第19話 星の金貨

「星の金貨」


誰かが貯め込んだ

無数の金貨が噴き出して

宙空に華々しく舞い散った


欲しいものなら何もかも

手に入ると思っていた

そして、

手に入れた瞬間に不要物に変わる


あゝ、夢とはなんだろう

あゝ、情熱はどこへ消えた


星が綺麗だからと

それだけの理由で

飛び出した無謀さ


無数の鳥達が群れをつくる

私が去ったあと、続けざまに

一羽抜け出し

五羽抜け出し

十羽抜け出し

誰もそんなことには気づかず

群れは永遠に安泰だ


夢を追ったはずの

甲斐のない離脱を

嘆いても仕方ない


居場所を失った今

私に残されたのは不自由な翼

夜空を駆けて別の群れを探る

受け容れられようのない別の群れを


星の金貨が一枚、夜空から舞い降りた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る