第29話 冬がその姿を現すとき

「冬がその姿を現すとき」


蒼色の大空が太陽を包む

日常という名の不感症は

お決まりの行動パターン

それが生きてるってこと


空に溶け込むノッポ煙突

我が町の見守りシンボル

巨大なキリンの破壊行為

人々は指を加えて無抵抗


寒空にコホン!と咳払い

昨日の通り雨にやり返し

もうすぐ冬のはじまりだ

樹々の後ろ姿が寒々しい


ほんの少し季節に抗って

この町の春を探してみた

時々刻々と過ぎゆく毎日

普遍の価値を見出したい


秋が過ぎ、また冬が来る

夏が来れば、春が終わる

廻る、廻るよ、順序よく

人々は踊り、踊らされて

自動的に四季を通過する


天空が群青に暗転する頃

ぐーっと伸ばした掌一杯

星の金貨よ、降り注げ!

シリウス、プロキオン、ベテルギウス

星空を遮る摩天楼を透過

都会の空は汚れちまって

希望も絶望もごった煮だ


今宵はキラ星の大運動会

春を探した私は天邪鬼か

ただただ季節に弄ばれる

その心地よさで床に就く


冬がはじまる、もうすぐ

冷たい指先

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