せいぎのみかた
来条 恵夢
赤と黄
「正義の味方にならないかい?」
いきなり。近所のコンビニに雑誌を買いに行こうとして角を曲がってこんな風に声をかけられたら、どんな反応を取るべきだろうか。
ねずみ色のパーカを
黒スーツは、慌てて春菜の後を追う。
「ちょ、待てって! 正義の味方だぞ!? ぐっとこないか?!」
「どこの誰にとっての正義。そんなちゃちい設定で引っかけたいなら、せめて、
「それは偏見だぞ。中高生だって、彼らなりに時間はいっぱい使ってるはずだ」
「どうでもいいけどあたしのところに来るのはお
目的地にたどり着いて、自動ドアをくぐる。店員の半ば自動的な声を聞き流して、春菜は
黒スーツは、わたわたとその後を追う。
黒いスーツに黒い眼鏡と、日本国土で日本人がやるには怪しすぎる格好で、コンビニ店員の
「また、求人雑誌? この間の会社もクビになったんだ?」
「部下だからって、人の生活を根ほり葉ほり聞く奴が悪い。殴ったくらいでびーび泣くなっての」
「春ちゃんに本気で殴られたら、ヒグマでも倒れると思うよ」
ぎろりと、春菜が睨み付けると、空彦はにやりと笑みを浮かべた。
「給料は払うよ。一般的な大卒の給料と同じくらいをね。他に仲間はいるけど、上司は総司令の僕だけだ。どう、心が動かない?」
大学を卒業してからの一年半というもの、いくつもの会社を上司や上層部との
わずかに動いた眉に感情を読み取って、空彦は、更に言葉を重ねた。
「バイクを一台、備品として支給するつもりでいる。どう、正義の味方、やるつもりはない?」
「やる!」
思わず叫んでしまってから我に返るが、もう遅い。空彦は、
「春ちゃんって、言ったことは必ず守る人だよね?」
雑誌を棚に戻して、深々と、溜息をついた。
――水倉春菜、二十三歳、正義の味方(予定)。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます