父上の転機

「急に呼び出してすまないな。」

 目の前には井上元兼の息子、助十郎。

「殿、どうかなさいましたか?」

「急ぎ元春の所に行って欲しいのだ。」

「はっ。」

「何をするかは元春に聞いて欲しい。急ぎ元春の所に行き、しばらくあちらに居てはもらえぬか?」

 返事はするものの少し不思議そうな顔をしている。だが、助十郎は真面目なやつじゃ。きっと言う通りに新庄に行ってくれるだろう。



 この前父上にお会いした際に井上氏を討つと言われた。年老いた者は幼い者、忠誠を尽くしてくれた者達は生き残るように手回しをすることになった。助十郎もそうだ。父上は何十年と我慢したことは察しがつく。だからこそ失敗出来ないな。来る日に向けて気を引き締めなければならない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る