、そうだった――!?」

「来ないでくださぁ~い!」

 自分から近づいておいて何たる言い草だ、このシャコエビ娘。

「ぎゃぁああああああっ!?」

 やっぱりぶっ飛ばされる、もう一人の強盗。

 相方の埋まった壁の隣に、大の字に穴を開けた。傍から見ると、「大大」といった感じの穴が開いている。シュールだ。

 すると、サイレン音が聞こえた。

 誰かがいつの間にか通報していたであろう、警察だ!

 よかったよかった、これで強盗二人組はとっ捕まるぞ!

「へ!? ちょ、ちょっと、皆さん!? 何で私を見てるんですか!? み、見ないでくださぁ~い!」

 おいおい……キミがこの事件の最大の功労者だからだよ。って、ちょっと、待って、警察の事情聴取があるの!

「知りませぇ~ん!」


 翌日。

 ピンポーンと、シャコたんの部屋のチャイムが鳴った。

「は、はいぃ!」

「警察です」

「ちょ、ちょっと!? 私、捕まるようなこと、何もしてませんよ!?」

「いえ、昨日の銀行強盗の件について、話を聞かせていただきたく」

「えぇえええええ~!?」


 その三週間後。

「――以上の理由により、感謝状を授与します」

「は、はわわわわわぁっ!」

 よかったね、シャコたん。警察から感謝状、貰えたよ。

「よくありませぇ~ん! 恥ずかしいですぅ~!」

 ほらほら、授与式をぶち壊しにしないの!

「知りませぇ~ん!」


 一時間後。

 よかったよかった、ちゃんと終わって。

 これからも、シャコたんのドタバタっぷり、見せてもらうからね!

「み、見ないでくださぁ~い!!!」

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シャコたんの災難 有原ハリアー @BlackKnight

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