ある一羽の茶色い鳥の話

吉川元景

鳥と鳥たち


 昔昔ある所に一羽の茶色い鳥がいました。

 その鳥は茶色い自分の姿や周りの茶色い鳥と一緒にいるのが嫌で住んでいた湖を飛び出しました。

 いろいろな湖を巡ってみましたがみんな茶色い鳥を受け入れません。

 そんな中白い綺麗な翼を持った鳥が沢山いる湖が受け入れると言ってくれました。

 茶色い鳥はとても嬉しくてそこで一生懸命餌を採ってきたりしました。

 白い鳥たちは茶色い鳥より遠く高く速く飛べるため沢山の餌を採ってこれました。

 そしていつの日か自分も白くなりたいと願うようになりました。

 白い鳥たちと過ごす日々は楽しく、茶色い鳥は笑っていました。

 そんな時そんな茶色い鳥を見ていた渡り鳥に「君はみんなと違う。足手まといだ。なのに、なんでここにいるのかい?」と聞かれました。

 茶色い鳥は困ってしまいます。

 ここがいつの間にか居場所になっているのが当たり前になっていたからです。

 茶色い鳥は「分からない」と答えました。

 渡り鳥は「そうやって考えないままで白い鳥にはなれない、なれるはずがない」と言い残し立ち去っていきました。

 茶色い鳥は白い鳥になるためにもっと頑張ろうと思い、何回も何回も餌を採りにいきました。

 そんなある日茶色い鳥は怪我をしてしまい餌を採りにいけなくなります。

 白い鳥たちは治るまでゆっくりしていいよと言いました。

 茶色い鳥はすごく悩みました。

 そして茶色い鳥は決めました。

「僕行きたい湖を見つけたんだ。だからその湖に移動するよ」

 それは白い鳥たちの迷惑にならないようについた茶色い鳥の嘘でした。

 白い鳥たちは驚き「さみしいけど、決めたならしょうがないね」と茶色い鳥を送り出しました。

 茶色い鳥は湖から離れていきました。

 白い鳥たちは口々に「もったいない」「さみしい」と言いながら茶色い鳥が幸せになることを願うことしかできませんでした。


 茶色い鳥は鳥のいない湖を見つけました。

 そしてそこで茶色い鳥は自分の嫌いだった茶色い羽をいくつかむしり、羽と同じ色をした地面に横たわりました。


 数日後白い鳥たちは動かない茶色い鳥を見つけました。

 茶色い鳥は声をかけても動きません。

 白い鳥たちは泣きながら飛び立っていきました。

「あともう少しで私たちと同じ色の翼を持てたのに」と。

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